VSワイバーン
ぶ〜〜〜〜ん。
最近のお気に入り、ミツバチになって冒険者のフードに忍び入る。
街の門前にはワイバーンを討伐する為の冒険者たちが集まっていた。
「ワイバーンは絶対にこの剣の錆びにしてやるわ」
「エリスちゃん、気合い入ってるね」
「まあね。母親からも言われてるわ。ワイバーンは見たら遠慮なく狩っていいって」
「どんなお母さんなの……」
おや? 聞き覚えのある声がしたと思ったら、いつもの三人組じゃないか。
剣士の少女はエリスというのか。魔法使いの少女はミィとか呼ばれていたな。
じゃあ盾持ちの少年剣士は?
「あっ、ピッケ君〜! こっちだよ〜!」
「ありがとうミィ。盗賊団の時もそうだったけど、今回も人が多いね」
ピッケというらしい。
そしてミィちゃんはピッケ君のことを好きなんだろうな。
なんか雰囲気でわかる。
「あんたたちってホント仲が良いわよね」
「幼馴染みだからね。エリスは今日は気合いが入ってるね」
「ふふっ、エリスちゃん面白いんだよ。お母さんからワイバーンを許すなぁ〜って言われてるんだって」
「エリスのお母さんってどんな人なの?」
「誇り高くて強い自慢の母よ! そしてワイバーンが大嫌いなの」
「過激なお母さんなんだね……」
ピッケ君の意見に思わず賛同してしまった。
ワイバーン狩り大賛成ってどんな戦闘民族だ。
というかワイバーンって大人が二人で狩れるくらい弱いのか?
いや、エリスの母親が強いとか?
「聞けぇ! 我らはこれよりワイバーンの討伐に向かう! ワイバーンは火を吐き、尻尾には猛毒があるという! 全員、用心するように!」
「「「「はい!」」」」
はーい。
冒険者たちとワイバーンのいる森に来た。
さあ、リベンジだ。
集まった冒険者は全部で二十七人。
ワイバーンはどこかな?
フードの中から顔だけ出して辺りを見渡す。
「上よ!」
エリスが声を張り上げて上空だと告げた。
ワイバーンは翼をバサバサと動かしながらこちらを観察している。
が、それも一瞬のこと。
ワイバーンは冒険者の群れに炎の弾を撃ってきた。
「アースウォール!」
「ウォーターウォール!」
「サンダースピア!」
「アイスバレット!」
ワイバーンの炎弾が土と水の壁で相殺されて雷の槍と氷の弾丸がカウンターで放たれる。
巻き込まれないようにフードからこっそり抜け出して後方の木に止まってカラスとなって観戦した。
いけいけ! あっ! 左に旋回したぞ!
おぉ! 風の魔法で動きを乱した!
バランスが崩れて地面に降りてきた所を前衛組が攻撃にかかる。
「風魔法を使えるヤツは上空に行かないように妨害に徹しろ! 前衛組は尻尾の毒に気をつけろよ!」
「ぐわぁああああっ!」
「ちっ! 言ったそばからやられやがって!」
「エリス! 深追いはダメだよ!」
「大丈夫! くらいなさい!」
ワイバーンによる炎の弾幕を避けたエリスの剣撃が首を捉えた。
血が噴き出てワイバーンはよろめく。
「くっそ、浅かった!」
「今だあああ! 一斉攻撃いいいい!」
「「「「「おう!」」」」」
「グギャアアアアアアッ!!!!」
ワイバーンは最後の悪あがきで火炎放射を周囲に放つ。
防御が遅れて炭になり、お亡くなりになられた冒険者が多数でた。
三人組は無事みたいだ。
しかしワイバーンは冒険者たちが動揺した隙をついて上空に逃げる。
深手を負っているのでどこかで回復するつもりだろう。
「ちっ! 待ちなさい!」
「そこのお前、止まれ! 一人で行って何になる! ヤツのエサにでもなるつもりか!?」
単独で突っ込みに行きそうになったエリスを指揮官が止める。
どうやら冒険者たちはここまでらしい。被害もかなり出てしまったからな。
勝負は引き分けかな?
お互いに痛いダメージを負ったからな。
「くっ……私ならできるのに……」
「被害も多い、一度街に戻るぞ!」
「エリスちゃん、戻るよ」
「エリス、またリベンジに来よう。次はもっと強くなって」
「えぇ、そうね」
ピッケ君とミィちゃんに励まされて帰路に向かうエリスだが、簡単に納得はできないだろう。
だが安心してほしい!
君の無念と死んだ冒険者たちの弔い合戦は、この僕が引き受けようではないか!
美味しい所は捕食する。それがスライム!
僕はカラスになってワイバーンを追いかけた。
お、いたいた。
ワイバーンは川にのそのそと近づいている。
水を飲むのだろうか?
僕は咄嗟に分裂体を川に流した。
分裂体はワイバーンに気取られることなく近づき、そして……
「グッ……!?」
バシャン!
ワイバーンは川に浸かるように倒れた。
川に流した分裂体は改造で麻痺毒の塊に設定してあったのだ。
いくら頑丈な鱗を持つと言っても体内からの攻撃は防ぎようがないだろう。
僕は黒猫に擬態して近づく。
「にゃーご!」
「ギャ……」
どーもどーも、こんにちはワイバーンさん!
貴方を食べに来た……
スライムです!
スライムの状態になり、ワイバーンに覆い被さって捕食する。
…………ぷはぁ! ご馳走様でした!
さてさてステータスはどうなってるかな?
『名前:
種族:ガラクタ・アンデッド・デミドラゴン・ビッグスライム
技能:捕食、分裂、擬態、溶解液、腐食液、サイズ変化、胃袋、改造、火魔法new
レベル:13→15
体力:630→634→734
魔力:1034→1038→1138
物理攻撃力:314→316→416
物理防御力:526→528→628
魔法攻撃力:426→428→528
魔法防御力:618→620→720
素早さ:426→428→528
耐性:打撃、斬撃、刺撃、毒、闇、土、火
弱点:光、水、雷、氷、風
擬態:土、石、葉、カラス、ダンゴムシ、ムカデ、ミミズ、花、ミツバチ、グール、黒猫、人間[バジム]、鉄の剣、銅の短剣、弓、矢、麻痺毒、斧、槍、黒いローブ、銅貨、銀貨、金貨、酒、瓶、ライター、タバコ、火薬、麻薬、小麦粉、パン、リンゴ、モモ、古びた壺、魔法ランプ、ネックレス、ペンダント、指輪、鍵、手錠、鎖、腕時計、鏡、綿、白い布、木材、ペン、インク、紙、ワイバーン』
おおっ! 種族が進化してる!
デミドラゴンが追加された。
レベルの上がり幅は低い。たぶん漁夫の利だからだろう。
美味しいとこ取りはレベルを上げるには損だな。
そしてステータスはデミドラゴンボーナスで全て100ずつ上がっていた。あとはレベルアップボーナスで体力と魔力が4、その他2ずつだ。
ワイバーンのステータス丸ごと欲しかったのに、種族が同じスライムじゃないとダメなのかな?
耐性は斬撃と刺撃が増えて、弱点に風が追加された。
確かに風魔法で地上に落とされたもんなぁ。
あと技能に火魔法が追加された。
やっぱりドラゴンっていったら火だよね。
「にゃーご!」
僕は黒猫状態で火炎放射を放って、しばらく森で遊んでいた。
後日、森で火を吐く黒猫がいたと噂になってしまった。
お読みいただきありがとうございます
少しでも面白いと思った方は、ブックマーク、評価をお願いします