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死臭


 古代兵器の放つロケットパンチ。ビーム光線。

 光竜ヒカリンは、それら全ての攻撃を結界で防ぎきっていた。

 一度は攻撃に反転したものの、すぐに修復されてしまい、魔力の無駄になる。

 その為防御に専念することにしたヒカリン。それでも所持魔力は徐々に減っていく一方だ。


「なるべく早くしてほしい、です」


 自分にはエリスやクルルのような肉体の強さはない。

 魔力が尽きて古代兵器と肉弾戦にでもなったら十秒の足止めもできないだろう。

 そんなヒカリンの願いは……………………



「待ちナァー!」

「はあっ、はあっ、マジで、しつこいなっ。お、あれは……やった! 助かった!」


 炎笑のホウエンから逃げる僕は、目の前から走ってくる人を見つけ安堵した。


「おーい! リエットさーん! 助けてくださーい!」

「えぇっスイ様!? うわっ最悪ぅ! よりにもよってなんでスイ様なのぉ!」


 失礼なメイドだな。

 と思った僕だが、リエットさんの状況を見て理解した。

 彼女も僕と同じく敵から逃げている。

 ――あぁ、うん、これは言いたくなるよね……。

 ちなみに、通路はTの字になっており、僕らが逃げる道は一本しかない。

 同じタイミングで曲がり、二人でひぃひぃ言いながら敵から逃げる。


「大人しく捕まってペットになんナァ!」

「切り刻まセロォオオオ!」


 本当に最悪だ……。一人でも勝てないのに二人に増えた……。


「スイ様を差し出せば見逃してくれるかなぁ!」

「君は悪魔か! というかそんな甘くないでしょ! あっちの方なに!? 殺気すごいんですけど!?」

「そんなのあたしが聞きたいよぉ! あぁぁ! なんでこんな所に来ちゃったんだろぉ! まだ恋人も作ったことないのにぃぃ!」

「死が、恋人なんじゃないかな…………なんて」

「黙っててよ! というかステータスはまだ戻らないの?」

「うん。まだ無理だね」

「うわぁあん! もう終わりだぁぁぁ!」


 まあ逃げるだけなら余裕はあるよね。

 幸いなのは向こうに物理の遠距離攻撃がなかったことかな。

 魔法攻撃は僕が反射するから撃ってこないんだろうし。

 と次の曲がり角が見えた。


「スイ様、右と左、どっちに行きます?」

「じゃあ右で!」

「了解です⭐︎」


 二人で右に曲がる。

 だがそこは暫く進むと行き止まりで…………


「「死んだ……」」


 後ろから徐々に迫る足音。

 カウントダウンは近づいていた。



 一方、傭兵団『朧月』の団長、雨ノ月蒼一郎は、かがり火の灯る大広間に辿り着いていた。

 そこで闇ギルド『首切り包丁』の頭領と邂逅する。


「これはこれは、朧月の団長……雨ノ月殿ではないですか?」


 重量のある、されど澄み切ったような声が響いた。


「はい……。初めましてになるでしょうか……。闇ギルド『首切り包丁』の頭領、傀儡のドールドール……」


 雨ノ月は腰に差してある刀に手をかける。


「その渾名は好きではない。まるでワタシが操り人形みたいではないか。ワタシはネクロマンサー。傀儡は……こいつらの方だ」


 瞬時に召喚された、いつくもの武装された死体。

 それらは綺麗に手入れされ、その姿は生きている人間のようにも見えた。

 大広間を埋め尽くすほどの操られた死体が、雨ノ月に襲いかかる。

 

「死者を弄ぶなど不埒なことを考えますね……。雨ノ月流刀剣術一の型・霧突(むつき)


 雨ノ月が技を繰り出す。濃い霧を払うほどの強烈な突きが全てのネクロマンシーたちを穿った。

 ネクロマンシーたちが光の粒子となって消えていく。


「ほう……」


 闇ギルド『首切り包丁』の頭領ドールドールはその見事な技に思わず感嘆の息を漏らした。


「見事だ。この私でも目で追うのがやっとだったよ」

「そうですか……」

「だが、それは私の話だ。まだ一体残っているぞ?」

「えぇ……知っていますよ……。本気で殺しにいったのですが、見事に防がれてしまいました……。さすがは我らの副団長といったところでしょうか……」


 一体だけ残ったネクロマンシー。

 それは雨ノ月の親友であり、傭兵団『朧月』を設立した頼れる右腕。

 晴ノ日辰巳(はれのひたつみ)だった。

 ただし生前とは違い左腕がなくなっていた。


「辰巳……。とある依頼を受けた時から数名の団員たちと帰って来なくなりましたが、貴方に殺されていましたか……」

「残念ながら殺したのは私ではない。私たちの元頭領だ。晴ノ日辰巳は私たちのリーダーと相打ちとなり、そして私が有効活用させてもらった。生憎とリーダーは損傷が激しく使い物にならなくてね」

「そうですか……」


 平然の中に一瞬の動揺。

 それを見逃すことなくドールドールは自らの道具を消しかけた。

 雨ノ月の親友であり、元右腕の剣士を。


「っ重い……!?」


 不意をつかれたとはいえ、生前の晴ノ日では考えられないほど強烈な一撃だった。


「そいつは片腕しかないのでね。少々改良を施したんだ。二刀流の技は失くなってしまったが、それと引き換えに凄まじい力を得ることができたよ」

「不遜ですね……。この程度で私を殺せるとでも……」


 次の瞬間、雨ノ月が霧のように消え、その姿は晴ノ日辰巳の視覚にあった。


「雨ノ月流刀剣術三ノ型・夜寄(やよい)。二ノ型鬼刺羅斬(きさらぎ)


 そして流れるように技の連携を繰り出す。

 しかし…………


「思い上がりはそちらの方だ。雨ノ月蒼一郎」


 ドールドールのセリフの直後、晴ノ日辰巳が後ろも見ずに剣を背後に回して攻撃を防いだ。


「完全に視覚をとったはず……」

「何を言っている。ネクロマンサーである私がここから見ている。晴ノ日辰巳に視覚はない。この戦いは私の玩具とお前の戦いではない。私に操られる玩具とお前の戦いだ」


 ドールドールは再び武装された死体を召喚した。

 その数七体。

 晴ノ日辰巳を含めれば、八体のネクロマンシーとドールドール監視の下で戦わなければいけない。

 しかも新たに召喚された者たちは一体一体が強者だった。


「私の玩具になるがいい。雨ノ月蒼一郎」


 絶望的な状況に陥る雨ノ月。

 俯く彼の顔は…………………………



お読みいただきありがとうございます。


次回はあの子が活躍するかもです。そう、あの元気なドラゴン娘が…………


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