古代兵器の中で
「待ちなー!」
「誰か助けてくれにゃああああああ!」
僕は走る。
来た道を、知らない道を走り続けた。
しかしホウエンは諦めないようだ。
僕を捕獲しようとムチを伸ばしてくる。
「ちっ! また外したか」
今、もう数センチ左だったら捕まってた……。
くっ……それにしてもなんだよ、この兵器の体内は!
どこに進めばいいかわからない。まるで迷路じゃないか!
ぽちっ!
あ、やば……罠踏んだ……。トラップが来る!
警戒する僕。しかし悲鳴が聞こえたのは後ろからだった。
「ぁああああああああああっ!!」
ホウエンが落とし穴に落ちていく。
「ラ、ラッキー……」
これで安心して皆を探せる。
早く誰かと合流しなければ。
歩き出す僕。しかし後ろから熱を感じ振り向くと、落とし穴から炎が上がっていた。
こ、これはヤバいのでは……。
僕の悪い予感は的中し、落とし穴から炎の虎が這い上がってきた。
その背中にはホウエンがしがみついている。だが顔や身体が火傷を負っていた。
「はぁ……はぁ……待ちな……猫ちゃん……。あんたは……アタシの……ペットになるんだヨォオオオオオオ!」
イィィヤァァアアアアアアア! 誰か助けてぇええええええ!
僕は再び逃げ出した。
一方で、スイ以外の面々も一人の状況に困惑していた。
傭兵団『朧月』の団長、雨ノ月蒼一郎は足を止めて思考する。
この兵器の体内が早々に迷路になっていることに気づいたからだ。
もはや直感と運に頼って進むしかない。
そして雨ノ月は感じ取った。
強者の気配を。同時に懐かしさも。
「いったいどういうことなのでしょうか……?」
雨ノ月は歩を進める。
その先に待つ者は………………
「ん〜、逸れちゃったねぇ」
リエットは回廊を進みながら辺りを見回す。
「よっと……」
罠を上手く避けて進む様は熟練の冒険者に勝るとも劣らない。
さすがは王宮で鍛えられた暗殺メイドといったところだ。
そんなリエットでもこのメンバーの中では最弱だと自覚している。
バネッサとは良い勝負ができるだろうが、やはり体力や経験値の差で負けてしまうだろう。
「早く誰かと合流しないとぉ」
タタタタタッ……。
スイと同じく合流を目指すリエット。そんな彼女の耳に足音が聞こえた。
軽く早い足取りだ。
「エリス様かなぁ? それなら心強――っ!?」
リエットは言いかけて迷わず後方に逃げ出した。
その理由は…………
「ヒャッハァーッ! 女ダァ! 女がいタァァァッ!」
近づいてきていたのはエリスではなく敵。
斬殺を得意とする切り裂き魔のリッパーだったのだから。
「ちょっ、あれはヤバいぃ。間違えた、あれもヤバいぃ。闇ギルドって、なんでこう死の臭いを纏ってるヤツらばかりなんだろっ!?」
「待ちやがレェエエエエエ!」
逃げるリエット。そんなリエットの前方には……
「参ったねぇ。逸れちまった」
少し広めの場に出たバネッサは、東西南北どの通路に進むか迷っていた。
そんなバネッサのもとに、一人の人物が訪れる。
「あらぁ? あはっ、これは奇遇ねぇ。バネッサちゃん?」
「……マーガレットかい」
血爆の異名を持つマーガレットだ。
「うふふ、貴女の死体を持っていけばあの団長さんも動揺するかしらぁ?」
「さて、そいつはどうだろうね? 試してみるといいさ。もっとも……やられるつもりは毛頭ないさ!」
バネッサとマーガレットの戦いが古代兵器の体内で始まった。
そしてさらにもう一組……
「まったく。エリス様には困ったものです。どこに行ってしまったのでしょうか?」
エリスの後を追っていた鋼竜のクルル。
吹き抜けの広間に出た彼女は、突如上から降ってきた岩に押し潰され、その姿は岩の下に隠れた。
「オラ、潰セタ……? 圧死ィー! 圧死ィー!」
恣意的に投擲された闇ギルドのメンバー、ブッチョの巨岩。
それは確実にクルルを狙ったものだった。
しかし………………
ドゴンッ!!
クルルは拳で岩を割って姿を現す。
「どうやらエリス様以外にも手癖の悪い方が居られるようですね」
「圧死シテナイ……オラ、ショック……」
古代兵器の体内でクルル対ブッチョの戦いが始まった。
そしてメンバー最強格の二人は……
「もう! ここどこよ! 誰か出てきなさいよー!」
エリスは迷子になっていた。まだまだ兵器の中を彷徨い続けるだろう。
一方レオーラは………………
「しまった……。使徒様と逸れてしまった……。抱えていればよかった……」
スイと逸れたことに割とダメージをくらっていた。
「しかも今回の敵には使徒様をペットにしようとする輩がいる。これは見過ごせない」
同じ場所をぐるぐると回りながら、ぶつぶつ呟くお姫様。
「も、もしも使徒様が調教されてしまったら……」
『あっ、レオーラ。僕これからこの人のペットだから君との関係は終わりにするね。さようなら』
『ほらほら使徒ちゃん。猫じゃらしでちゅよ〜』
『にゃ〜ご、にゃ〜ご! 猫じゃらし好きにゃ〜! ご主人様も好きにゃ〜!』
「うぅ……そんなことになってしまったらどうしよう……。使徒様と猫じゃらしで遊ぶのは私なのに……」
スイが聞いていれば「それも違う」とツッコミをしていただろう。
そんな、意外と妄想が豊かなレオーラは、スイを守る為に名前を呼びながら走り続けるのであった。
お読みいただきありがとうございます。
ストックが尽きましたので、毎日投稿は本日で終わりとなります。




