古代兵器
闇ギルドの強襲を乗り切り、ロッキーに攫われた領主様を取り戻すべく、敵の本拠地へと向かう。
既に空は暗くなっており、住民たちも家の中に入っている頃だろう。
ましてや今は領主様の名前を使って外出しないようにと宣伝してある。
つまり堂々とこちらの本領を発揮できるわけだ。
クルルさんとヒカリンちゃんに竜形態になってもらい、突入メンバーを背中に乗せてもらう。
クルルさんの竜形態は全身メタリックでカッコいい。ただ本人はあまり気に入っていないようだった。
ヒカリンちゃんは光竜。エリスと同じ白い色だが、真っ白というわけではなく、少し黄色がかっている。
ちなみに、背中が弱いエリスはクルルさんの背中に人形態で乗っていた。
クルルさんの方に乗っているのは、エリス、バネッサ姐さん、雨ノ月団長。
ヒカリンちゃんの方に僕、レオーラ、リエットさんだ。
準備も整った所で、二人が同時に空へと飛び立つ。
目指すのは三つある山の一番西の山だ。
しかし山に近づいていくと、どこか様子がおかしいことに気がつく。
ゴゴゴゴゴ……………………!
「ねぇ、なんか山が動いてない?」
「はい、動いてますね」
「動いて、ます」
視力の良いエリスがそう言うと、クルルさん、ヒカリンちゃんが続けて言った。
やっぱりドラゴンは視力が良いのだろう。
しかし山が近づくにつれて、ドラゴンじゃない僕らにもその全貌を見ることができた。
動いている山は古代兵器だ。
やがて山は四つん這いの状態から起き上がり、真っ赤な目を光らせている。
その姿はまさにヒーロー戦隊に出てくる巨大ロボットだった。
「なんすかあれ?」
「まさかこの国にあんな物が封印されているとは……」
「団長、あれを破壊するって正気かい?」
「しなければ多くの命が失われます……。とはいえ敵も一筋縄ではいかないでしょう……」
古代兵器がこちらに向かって拳を突き出してきた。
そして発射される拳。
「ロケットパンチじゃん……」
「使徒様、それはあの飛んでくる拳のことですか?」
「うん」
「大丈夫、です。結界で防御、します」
バチーンッ!
ヒカリンちゃんの結界が砕かれ、拳は古代兵器のもとへ戻る。
互角か。
「皆さん、あの兵器は私に任せて、ください。皆さんは中に乗り込んで核を破壊して、ください」
ヒカリンちゃんが古代兵器の足止めを立候補したので、僕とレオーラ、リエットさんはクルルさんの方へ乗り移る。
そのまま古代兵器に突っ込んで中に入る算段だ。
だが……
「ちょ、ちょっとクルル? なんで下がってるわけ!?」
「すみません、定員オーバーです。地面に落下する前に突っ込みます。踏ん張ってください」
クルルさんが高度を下がりながらも加速する。
そして古代兵器の股間部分に穴を開けた。しかしその穴はすぐに修復されてしまう。
「ふぅ……なんとか間に合いましたね」
人形態になったクルルさんが汗をかいていないのに汗を拭く仕草をしながらそう言った。
「ちょっとクルル! もう少し頑張りなさいよ! ここから上らないといけないじゃない!」
「落ち着いてくださいエリス様。ここに突っ込んだことでわかったことがあります」
「なによ?」
「この古代兵器は雄ではありません」
「兵器に性別があるかぁ!」
確かに突っ込んだ部分は股間の位置だったな。
そしてエリスはツッコミをし終わると……
「私先に行くわね! 一番に核を破壊してやるから!」
そう言い残して突っ走っていった。
しかし誰もエリスの心配をする者はいない。
実力はこの中でもトップなのだから。
むしろエリスが勝てない相手がいた場合は相当まずい状況になるのだが……。
「元気があるのは良いことです……。私たちも行くとしましょう……」
雨ノ月団長を先頭に古代兵器の中を進む。人工的に……というか神様に造られた物らしく、ただの通路すらも芸術性を感じる。
さらに通路を進むと、折られた槍や発動した罠がそのままの状態で放置されていた。
エリスか……。
「罠が何もないよ。ドラゴンってのは便利だねぇ」
「普通は解除して進みます。エリス様が特殊なだけです」
「何にせよ彼女には仮ができましたね……」
バネッサ姐さんの言葉にクルルさんが常識を言い、雨ノ月団長が感謝していた。
しかし次の罠、落とし穴を見た瞬間、皆の意見が一致する。
「落ちたな」
「落ちたでしょうね」
「落ちたっすね」
「落ちましたね」
「落ちたかい」
「落ちましたか……」
エリスのことだから生きてはいるだろうけど、どう進んでいるのかわからないから心配だ。
「私が追いかけます。よっと……あ〜、暗ぃ〜…………」
クルルさんが落とし穴に飛び込んでエリスの後を追う。
さ、最大戦力が一人消えた……!
この事実に恐怖しているのは僕とリエットさんだ。
自然とリエットさんと目が合い、お互いに頷く。
バラバラにはならないようにしよう、と。
だがしかし、古代兵器の体内はそんなに甘いものではなく、いくつもの罠により……
気がつけば僕らはバラバラになっていた。
そして僕は……
「おや? お前は……喋る猫ちゃんじゃないかい?」
ビクッ!?
ビビりながら振り向く僕。
そこにいたのはビーストテイマー、炎笑のホウエン。
「これは運命ってやつかねぇ……調教してアタシのペットにしてやるよ!」
ムチを用意したホウエンを見て、僕は一目散に逃げ出した。
「待ちなー!」
「誰か助けてくれにゃああああああっ!」
お読みいただきありがとうございます。




