封印
学園都市を目指して馬車の旅が始まった。
馬車の中は空間魔法を使った拡張が施され、家具も一級品。とても快適な旅ができている。
暇を潰す為の娯楽品……チェスやトランプなどもあり、道中は退屈しなさそうだ。
さらに移動では定番のイベント、盗賊退治。
「スイ! 魔法が飛んで来たわよ!」
「わかってるよ」
僕は真捕食で魔法を食べようと発動し……
「うおおおっ! なんだこれ!? なんかどんどん大きくなってるんだけど!?」
「うわぁああっ! 逃げろぉおおおおっ!」
真捕食の拡大で盗賊たちが逃げていく。
どうやら制御が効かなくなっているらしい。
真捕食がどんどん大きくなる。
まずい、このままでは……
「こ、このっ……!」
「使徒様!?」
「もう何やってるの、よっ!」
首ちょんぱっ!?
僕はエリスに首を刎ねられ、死亡した。
そしてそれと同時に真捕食は消えたのだった。
「大丈夫ですか、使徒様?」
「う〜ん……なんか身体が急に重い? なんでだ?」
馬車の中に置いてあったセーブポイントに復活すると、レオーラが席で膝枕をしてくれた。
「何か変なものでも食べたんじゃないの?」
「お行儀悪いー! お行儀悪いー!」
「スライムが食あたりですか? まったく想像がつきませんねー!」
エリスたちが勝手なことを言っているが、さっきの行動はファインプレーだった。
すぐに原因を突きとめないといけないな。
ステータスに何か異常があるかもしれない。
……ステータス。
と僕は心の中で念じ、ステータス画面を出す。
『名前:スイ
種族:ガラクタ・ゴースト・デミドラゴン・キラー・デビル・ネオファイターポイズンスライム
技能:×××、真××、真×態、強××液、××食液、サイ××化、胃袋、改×、火××、弱×××、探知無効、黒の世界、雷魔法、真武術、虚偽記載、毒×、透×、魔法反射
レベル:32
体力:1168
魔力:2072
物理攻撃力:883
物理防御力:843
魔法攻撃力:985
魔法防御力:1087
素早さ:845
耐性:打×、×、×属性
弱点:斬撃、刺撃、聖属性
連絡先:アマテラース、ゼウッス、ヘパイストース、タケミカヅーチ、ミミューズ、オロチ、ヘルメッス、ヘッラ、ロッキー』
僕は目を見開いた。
ステータスの技能と耐性にバグが起こっている。
なんだこれ!?
「……あ、あの、使徒様……そんな野獣のような目で見られると、さすがの私も恥ずかしいです」
とレオーラが真っ赤な顔でそう言ってきた。
レオーラには僕のステータス画面が見えない。つまり周りからは、僕は見開いた目でレオーラの胸を下から見ているという、大変変態的な行動をしているわけだ。
「あんた……まさか体調悪いふりしてレオーラのおっぱいを近くで見たかっただけじゃないでしょうね?」
「見えない、見えないー!」
「サラちゃんには少し早いですからね」
エリスが怒り、リエットさんがサラちゃんの目を塞いでいる。
僕は慌てて起き上がって弁明した。
「違うよ! 体調が悪い原因がわかっただけだよ!」
「ふ〜ん……胸を見て体調が悪い原因がわかったの?」
「胸は関係ないよ!」
僕は皆にちょっと用事と言って馬車の角に蹲り、アマテラース様に連絡をとった。メールじゃなくて通話だ。
『もしもし、アマテラース様、今いいですか?』
『はいは〜い、こちら貴方の永遠の伴侶アマテラースこと天野照子です〜。どうかしましたか? スライムさん』
『……天野照子って芸名でJKしてるんですね? それとも源氏名ですか?』
『芸名でも源氏名でもありません。私はパパ活もしないクリーンで清楚なJKなんです。ぷはーっ! でも競馬で一発当てた後のビールは最高ですねぇ! またバイト代を注ぎ込まなければ!』
『あの……JKですよね? 二十歳未満ですよね? クリーンが何だって?』
この女神様、JKとして日本にいるのにお酒にギャンブルとやり放題だった。
『そんなことよりも私に何か用事があったのでは? あ、もしかして夫婦の何気ない会話的なヤツですか? もうスライムさんたら……』
『違います。何かステータスがバクってて体調が悪いんですけど、これって何が原因なんでしょうか?』
『え? ステータスにバグですか? きゃーーっ!? スライムさん! 悪魔の因子を食べましたねぇ! 悪魔と戦闘をしたんですか!?』
『悪魔と融合したドラゴンとなら戦いましたよ』
『本当です! あっ、悪魔はロッキーが殺してますね。よかったです』
『ロッキーが悪魔をですか?』
『はい。倒された悪魔は強欲の悪魔マモンですね。完全に消滅させたみたいなので、千年は復活しません』
『なぜあいつが悪魔を?』
『わかりません。ログに細工がされていますから、真意を見せるつもりはないのでしょう。正直どうでもいいですし』
ぶっちゃけたな。
『でもスライムさん、これは大変です。このままでは貴方はいずれ悪魔の因子に全身を侵されて悪のスライムになってしまいます』
『悪のスライムって……』
魔物である時点で人からすれば悪では?
と言いかけたが黙っておく。
『でも安心してください! そこは頼れる女神様がついています! 今から悪魔の因子に侵されたスライムさんのステータスを封印しますね! 結構弱体化すると思いますが、今の状況なら問題ありませんね!』
『おお! じゃあ僕は助かるんですね!』
『はい! それでは封印します! えいっ!』
『名前:スイ
種族:ガラクタ・ゴースト・デミドラゴン・キラー・ネオファイターポイズンスライム
技能:真分裂、胃袋、探知無効、黒の世界、雷魔法、真武術、虚偽記載、魔法反射、真擬態【猫】、人語発声new
レベル:32
体力:116
魔力:207
物理攻撃力:88
物理防御力:84
魔法攻撃力:98
魔法防御力:108
素早さ:84
耐性:なし
弱点:斬撃、刺撃、全属性
連絡先:アマテラース、ゼウッス、ヘパイストース、タケミカヅーチ、ミミューズ、オロチ、ヘルメッス、ヘッラ、ロッキー』
封印されたステータス画面を見る。
凄い弱体化していた。
『真分裂と胃袋は悪魔因子を取り除きましたので、最優先で使えるようにしておきました。真擬態は猫の姿にしかなれません。一応人の言葉を話せるようにはしましたので、しばらくはそれで過ごしてください』
『ありがとうございます』
『いえいえ。では良きスライム生を。あ、それから悪魔と戦う時は捕食しちゃダメですよ? 真捕食が一番悪魔因子に侵されてますからね!』
それで制御がきかなかったのか。
『気をつけます。今日はありがとうございました』
『はい。それでは頑張って死に方を探求してください』
そんな頑張り方はないよ。
という僕のツッコミは届かなかった。
そこは天界にあるとある工房。
見た目は古びた廃工場だ。
そこにいる神は、直感的に何かを感じ取り、呟いた。
「やれやれ。どうやら私の作品に手を出そうとしている輩がいるらしい。古代の遺産は封印されているからこそ価値があるというのに……困ったものだ」
何千、何万とある世界。
そのうちの一つに封印した自分の作品。
正直に言って封印を解いてしまえばその世界の生物が全て殺戮される。
その世界の管理者は確か……と、確認をしようとするその神様に、声がかけられた。
「やあ、マキナ」
黒髪の少年神様。悪戯好きで、とても無邪気に笑っている。
「ロッキーか。ちょうど良い所に来た」
「うん。僕好みの面白そうな気配を感じ取ってね」
「なるほど。では君に一つ頼み事をしたいんだけど、いいかな?」
「もちろんだよ」
「アマテラースが管理する世界の一つに、僕の作品を封印してあるんだけど、それを破壊してほしいんだ」
「え? 壊しちゃっていいの?」
「構わないよ。古代の遺産は眠っていることに価値がある。封印が解かれた古代の遺産は、破壊して貰わなければ作品としての意味がない」
「相変わらず君の感性はよく分からないや」
「わかってもらえなくても結構だよ。中心にある核さえ壊せば消滅するから、よろしく頼むよ」
「了解。あ、でも、壊すのは僕じゃなくてもいいんだよね?」
「神である私が作った作品を、神以外の者が破壊できるはずがないだろう?」
「あははっ。それがねマキナ。できる人たちがいるんだよ」
「ほう? それは興味深いね。ではその者たちには試練を与えようじゃないか」
その日、天界の片隅で悪意のない策謀が計画された。
悪戯好きの神様と機械仕掛けの神様によって……。
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