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陸路


 レオーラとエリスの戦いは接戦だった。

 一見ドラゴンのエリスが優勢かと思えたが、レオーラもただの人間ではない。

 神器を装備した人間だ。

 そして、剣の腕はレオーラの方が上なのである。


「っ……!?」


 エリスが左腕にかすり傷を負った。

 それに慌てて距離を取るエリス。

 レオーラは雷魔法を飛ばして追撃する。

 が、しかし魔法はエリスに通じない。

 全て剣で消滅させていた。

 そして反撃。

 ドラゴンの圧倒的なステータスを活かした力任せのゴリ押しだが、レオーラの神器バリアを貫き、頬を切り裂く。

 あいつ、お姫様の顔になんて傷を……。


「ふ〜ん、人間のくせに中々やるじゃない」

「エリス様も流石ですね。この指輪がなければ私は貴女と誤解に戦うことはできなかったでしょう」

「その指輪、何なの?」

「これは神器です。一時的にではありますが、これのおかげで私は神のチカラを引き出すことができます」

「なるほど、神のチカラね。まあ私には通用しないけど」

「そのようですね。しかし、貴女自身の技量は大した事がないようです」

「技なんて必要ないくらい強いのよ!」


 エリスが剣を振り下ろす。

 レオーラは避けるが、地面は地割れが起こった。

 おいおい。そろそろ……。


「クルルさん、止めましょう」

「ダメですよ。ちょうど面白くなってきたのに」

「私もまだ見ていたい、です」


 それから三十分くらいだろうか?

 レオーラとエリスは剣を交え続けていた。

 そして……


「へぇ〜そんなことがあったんだ。というか使徒って……あいつ、私のお婆様から竜の神様だと思われてるのよ」

「竜の神ですか? 使徒様のことですからきっと凄いことをしたのでしょうね」

「竜族に伝わる幻の品物を献上しちゃったのよね。それにあいつって死なないでしょ? だから不滅の存在って思われて、たぶんそれで勘違いしてるのよ」

「ふふふ、確かにそれは神様と勘違いするのも無理はありません。私の時も……」


 なぜか二人は傷を治して戦うのを辞め、楽しくお喋りをしていた。

 しかもその内容は僕のことだ。二人の知らない情報を交換しているようだった。

 何か嫌な予感……。

 とその予感を悟らせるようにクルルさんが側に来て言う。


「どういう経緯でお二人が仲良くなったのか、ぶっちゃけ私にもよく分かりませんが、責任は取らなければいけませんよ?」

「女は戦いに決着が付かなければ共闘する。これが島の外の常識ですか」


 違うよヒカリンちゃん。そんな常識はないよ。

 その後はレオーラの厚意で僕らはお城に泊まることができた。

 翌日はエリスとレオーラが呼び捨てで笑顔で語り合う様子を見ながら朝食を取り、僕はレオーラの父親である国王様と非公式で会談する。

 内容はレオーラを国際学園に入学させてみないか? ということだ。

 国王様の返事はおっけー。

 さらに「娘をよろしくお願いします」と言われた。



 そして数時間後、王都の外にレオーラたちと集合する。

 ドラゴンがいるので空路で行きたかったのだが、学園都市は人が多く、目撃されると騒ぎになるので陸路で行こうという事になった。

 海路も渡る為、だいたい一ヶ月くらいかかる。


 そしてエリスが連れて来たのは……


 メイド竜のクルルさん。

 光竜の巫女ヒカリンちゃん。

 剣士の少年ピッケ君。

 水魔法使いの少女ミィちゃん。

 荷物持ちのお姉ちゃんマイちゃん。

 荷物持ちの妹ちゃん、サラちゃん。


 ピッケ君たちはエリスがドラゴンと聞いて驚いたそうだが、何となくエリスが普通の人間ではないと察していたらしい。

 僕もドラゴンなのかと聞かれたが、そこは秘密と答えておいた。

 対して僕が連れて来たのは……


 雷光のお姫様レオーラ。

 メイド代表のリエットさん。


 の二人だ。


「初めましてぇ〜! リエットと申します! レオーラ様のお世話係として同行する事になりました! よろしくお願いします⭐︎」


 リエットさんはサイドポニーテールのギャルメイドだ。

 その身のこなしは明らかに暗殺者のそれだった。

 レオーラがエリスたちと話している間に、僕はこっそりリエットさんに話しかける。


「あの〜リエットさん、つかぬ事をお聞きしますが、国王様から暗殺依頼とか受けていませんか?」

「大丈夫ですよぉ〜。使徒であるスイ様なら国王様も大賛成と言ってましたし。あ、でも個人的に暗殺するなら大丈夫ですよね?」


 大丈夫じゃないよ! 何この子、怖いっ!?


「やだなぁ〜。スイ様、物理的には殺しませんよ?」

「はい? じゃあどうするんですか?」

「んふっ……既成事実を作らせるんですよ」

「え?」


 リエットさんは僕を見てペロリと舌で唇を舐める。

 ……ターゲットは僕なのか!?


「二人とも何を話してるの? 馬車の組み分けどうするか決めてるんだけど?」


 エリスが話しかけてきて危うい雰囲気から逃れることができた。


「サラ、お姫様と一緒がいいー! 王子様の話してー!」

「えっ!? ちょ、サラ!」

「いいぞ。悪戯好きな王子とお茶目な王子様。どちらがいい?」


 それは弟のルーク少年と僕のことだろうか?



 馬車が二つ用意され、僕は先頭の馬車に乗り込む予定だ。

 仮にこちらをAグループの馬車とするが、こちらに乗り込むのは僕、レオーラ、エリス、サラちゃん、リエットさんだ。

 Bグループは、ピッケ君、ミィちゃん、マイちゃん、ヒカリンちゃん、クルルさん。

 王女であるレオーラがいるので、馬車もそれなりに大きい。

 というか凄い目立っていた。


「ね、ねぇ、ピッケ君、私たち、これに乗るの?」

「そ、そうみたいだね。まさかエリスが王女様とも友達だったなんてね……」

「私たち、生きて帰って来られますかね?」


 一般人。心臓小さ組のピッケ君、ミィちゃん、マイちゃんが、見た事もない豪華な馬車に怯える。

 そんな三人に言葉をかけたのはヒカリンちゃんだった。


「大丈夫、です。私もクルルさんもいますので。例え襲われても返り討ちにできます」

「「「あ、はい……」」」


 三人の心配は無礼を働いて殺されないか。

 ヒカリンちゃんの心配は豪華な馬車だから襲われないか。

 ……なんて噛み合わない会話だろう。

 クルルさんはわかってて黙ってるんだろうなぁ。


 何かあった時に向こうともすぐに連携を取れるように、自作の通信魔道具を渡しておく。

 なぜか少し作り難かったが、気のせいだろう。


 こうして十人で学園都市を目指す旅が始まった。



お読みいただきありがとうございます。

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