竜神の巫女
「あああああああああああああああああああああっ!!!!」
「そんな馬鹿ナ……こんな事ガ……僕は、最強ニ…………………………」
ドラゴン族皆の思いをのせた黒雷砲が、ライト君のブレスに競り勝つ。
口を貫かれる形となったライト君はダメージも大きく、地面に落下した衝撃で島を揺らしていた。
僕はふらふら……ゆらゆら? と地面にゆっくり降りる。
「スイー!」
そんな僕の元に一早く駆けつけてきたのはエリスだ。
僕は手をあげてエリスに「やったよ」と応えた。
だがそこは空気が読めないエリス。
「あんた! よくもやってくれたわね! 私過呼吸になって空から落ちたじゃない!」
僕が倒した感想よりも自分が落ちたことに対する文句を言いたかったらしい。
エリスらしいといえばらしいか。
「でもよくやったわ! あいつの負けて悔しそうな顔なんて初めて見たもの! あ〜でも、スイにはちゃんとお祭りを楽しんでほしかったわね」
「ちゃんと楽しかったよ」
何より色んなドラゴンたちとの交流は楽しかった。
「例年ならこの後は子供ドラゴンたちによる出し物があるんだけど、今年はどうなるかわからないわね」
「そっか。まあ今年中止になっても来年また見に来るよ」
と、僕の身体が光だし、粒のようなものがふわふわと浮いていた。
どうやら死ぬらしい。
そっか。無理しすぎもよくないのか。
スライムになったのに人間みたいだ。
「――え? スイ…………あなた…………」
エリスがなぜか僕を見て驚いている。
「どうかしたか?」
「どうしたって……貴方の方でしょ……。なんでそんな風になってるの?」
エリスはなぜか泣きそうな顔をしている。
「ちょっと無茶しすぎたみたいだ」
「無茶ってなによ……」
「大丈夫。またすぐに会えるよ」
セーブポイントは島中に置いてある。
何も問題はない。
お、他のドラゴンたちも駆けつけてきた。
「嘘……」
「そんな……」
「スイ……君は……」
「ちくしょう!」
リンリンさん、ランランさん、ヒエール君、ゴウエン君がなぜかエリスと同じような顔をする。
「いや、ほんと大丈夫だ……よ。エリス?」
「うわあぁぁ! ああぁぁぁ!」
エリスが泣きながら抱きついてきた。顔がくしゃくしゃだ。
というか、あれ? なんでドラゴンたち泣いてるの?
本当に大丈夫なんだけど?
これじゃあまるで今生の別れみたいじゃないか。
エリスの行動が余計にそういう雰囲気を出している。
ここは修正しなければ!
「泣き止んでよエリス。次に会う時会いずらいだろ?」
「次に……会うって……それいつよ!」
「心配しなくてもすぐに会えるよ」
「そんなわけ、ないでしょ!」
エリスは嗚咽混じりに言葉を投げかけてきた。
あかん! 何を言ってもさよなら感が払拭されない!
もうすぐ僕の身体は完全に消えるだろう。
お願い、堪えて僕の身体!
「すぐだよ。本当にすぐに会えるからさ」
「さっきからそればっかりじゃない! 最後くらい、もっとマシなこと言いなさいよ!」
最後じゃないんだよぉぉ!
こうなれば仕方ない。エリスに僕が復活できることを伝えよう。
「エリス、僕は――」
そこで僕の身体は完全に消滅した。
横には『真珠の付いた珊瑚』と『炎鼬のローブ』。
どうやら僕は献上品の『竜神の霊石』に復活したらしい。
一番近い復活場所がよりにもよってここだったか。
しかし、あのタイミングで消えるって……ないわぁ〜。
僕は透過を使って結界魔法を抜け出し、誰もいない巫女の塔を出てドラゴンたちが集まる場所に向かう。
う〜ん、会いづらい。
ここにいてもエリスの泣き声が聞こえてくる。
やっぱりタイミングが悪かったようだ。
「そんな……死者がでるなんて……」
音竜オンプさんが泣き喚くエリスを見てそう呟いた。
………………う〜む、よし!
もう僕は開き直ってオンプさんに近づく。
「どなたが亡くなったんですか?」
「エリスが外から連れて来た野良のドラゴンです。貴方にとてもよく似ていて……ぎゃあっ!! 出たあーーーーーーーっ!」
お、良いリアクションだ。
オンプさんの悲鳴でこちらを見たドラゴンたちが驚いている。
そりゃそうだ。
さっき目の前で死んだドラゴンが背後にいるのだから。
「幽霊! いえ、悪魔です! 巫女の皆さん! 早くこの悪魔を退治してください!」
「「「「「は、はい!」」」」」
巫女のドラゴンたちが前に出てきた。
「え、ちょっと待って! 本物です! 僕死んでも死なないドラゴンなんです!」
「そんなドラゴンは物語の中だけですよ!」
「そういうスキルを持ってるんですよ!」
なぜかドラゴンたちが警戒をする。
「お辞め。そいつが本物かどうか、確かめようじゃないか」
「長老」
「長老様」
「でもどうやって?」
長老様がドラゴンたちの中から登場する。
そして僕にこう質問した。
「孫のエリスの弱点は?」
「……せ、背中?」
「こいつは本物だよ」
「「「「適当すぎますよ!」」」」
ドラゴンたちなら誰でもわかる簡単な質問をした長老は、盛大にツッコミをもらっていた。
と、ここで泣き止んでいたエリスが僕の前に来る。
ドラゴンたちが……特に若い女の子のドラゴンたちが何かを期待しているようだった。
期待している所悪いけど、コイツはそういうのはないと思うよ。
「あんた…………」
エリスは僕に近づくと襟首を掴んだ。大事なことなのでもう一度。
襟首を掴まれた。
「死なないなら先に言いなさいよ。無駄に心配したじゃない。私が流した涙の分、後で死んでもらうから」
「ほらね」
「何が『ほらね』よ。というか、死なないなら透ける必要ないじゃない。城崩しの時なんで透けたのよ?」
「死にたくなくて?」
「死なないんでしょ?」
「生き返りますね」
僕がそう言うとエリスは解放してくれる。
「後で詳しいこと聞くから。覚えてなさいよ?」
ふんっ!
と怒りながら巫女の塔に戻って行くエリス。
そんなエリスをランランさんとリンリンさんが追いかけていった。
残ったドラゴンたちも「なんだ……何も起きないのか」と勝手なことを言って残念がりながら戻って行く。
ちなみに、僕が復活したことよりも『竜神の霊石』が無くなっていたことの方が騒ぎになったので、また新しく献上しておいた。
なお、ライト君は気絶している間に捕縛され、結界の中で巫女たちによる悪魔除去の儀式が行われた。
儀式は無事に成功し、ライト君は正気に戻った。
その後はドラゴンとしてチカラを封印され、島の外に追放されることに決まったらしい。
ライト君は僕やエリスたちに謝罪をすると、憑き物がなくなったのか、別人のような顔付きになっていた。
やった事の罪は消えないが、あれならばもう悪魔に取り込まれる心配もないだろう。
そして僕はステータス画面を確認する。
『名前:スイ
種族:ガラクタ・ゴースト・デミドラゴン・キラー・デビル・ネオファイターポイズンスライム
技能:真捕食、真分裂、真擬態、強溶解液、強腐食液、サイズ変化、胃袋、改造、火魔法、弱点看破、探知無効、黒の世界、雷魔法、真武術、虚偽記載、毒手、透過、魔法反射new
レベル:32
体力:1168
魔力:1872→2072
物理攻撃力:883
物理防御力:843
魔法攻撃力:885→985
魔法防御力:987→1087
素早さ:845
耐性:打撃、毒、全属性
弱点:斬撃、刺撃、聖属性
連絡先:アマテラース、ゼウッス、ヘパイストース、タケミカヅーチ、ミミューズ、オロチ、ヘルメッス、ヘッラ、ロッキー
メール:一件』
レベルは上がらなかったが種族にデビルが追加され、魔法反射の技能を新しく習得していた。
それから弱点に聖属性が追加されている。
巫女ドラゴンたちに攻撃されていたら死んでいたかもしれないな。
そしてメールが一件。これはゼウッス様からだった。
内容はお孫さんへのプレゼントのことだ。
結局ゼウッス様は僕のアドバイスも考慮した上で腕時計をプレゼントすることにしたらしい。
ゼウッス様お気に入りのブランド品らしく、喜ばれなくても渡すことにしたそうだ。
僕は「それもいいと思います」とだけ入力して返信した。
きっと喜んでくれると思う。
そして、祭りが終わった次の日の晩。
ドラゴンの巫女たちが竜の神様に捧げる舞を踊るとのことで、僕は舞台の一番前の席に座らされた。
騎士ドラゴン曰く、一番の功労者は一番良い席で見る権利があるそうだ。
隣にはリンリンさんやランランさん、ゴウエン君、ヒエール君、ライト君などの同年代が座る。
ちなみにエリスは踊る方だ。今も舞台裏で最終の打ち合わせをしている頃だろう。
「楽しみだねぇ」
「さっきエリスの所に行ってきたけど、別人かと思ったよ」
リンリンさんとランランさんがそう言っていた。
ドラゴンの巫女たちによる舞かぁ。楽しみだなぁ。
お、そろそろ始まるようだ。
シャリーン……!
シャリーン……!
鈴の音が鳴り、その音は次第に大きくなっていく。でも不思議と煩いとは思えない。
そして音に合わせて黒幕が上がり、巫女が四人登場した。
そのうちの一人はライト君の妹のヒカリンちゃんだ。
四人ともレベルの高い舞を披露する。
やがて琴や三味線の音色が加わり、尊厳さと神聖さを醸し出していく。
そしてエリスが登場し、中央に向かってゆっくり歩く。
四人の巫女は四方に散り、その場で舞っていた。
そして中央で舞うエリスは………………
とても綺麗で、僕は瞬きを忘れるくらい魅了されていた。
エリスの舞は四方で踊る四人とは格が違う。
もはや誰の目にも四人は入っていない。
誰もが中央で優雅に舞うエリスに魅せられていた。
竜の神様に捧げられる巫女の舞。
天界にいる竜の神様たちは、これをちゃんと見ているだろうか?
エリスは最後まで会場にいた竜たちを魅了し続けた。
そして、竜たちの楽しいお祭りは、幕を閉じるのだった。
お読みいただきありがとうございます。




