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移動


 景色は地中。


 よし、無事に復活したようだ。


 僕は地中から慎重に地上に出る。

 戦闘区域の惨状はアンジェリカが放った魔法の強烈さを表していた。


 なんだこれ……。


 地面に溝ができ、焦げている。木々など炭にもなっていない。

 森が禿げていた。

 しかもあの魔法は光属性で僕の弱点だった。防ぎ用はないだろう。


「倒したのか?」

「ああ。皆、よく時間を稼いでくれた」

「しっかしあのスライムは妙だったな。盾も変えないとダメだなこりゃ……気に入ってたのによぉ」

「うおっ、危ねぇ! 俺はもう少しで身体にくらってたぜ!」

「ふむ、被害はほぼゼロか。それは何よりだ」

「数日間は様子見だが、とりあえず脅威は去ったってことでいいのか?」

「そうだな。町に被害が出る前でよかった」


 ふぅ……これで安心してスライム生を送れそうだ。

 でもこの森じゃあもう無理かなぁ。

 カラスになって空も飛べるし、別の場所に住処を移そう。

 安心安全なスライム生を送る為に!

 そう決意した僕は、地中に三体の分裂体を埋め、カラスに擬態して空へ飛び立った。

 三十六計逃げるに如かず。

 あの女とは二度と会いたくないね。



 カラスに擬態して空を移動する。

 あの森は恋しかったが暫くのお別れだ。

 次はどんな場所に行こうか?

 できれば光魔法に対する耐性を獲得したい。

 そして完璧な人間の姿。

 食事は必要ないが町に入って買い食いとか美味しいコーヒーとか飲みたいのだ。

 でも光耐性ってどうやって獲得するんだろう?

 光といえば太陽だけど……日向ぼっこしていても気持ちいいくらいしか感想がない。

 アンデッドスライムになってしまったから無理なのかなぁ?

 僧侶スライムか天使スライムみたいな進化をすればよかったのか?


 ん? あれは……


 移動中、人間同士の戦闘を目撃した。


「物資を奪え!」

「女も置いていけぇ!」


 あぁ、盗賊か。

 盗賊対商人を護る冒険者たちといった所だろう。

 おや? しかも冒険者の方は知ってる顔がいるじゃないか。

 複数のパーティーの中にオオカミたちに奇襲をされそうになって僕が助けた三人組がいる。

 ちょっと押され気味かな?

 これも何かの縁だ。

 手助けしよう。

 溶解液糞バージョン!


「いてぇぇぇ!」

「なんだ!?」

「と、鳥の糞だぁ」

「余所見してんじゃないわよ!」

「ぐわぁああああ!」


 ふふん、見たか、僕の華麗なアシスト。

 さて……


 僕は木の葉に擬態して、ふわりふわりと帆馬車の上に乗る。

 気になることがあった。

 それは倒した盗賊たちの遺体だ。


「誰か光魔法を使える者はいるか?」

「私は水魔法です」

「俺は火魔法だ」

「誰もいない、か。それじゃあ火魔法で遺体を焼いて、骨を砕こう」


 やっぱり遺体は放っておくとグールになるようだ。骨のまま放っておいても魔物化してしまうのか。スケルトンだな。

 盗賊たちは骨にして砕いて風に乗って成仏するのだろう。

 でも今の言い方だと光魔法があれば遺体をそのままにできると解釈できる。

 不謹慎だが光魔法で保護された遺体を捕食すれば光耐性が手に入るのではないだろうか?

 ……まあそこまでして手に入れなくてもいいか。

 人間たちの情報も欲しいし、この商隊に付いて行くとしよう。



 翌日。

 商隊は街壁の立派な街に到着した。

 前にいた森の近くの町とは比べ物にならないくらい発展している。

 僕はカラスに擬態して建物の屋根の上に止まった。


「みゃーご!」


 途端に猫が威嚇してきた。野良の黒猫だ。


 ふぁいと!


 ぼこぼこぼこ!


 ぱくり、と。


 さっそく黒猫に擬態して街を散策する。


「しっしっ! あっちへ行きな!」

「みゃーご」


 叔母さんに邪険に扱われた。

 もしかしてこの黒猫、そこら中のお店で泥棒してたんじゃ……。

 とりあえず、この街でのセーブポイントも必要だろう。

 家と家の隙間に分裂体を忍ばせておく。

 ステータスが五分の一になってしまった。

 またスライム狩りをしなければいけないな。

 まあそれは置いておき。

 せっかく街中で堂々とできる擬態を手に入れたのだ。

 日向ぼっこしよう。

 すぴー……。



 翌日。

 昼近くまで寝てしまった。ほぼ24時間寝ていたことになる。

 それから少し街を観察してわかったことがあった。

 言葉は聞き取ることができるが、文字が読めない。

 これは勉強していくしかないだろう。

 二日前の盗賊のこと。

 あの時の冒険者たちは護衛の依頼を優先して盗賊のアジトを潰すことを辞めたらしい。

 あの時の盗賊たちのボスは指名手配されているらしく、恐らくその手先だろうとのことだ。

 被害も拡大しているようだし、冒険者たちが討伐隊を結成するらしい。

 その時の話に出てきたお宝に惹かれたわけじゃないが、付いていこうと思った。

 討伐隊参加者は三日後の朝に門の前に集合しろとのこと。

 三日もあれば充分だ。

 スライムを捕食してステータスを底上げしておこう。


 そして三日後、僕はスライムを合計百匹捕食し、アンデッド・ビッグスライムに進化してから冒険者たちの元に集合した。


『名前:

 種族:アンデッド・ビッグスライム

 技能:捕食、分裂、擬態、溶解液、腐食液、サイズ変化、胃袋new

 レベル:8

 体力:320→620

 魔力:524→1024

 物理攻撃力:109→209

 物理防御力:221→421

 魔法攻撃力:221→421

 魔法防御力:313→613

 素早さ:221→421

 耐性:打撃、毒、闇

 弱点:斬撃、刺撃、光

 擬態:土、石、葉、カラス、ダンゴムシ、ムカデ、ミミズ、花、ミツバチ、グール、黒猫』


 胃袋……いわゆるアイテムボックス。


お読みいただきありがとうございます


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