竜闘祭④
「こんな感じでいいのかな?」
僕は技能を使って作り出した紅いローブをリンリンさんに見せる。
「うん! 凄いね! 絵本に書かれた物そっくり!」
「よっしゃ! これなら勝てるな!」
喜ぶリンリンさんとランランさん。
僕は鼻高々に胸を張り、運搬するドラゴンに『炎鼬のローブ』を渡し、長老様の所まで持って行ってもらった。
一方でこの結果を素直に受け入れられない者たちもいた。
ゴウエン君とヒエール君である。
「おい。いいのか、これ……」
「まあ、先程持って行った『真珠が付いた珊瑚』は認められましたし。あり……なんでしょう」
『おーっと! なんと白チーム! 二つ目のお題『炎鼬のローブ』もクリアだ! 皆さん見てください! この赤よりも綺麗な紅い色を! これを用意したのはなんと野良ドラゴン、変化竜のスイです! 島の外には我々ドラゴン族に伝えられている幻の一品が実在しているのでしょうか!?』
今までにこれらの品を用意できたドラゴンはいないらしい。
実際はスキルでいじった僕の分裂体なんだけど……まあエリスのお婆さんが思った通りの人でよかった。
そうでなければこの作戦は成立していなかった。
二つも認められたし、次の『竜神の霊石』も大丈夫だろう。
「で、エリス、竜神の霊石ってどんな物?」
「黒い玉よ。絵本では黒い玉だったわ!」
金色じゃなくてよかったよ。
「はいはい! 私が見たのは透き通ってるって書いてあった」
「あ、私が見たのは完全な丸じゃなくて少し横に大きいって書いてあったよ」
ランランさんとリンリンさんが補足する。
「文献によって書いてあることが違うんだ。僕の知ってる竜神の霊石は少しヒンヤリとしていると書いてあった」
「あ? ヒエール、お前、前はぷよぷよしてるって言ってなかったか?」
「そうだったか? まあ僕は色んな本を読んでいるから混ざったのかもしれないな」
「じゃあ全部盛りましょう! スイ、黒くて横に丸くて透き通っててヒンヤリしてて柔らかい玉が竜神の霊石よ!」
おいおい。それって……
「エリスちゃん流石にそれは……」
「いくら何でも持ってないと思うよ」
「エリスはもう少し相手の気持ちを考えた方がいい」
「だな」
エリスの幼馴染みたちが何か言っているが、僕は竜神の霊石を懐から取り出した。
「はい。竜神の霊石」
「さすが!」
「「「「えっ!? 持ってるの!?」」」」
持ってるよ。といっても僕から分裂させただけなんだけどね。
だって少し横に丸くて透き通っててヒンヤリしてて柔らかいものなんだろ?
それってスライムじゃん。黒い世界で染色しちゃえば完成だし。
僕は黒く染色した分裂体……もとい、竜神の霊石を運搬役のドラゴンに渡す。
「よろしくお願いします」
「か、かしこまりました」
これが竜神の霊石か。
などと言っておそるおそる空に飛ぶ立つ運搬役のドラゴン。
そんな仰々しい物じゃなくてスライムですよと言ったらどんな反応をするだろうか?
『おーっと! 白チーム! まさか最後のお題『竜神の霊石』までも持っていると言うのかー!? 果たして結果は……………………ク、クリア! クリアだぁー! 長老様が承諾をしたー! これにより、第二種目、献上品集めは、白チームの勝利だぁー!』
わぁーーーーーーーーーーーっ!!
白チームのドラゴン達が歓声を上げる。
それだけでなく祭りに参加していないドラゴンたちも献上された品物に興奮して騒いでいた。
納得がいっていないのは赤チームのメンバーだろう。
どうやら運営委員の中にも純血種優遇思想がいるようで、上空のスクリーンには長老様と揉める様子が映されていた。
『長老様! これはイカサマです! 白チームは明らかに偽物を用意しています! 認められません!』
『ほう? 偽物である証拠があるのかい?』
『本物である証拠がありません! 第一、我々でも幻の品という認識なのに、外にいたドラゴンが持っているのがおかしいではありませんか!』
『島の外にいたから持っていた可能性もあるだろう? それに白チームは然程時間もかけずにこれらの品を用意した。それは持っていた以外に説明できないだろう? 違うかい?』
『しかし…………』
『鑑定結果も偽物とは出ていない。そうだろう?』
長老様が鑑定専門の文官ドラゴンに視線を送る。
『……はい。間違いなく本物でございます。信じられません』
『だそうだ。島の外には本物があるんだよ』
『くっ………………』
悔しそうに黙る赤チーム贔屓の運営委員ドラゴン。
でも鑑定結果が本物と出たのはなぜだろう?
……あっ、タケミカヅーチ様から貰った鑑定改竄のスキルか。地味に凄いスキルだなぁ。
しかし、あれら本物になっちゃったかぁ。
なんか結界魔法まで付与したショーケースに仰々しく保管されてるし……まあいいか。
安全なセーブポイントが増えたと喜ぼう。
『さあさあ! 次が最後の種目となります! 最後はこれ――リレー! 各チーム代表者を六人決めてもらい、決められたルートを通って貰います! なおこの競技では直接的な接触は禁止とさせていただきます! 妨害は魔法のみ! それでは各チーム代表者六名を選抜してください!』
「私、ランランちゃん、リンリンちゃん、スイ、もう二人はそこのでいいわよね」
「「ちゃんと名前を言えよ!」」
白チームのリーダーであるエリスが即決する。
誰も異論はないようで、走者はエリス、ランランさん、リンリンさん、ヒエール君、ゴウエン君、僕の六人になった。
赤チームも六人決まったみたいだ。
ライト君とレイラ嬢も走者の中にいた。
『では両チーム六人揃ったところで、走者は位置についてください!』
指示に従いそれぞれのスタート位置につく。
ちなみに僕はアンカーだ。相手はライト君だった。
『さて、走者の皆さん、準備はよろしいですか?』
僕は上空のモニターで様子を確認する。皆気合いが入っているようだ。
こちらの第一走者はランランさん。向こうの相手も彼女と同じ地竜らしい。
『それでは位置について、よーい……』
パンッ!!
スタートの合図で両者が走り出した。
ランランさんも相手の地竜もルールは守って魔法で妨害をしている。
やはり地属性なだけあって地面を操るのが得意なようだ。
即席の障害物を作って相手を妨害し、避けながら進むランランさん。
少し遅れを取って次の走者である赤竜ゴウエン君にタスキが渡された。
『ごめん!』
『問題ねぇ! 任せろ!』
意気込むゴウエン君だが、結果は差をつけられる形で次の走者であるリンリンさんに渡る。
リンリンさんは混血種のドラゴンで、先祖にエルフがいるらしく、精霊魔法を使って差を縮めていた。
続けてタスキがヒエール君に渡り、エリスに繋ぐ為に空をかける。
相手の障害物を得意の氷魔法で砕きながら進んでいた。
彼は純血種のドラゴンだが、彼も彼の両親も血には捉われていないらしく、前からケリを付けたかったと言っていた。
かなり無茶をしているようで、エリスにタスキが届く頃には身体がボロボロになっていた。
『す、すまない……後は任せた』
『任せなさい! 今までで一番カッコよかったわよ!』
『ふっ……大きなお世話だ』
エリスが人形態で走り出す。
あいつのことだ。すぐに追いついてここに来るだろうな。
「まったく。あんな風になってまで走るなんて純血種の風上にも置けないね、彼は」
「血は関係ないと思うぞ。勝ちたい、負けたくない。その気持ちがあるだけで勝負事には充分だ」
嫌味っぽい事を言ってきたライト君にそう言うと、彼は微笑むだけだった。
なんだこいつ?
そしてモニターには赤チームの第五走者レイラ嬢に迫るエリスが映し出される。
『くっ……この白竜めがっ!』
『べぇー、私に魔法は通じませんー! 残念でしたぁー!』
エリスはレイラ嬢の水魔法を剣で捌いていた。
そして身体能力だけで距離を突き離す。
一番チートなのこいつだろ。どんなカラクリだ?
そしてエリスが姿を見せる。
「抜かれちゃダメよ、スイ!」
「任せろ」
今こそ僕のとっておきを見せようじゃないか。
僕は竜形態になり、身体を伸ばす。
一本の線になった僕はその反動を前方に解き放ち、流星のごとくルートを駆けた。
「すみません、ライト様。遅くなりました」
「構わないよ。あぁでも、この勝負はもう負けかな」
まあ、あまり関係ないけどね。
最後にそう言ったライトの呟きは、彼以外誰にも聞こえていなかった。
『第三種目リレーは、白チームの勝利! 今年の竜闘祭は白チームの勝利だぁー!』
お読みいただきありがとうございます。




