竜闘祭①
拝啓。
お母さん、お父さん。僕は今、多くのドラゴンたちに囲まれております。
まさか人生……いやスライム生でこんな事が起こるとは想像もできませんでした。
『さあさあ! 今年もやってきました! 年に一度の竜闘祭! 実況は毎度お馴染み! この私! 音竜のオンプがお送りさせていただきまーす!』
背中にスピーカーを背負っているドラゴンが空を飛び回りながら自己紹介をした。
その音竜……オンプさんはドラゴン姿の僕に近づいてくる。
『今年注目のドラゴンはこの方! 長老様の孫で巫女もしている白竜のエリスが外から連れて来たドラゴン! その名も変化竜のスイー!』
ギャアアアアアアアアアアアッ!!!!
観戦しているドラゴンたちが吠える。歓迎されているんだよな?
『何かに変化するのが得意とのことですが……一番得意な変化は何でしょうか?』
『そうですね……町中では猫の姿になっている事が多いですが、一番はやはりスライムでしょうか?』
僕がそう答えるとドラゴンたちが笑い出す。
『最弱の魔物に化けるのが得意なんですか?』
『最弱だから良いんです。まさかドラゴンがスライムに化けているとは誰も考えませんからね』
実際は逆だけど。
『なるほど! 言われてみると確かにそうですね! 人にしか変化できない私たちとは考え方が違います! これは期待できそうですね!』
『し、死なないように頑張ります』
『あはは! 大丈夫ですよ! 今まで死人……死竜が出たことなんて一度もありませんから!』
そのセリフはフラグのような気がする。
『今年のお祭りは盛り上がりそうですねぇ! ではさっそく第一種目といきましょう! 一種目目はこちら! 城崩し!』
目からビームを出す竜が上空に映像を出した。
色んなドラゴンがいるんだなぁ。
『さて、初参加の竜もいますので、ルールを説明します! 島の東西に用意された二つのお城!』
西はヨーロッパのお城。東は日本の城みたいだ。
『相手チームのお城を完全に破壊したチームが勝利となります! 体当たりで壊すもよし! ブレスで壊すもよし! 魔法で壊すもよし! チームメイトと協力して勝利を目指してください!』
過去の映像だろうか?
オンプさんの説明に合わせてドラゴンたちが戦い合う様子が映されている。
「スイ、移動するわよ!」
「わかった」
エリスと一緒に広場を飛び立ち、白チームが守る東の城に移動する。
白チームには昨日知り合ったランランさんとリンリンさんもいた。
「おっす!」
「頑張ろうねぇ」
挨拶もそこそこに競技開始の合図が鳴る。
『さあさあ! 両チーム準備はできましたか? では、竜闘祭一種目、城崩し………………開始!』
「私が攻めるわ!」
「あたしも行く!」
「じゃあ私は守るねぇ」
「僕も守りに回るよ。初めての参加だし」
攻めに行って殺されたら嫌だし。
僕はリンリンさんや他のドラゴンたちと協力して城を守る。
三分ほど待っていると敵チームのドラゴンがやってきた。
「スイ君、敵が来るよ!」
リンリンさんに言われて身構える。僕たちの所には赤い竜と僕と同じ水色の竜が近づいてきた。
違うのは透き通っているか反射しているかだ。
「赤い竜が赤竜のゴウエン君。スイ君と同じ水色の竜が氷竜のヒエール君だよ」
「はんっ! 俺様たちの相手はてめぇらかよ!」
「勝つ為だ。悪いが全力で行かせてもらう」
「くらいやがれ!」
赤竜のゴウエンがリンリンさんに向けてブレスを吐く。
僕は前に出て真捕食を発動した。
「はい、ご馳走様。宣言通りおいしく食らいましたよ」
「…………ほう?」
「彼の評価を改めた方がいいかもしれませんね。変化するばかりかと思っていましたが、ブレスが通じないとは……」
「おもしれぇ。おい、ヒエール。手ぇ出すなよ。あいつは俺様がやる」
「いえ、僕がやりますゴウエン。僕は腹立たしいのです。僕と同じ色をしている彼がね」
そう言いながら氷竜のヒエールが複数の氷柱を放ってきた。
僕は真捕食で相殺する。
「はんっ! てめぇの魔法も通じねぇじゃねぇか!」
「彼に数をぶつけるのは無意味ですね。では……これならどうでしょう?」
げっ!?
あいつ氷塊を放ってきやがった。
大きすぎて真捕食じゃ食べきれない。
「ウィンドカッター! 私の事も忘れないでね」
「わぁ〜助かるよ、リンリンさん」
真捕食!
細かくなった氷塊を全て食べて消滅させる。
「なっ……!?」
「ちっ、男同士の喧嘩に介入してきやがって!」
ヒエールがリンリンさんの行動に驚き、ゴウエンが文句を言ってくる。
ステータス差がある中で僕は頑張っている思う。彼らのステータスがどのくらいか知らないけど。
「あのクソドラゴンめ……リンリンたんと……ぶつぶつぶつ……」
ん? なぜかヒエールから凄まじい殺気を感じる。小さい声で何を言ってるかわからないが、そんなに水を差されるのが嫌だったのか。
でも僕だって必死なんだ! そう、死なない為に!
「リンリンさん、大きいのが来たらまたよろしくね! あと反撃もよろしく!」
「うん、任せて! スイ君は防御をよろしくね!」
「うん!」
ぷっっっちん!
ん? 何かがキレるような音がした。幻聴かな?
「どうやら撃ち合いは互角のようですねぇ。なら……お望み通り肉弾戦にしてやろうじゃないかぁぁぁっ!!」
げぇっ!?
ヒエールが僕に向かって突進してきた。
こ、これはまずい……。
こんな巨体にぶつかられたら一撃で死亡確定だ。
ここは新技能で躱す!
「透過!」
「なにっ??!!」
ヒエールはその勢いのまま僕をすり抜けた。
ふぅ……よかった。
と、安心したのも束の間。
ドゴーンッ! ガラガラガラ…………!
背後から凄まじい音が衝撃が響き、場を混乱させる。
そう、僕の背後にあったのは他でもない。守るべき城だったのだ。
ヒエールの本気タックルをもらった城は、完全に崩れてしまった。
『おーっと! 氷竜ヒエールの攻撃で白チームの城が完全に崩れたぁ! これにより勝敗が決定! 何やら摩訶不思議な現象もあったが、第一種目城崩しは、赤チームの勝利だああああああああああ!』
実況のドラゴン。音竜のオンプさんが宣言し、競技終了となった。
あ〜やっべぇ〜。やっちまったぁ〜。
リンリンさんが「どんまいだよ」と優しく慰めてくれるが、赤竜のゴウエン君は「つまらねぇ終わらせ方しやがって」と文句を言ってきた。
ほんとすみません。
そして怒っているのがもう一匹いた。
「くおらああああああああああっ!!」
エリスが僕に向かって突進してくる。止まる気配はない。
「透過」
「――あべしっ??!!」
僕の後ろにいたヒエールがエリスの突進の犠牲になった。
「ヒエール君、大丈夫!?」
「てめぇ、その身体どうなってんだ?」
「おーい!」
離れた所から遅れて戻ってきたランランさんがこちらに手を振っている。ドラゴン形態ではなく人形態だ。
僕もゴウエンも人形態になって迎えた。
ゴウエンの人形態は赤髪の細マッチョ君だ。
「負けちゃったねぇ」
「すみません。後ろにお城あるの忘れてました」
「まあまあ。あと二種目あるんだし、二回連続勝てば勝ちだよ!」
「はっ! そう簡単に勝たせるかよ。まあ、この一勝はラッキーだったぜ。せいぜい頑張るんだな」
「そうだねぇ。足下掬われないように頑張るんだよ?」
ランランさんとゴウエンが火花を散らしている。
その間に僕はエリスの方を見た。
「もうエリスちゃん! ヒエール君が可哀想だよ。謝って!」
「ごめんごめん。だって透けると思わなかったんだもん。どの道あいつが悪いわね!」
こっちを見て睨んできた。
そしてそんな僕たちのもとに実況のオンプさんが降りてくる。
「えー、勝負の決定打となったヒエール君にインタビューをしたいんですけど……無理ですね。完全に気絶びてます」
「わ、私は悪くないわよ」
「エリスちゃん?」
「うっ……ごめんなさい」
「では仕方ありません。敗北の原因となってしまったスイさんにインタビューしましょう。今回の勝負、白竜エリスの狂行に勝るとも劣らない衝撃的な展開でしたが、その辺いかがでしょうか?」
マイクを向けてくるオンプさん。
僕は思った。
「エリスの狂行ってなんですか?」
「そういえば貴方は知りませんでしたね。過去の映像をお見せしましょう」
と言われ、上空のスクリーンを見ると、今より少し小さいエリスが竜の姿で映し出された。競技は城崩し。
エリスは白組で、防御担当。そして劣勢だ。
そんな劣勢のエリスは次の瞬間、自分の城を攻撃し始めた。
そして白チームの敗北が決定し、オンプさんが赤チームの勝利宣言をする。
『えぇっなんでよ!? 相手チームに崩されたら負けでしょ!? 私が崩したんだから負けじゃないでしょ!』
エリスのそんなセリフを最後に映像は切られた。
こいつ正気か?
という目で僕はエリスを見る。
エリスはふいっとそっぽを向いた。
「エリスちゃんのあの発言で『相手に崩されたら負け』っていうルールが『お城を完全に破壊された方が負け』に変わったんだよ」
苦労してるんだなぁ、運営。
祭りのルールを変えてしまったエリスに驚愕しつつ、僕は敗者インタビューを乗り切り、次の競技へ向けてモチベーションを高めて行くのだった。
お読みいただきありがとうございます。




