祭り前夜
エリスに誘われて来た、竜たちが住む島。
その目的はそこで行われるお祭り――内容からしてスケールの大きな運動会――に参加すること。
昼間はモラルハラスメントが満載な光竜のイケメンドラゴン、ライト君にイラッとさせられたが、その後は平和に過ごす事ができた。
三人から聞いたが、ライト君はあの優秀な容姿でかなりの女の子ドラゴンを食っているらしい。
ファンクラブもあり、盲信するファンの子たちを騙して好き勝手にやっているそうだ。
腹の立つ話である。
そりゃエリス大好きなあの婆さんからしたら婚約話も白紙になるわな。
「お帰りなさいませ、エリス様、スイ様」
エリスの家に戻るとメイド竜のクルルさんが出迎えてくれた。
「ところでお楽しみになられましたか?」
「えぇ、楽しかったわ。やっぱり友達っていいわね!」
「通じてないですよ?」
「……そろそろそっちの教育が必要ですね。する前に飛び出してしまったので」
それでも遅くない?
と思ったが、きっとあの婆さんの事だから過保護に育てたんだろうな。
巫女の仕事は毎日百点を継続することがうんたらかんたらと言っていたし。
「なんならスイ様が直々に教えてもよろしいですよ?」
「あはは、ご冗談を。僕だって命は惜しいですよ」
そんな事をしたら婆さんに殺されかねない。
「それは残念です」
「それは僕が拒否をした事に対する残念でいいんですよね?」
決して僕が殺される事を回避して残念がったわけではないと思いたい。
「そういえばこの島にセーブポイントを作ってなかった」
部屋に戻って分裂体を一体残しておき、神様たちからのメールを見る。
ゼウッス様から孫には何をプレゼントしたらいいかとアドバイスが来ていたので、『僕が孫なら現金が一番嬉しいですね。抵抗があるならギフトカードでもいいと思います』と送っておいた。
奥さんとはあれから上手くいっているのだろうか?
まあ僕が気にすることではないか。
コンコン。
部屋の扉がノックされ、クルルさんが入ってきた。
「スイ様、お風呂の準備ができました」
「行ったらエリスが居るって言う展開じゃないでしょうね?」
「ちっ」
あっ、舌打ちしやがった。なんて態度の悪いメイド竜だ。
「バレてしまっては仕方ありません。二十分後にまた呼びに来ます」
クルルさんは一礼をして出て行く。
そして二十分が経過した。
「スイ様、お風呂の準備ができました」
クルルさんに付いて行き、浴室に入る。露天風呂のようだ。
広くて星空が見え、王都近くの温泉街のような素晴らしいお風呂だ。
脱衣所で服を脱いで、身体を洗ってから風呂に入る。
深さもあるな。もしかしてドラゴンの姿で入るのかな?
そんな事を思いながら縁の方で寛いでいると……
バシャーーーーーーーンッ!!!!
上空から飛来した何か……いや、この場合はドラゴンか。
白いドラゴンによって僕の平穏が乱された。
その白いドラゴンは誰であろう? エリスである。
「ぷはぁー! 良いお湯ー! やっぱりこの姿で入るお風呂は気持ちいいわねー!」
バシャン! バシャン! バシャン!
暴れるエリス。
その暴れ方は今までのストレスを発散しているようだ。
だが周りをよく見てほしい。
ここにはか弱いスライムも混浴しているのだから。
「おい、エリ――スゥ??!!」
がはっ!
し、尻尾が……エリスの尻尾が僕の脇腹を……。
あ、意識が遠のいていく。
この感覚は死………………
「ん? 誰かに呼ばれたかしら? 気のせいね」
部屋に復活した僕は、着替えを取りに行くために着替えて風呂場へ向かった。
扉の前で聞き耳を立てて待機していたクルルさんが二度見してきた。
「え? あれ? なんで外に?」
死んだんだよ!
これでエリスに殺されたのは二度目である。
なお、脱衣所に置いてある服はクルルさんに取ってきてもらった。
ちなみにお風呂から上がったエリスはとても上機嫌だった。
『使徒様、今宜しいでしょうか?』
眠りにつくまで部屋でゴロゴロしていると、レオーラから連絡が入った。
『大丈夫だよ』
『よかった。実は今日騎士団の訓練で……』
レオーラとの会話は当たり障りのない世間話から始まる。僕は合いの手を入れて聞き役に徹した。
やがて僕のターンになり、ドラゴンの住む島で祭りに参加することを伝える。
『さすが使徒様ですね。神様からの依頼だけでなくドラゴンたちとも仲良くなるとは……』
『成り行きだけどね。それにスライムとドラゴンじゃステータス差がありすぎて勝負にならないと思うんだ。さっきも一撃で死んだし』
打撃耐性もあるはずなのに全く意味がなかった。ステータス仕事しろと言いたい。
『竜と亜竜では格が違うと聞きますしね。気をつけてください』
『ありがとう。一撃も攻撃を受けずに乗り切ってみせるよ』
『吉報をお待ちしております。では、そろそろ寝ます』
『うん、おやすみ』
『はい、おやすみなさい』
よし、明日の祭り頑張ろう!
レオーラの声を聴いた僕は、やる気マックスで祭りに挑むのだった。
そこは暗い世界。闇の世界。
小さな光が星のように光っていた。
まるで宇宙だ。
スイがその世界に行ったなら、きっとそう言うだろう。
そんな中、一際大きな光があった。
億千万もある輝きの中で、それはとても眩く、大きく、そして可能性を感じさせるものだった。
それに出会えるのは幸運。
その者は、その光に飛び込んだ。
出会いと可能性を求めて……。
「――ケヒヒヒ……」
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