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白竜の少女


 王都に戻って来た。

 丸呑み。しかも蛇の神様に丸呑みされるという、ある種貴重な死に方をして復活した。

 誤解だって言ったのに信じてもらえなかった。

 いや、元から僕を殺そうと思っていた節もある。

 だって行動に迷いがなかったし。


 僕はとぼとぼと王都の喫茶店に入った。この喫茶店ではエリスと待ち合わせをしているのである。

 エリスは奥のテーブルにいた。


「こっちよ」


 手をあげて存在を主張する白竜の少女。

 ちらほらと談笑する客たちをスルーしてテーブルにつき、メニュー表を広げる。


「何か注文してもいい?」

「私ココアがいいわ」

「じゃあ僕はミルクティー。あっ、後ハムチーズサンド」

「すみませーん! ココアとミルクティーを一つずつと、ハムチーズサンドを二つ」


 こいつ、ハムチーズサンドを自分の分まで追加したな。

 ま、いいや。どうせ割り勘だし。

 しばらくするとウェイトレスが注文した品を持ってきた。

 柔らかいパンにあっさりとしたハムと香ばしいチーズがマッチしてとても良きサンドイッチだ。

 ミルクティーも紅茶の香りが良き良き。


「それで? 僕を呼び出したのはどういった用なんだ? あぁ、その前にあの時はありがとうな」

「いいわよ別に。あの骨も中々面白かったし」

「あのレベルの魔物を面白いって言えるって反則だよな」

「そりゃあまぁね! ドラゴンですから!」


 胸を張るエリス。

 声も周りに聞こえないように配慮する当たり、本当に気をつけているようだ。


「ルナさんとは会ったか?」

「えぇ、今はすっかり元気になって冒険者として活動してるわよ」

「それはよかったよ」


 ルナさんはあの時何もできなかった。

 悪霊とエリスの戦闘にも介入できず、ただ立って見ていることしかできなかったらしい。

 その事を気にしていて、僕とエリスに依頼の報酬を全て差し出してきたのだ。

 もちろん、僕とエリスはそれを拒否した。

 だってそれも含めてルナさんの実力だからだ。

 あの依頼をルナさんが見つけなかったら?

 僕をパーティーに誘わなかったら?

 エリスがあの街にいなかったら?

 僕はルナさんが弱いとは思わない。あの時は彼女の強みが発揮できなかった。ただそれだけだ。

 あの依頼をルナさんが受け、僕とエリスが選ばれたのは偶然ではないだろう。

 だから報酬は普通に三等分した。


「時々貴方の事を探しているのは気に入らないけど……」

「ん? 何か言ったか?」

「別に」


 ココアを飲むエリスの顔が不機嫌になっている。

 ココアが不味かったのだろうか?


「そういえばお前って仲間には自分がドラゴンってことを話してないんだよな?」

「えぇ、そうよ。びっくりさせちゃうもの。まぁせっかく友達になったんだから、いつか話せるといいけどね」

「エリスがそう思ってるならその方がいい。それで話を戻すけど、どういった用件で僕を呼び出したんだ?」

「あぁ、そのことね。実は私たち竜族には年に一回のお祭りがあるのよ」

「お祭り?」

「そうよ。空チームと陸チームに分かれて幾つかの種目で競い合うの」


 運動会かな?


「すっごい盛り上がるのよ! 火山口に岩を運んだり、お城を崩したり、数人で長距離を走ったり……」


 玉入れ、棒倒し、リレーかな?


「最後はドラゴンの子供たちの出し物で終わるんだけど、それがまた可愛いのよ!」


 うん、やっぱり運動会っぽいな。人間とドラゴンでスケールが違うみたいだけど。


「で、今年は貴方にもそれに参加してほしいのよ!」

「僕ドラゴンじゃなくてスライムだけど?」

「大丈夫よ! 王都の結界に引っかからないくらい高度な偽装スキルを持ってるんでしょ? なら人かドラゴンの姿で入ればバレないわ」

「お前正気か? ステータス差どうすんだ? スライムとドラゴンだぞ?」

「なんとかなるわよ。というか無理やり連れて行くからね! 約束だから守ってよ!」


 キラキラとした純心な瞳で僕を見てくるエリス。

 アマテラース様にも言ったけど、僕エリスに好かれるようなフラグは立てていないはずなんだが?

 強いて言えば『黒い世界』を使った影響で身体が黒くなったドラゴンの姿を見られたくらいだ。

 まさかあの姿に一目惚れしたとか?

 まあ僕にしては中々かっこいい感じに擬態したと思ったけど……まさかな?

 とりあえず返事だけでもしておこう。


「わかったよ。出発はいつ頃だ?」

「今日の夜よ。南の森にカエルの形をした岩があるから、日付けが変わる頃にそこに集合ね」

「了解。そういえばピッケ君たちには何て言うつもりだ?」

「二週間くらい実家に帰るって言ってあるわ。ピッケ達も王都に二週間留まるくらいは大丈夫って言ってたし」

「詳細聞かれなかったのか?」

「安心しなさい。そこら辺は上手く誤魔化したわよ」

「そっか」


 食事をし終え、会計を済ませて喫茶店を出る。

 なぜか全部僕の奢りになったが、大人な僕は気にしない。

 とりあえずエリスと別れ、僕は王都でお菓子などを買っていった。

 竜たちと交流する良い機会だから、話のネタになるだろう。

 そうして日が暮れていき、日付けが変わる頃、僕はエリスと待ち合わせたカエル岩に集合した。

 エリスは既に来ていたようで、月を眺めている。

 が僕に気がついて視線を向けてきた。


「待たせた?」

「ううん、大丈夫。月が綺麗だからずっと見てたの。暇じゃなかったわよ」

「そっか。そうだな。確かに今夜の月は綺麗だな」

「うんっ!」


 まん丸の満月だ。

 月明かりの下、僕とエリスは同時に竜の変化する。

 何ものにも染まらない真っ白な竜が目の前にいた。


「あら? 黒じゃないの?」

「僕はスライムだよ。あれはスキルで黒くなってたけど、基本は水色だ」

「そう。でも綺麗ね。なんか透き通ってるし……うわぁ、ぷにぷにしてるわ」

「お、おう」


 エリスが竜の顔で僕の胴体をつついてくる。

 なんかこそばゆいな。


「早く行った方がいいんじゃないか?」

「そうね! 行きましょう! 遅れないように付いて来なさい!」

「あいあい〜」


 僕はご機嫌な白竜を追うように、夜空に羽ばたいた。



お読みいただきありがとうございます。



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