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VS冒険者


 スライムを五十匹捕食して、アンデッドデミビッグスライムに進化した僕。

 新しく入手した技能、サイズ変化を森で試したところ、その巨体で森の木々を倒してしまい、その姿が武装した人間たちに見つかってしまった。


「こ、こいつはスライムか?」

「こんなスライム、見たことないぞ?」

「どうする?」

「決まってるだろ、討伐するぞ!」

「「おう!」」


 剣、槍、ハルバードを持った三人の男たちが一斉に攻撃してきた。

 ひぃっ!

 体力が削られていくぅ!


「やっぱりスライムだな! 斬撃、刺撃が弱点か! このまま押し切るぞ!」


 や、やられてたまるか!

 前世は人間だったけど、今世の僕にはスライムとしての矜持があるんだ!

 くらえ、腐食液!

 僕は腐食液を男たちの武器に向かってかけた。

 腐食液が当たった武器は塵となって消えていく。


「な、なに!?」

「武器が!」

「なんだこの攻撃は!?」

「気をつけろ! こいつは普通のスライムじゃない!」


 正解だよ。でも君たちを殺すつもりはないからね。

 くらえ! 溶解液ミスト!

 溶解液を霧のように噴射した。


「ぐわぁっ! 目、目がぁぁぁ!」

「くそっ! 痛くて開けられねぇ!」

「の、喉が……!?」


 ごめんよ。

 でも今なら……


 僕はサイズ変化で最小サイズになり、茂みに隠れる。

 回復した男たちは「あのスライムはどこだ?」と掠れた声で言いながら、森から出て行った。

 いやぁ、危なかった。

 ステータスが上がったとはいえ、やっぱりスライムの身体は弱いな。

 特に斬撃と刺撃。

 あの巨体だと素早さもあってないようなものだ。代わりに物理攻撃力は上昇していたが。

 最小サイズの方が見つかりにくいし何かと都合がいいので最大サイズへの変化は封印することにしよう。

 そう決めた僕は、森で活動する為の拠点探しを再開することにした。



 拠点が決まった。

 大木の洞だ。

 ここにも分裂して残機を一つ置いておき、洞の中を捕食と溶解液で掃除する。

 ついでに入り口を木の茂みで隠した。

 これで安心して無茶なことができる。

 まあしばらくはのんびりしようと思っている。

 人間たちにバレちゃったし、不用意な行動は控えるべきだろう。

 今日は日も出ているし、のんびり日向ぼっこでもして過ごそう。


 あ〜、平和だなぁ〜。



 翌日。

 僕は擬態してカラスになって、空を飛んでいた。

 ひゃっふぅーーーっ!

 空中旋回ー! 三回転ー!

 分裂してステータスが三分の一になっているが、スライムを捕食したことで魔力が増え、擬態を検証できるようになった。

 今の魔力は524。

 三分の一だと141。

 つまり141秒はカラスで行動ができる。

 がしかし、僕はここで凄いことに気づいてしまった。

 擬態している間は一秒に一ずつ魔力が減っていく。

 そして自然回復する魔力が三秒に一だ。

 実は三秒ごとに魔力が2回復しているのだ。

 これはたぶん分裂体が空気中の魔力を吸収しているのだろう。

 その事に気づいた僕は分裂体を三つに増やした。

 所有魔力は104と減ってしまったが、三秒にで3回復している。

 つまり永久擬態が可能になったわけだ。

 ちなみに、三体分裂体を出したステータスがこちらだ。


『名前:

 種族:アンデッドデミビッグスライム

 技能:捕食、分裂、擬態、溶解液、腐食液、サイズ変化

 レベル:8

 体力:320→80

 魔力:524→104

 物理攻撃力:109→27

 物理防御力:221→55

 魔法攻撃力:221→55

 魔法防御力:313→78

 素早さ:221→55

 耐性:打撃、毒、闇

 弱点:斬撃、刺撃、光

 擬態:土、石、葉、カラス、ダンゴムシ、ムカデ、ミミズ、花、ミツバチ、グール』


 ステータスが本来の四分の一しかない。

 しかし、それでも永久擬態は魅力的だ。

 森の探索もカラスになってした方が早いし、グールになれば火おこしや工作もできる。

 完全な人間の姿になれないのは残念だが、スライム生を謳歌するとしよう。

 その証拠に、今はグールになって自作した釣竿で釣りをしている。

 川の魚の姿なんか見当たらないが、気分だ気分。

 雰囲気が味わえればそれで良い。


 数日ほどそんな感じにのんびりとしたスライム生を謳歌していたが、その平穏は破られることになる。


 ん? あれは人間たちだ。


 カラスで優雅に空を飛んでいると、武装した人間たちが大勢森に入っていった。

 なんだか嫌な予感がする……。

 人間たちの会話を聞く為に、近くの木に止まった。


「まったく、何がスライムの変異種だよ。そんなのいねぇじゃねぇか」

「しかしあいつらの惨状は本物だ。見かけ次第討伐するように言われたしな」

「けっ! スライムごときに油断しやがって」


 あわわわわ……僕のせいかぁぁぁ!



 森を進んでいく武装集団。

 冒険者か探索者か狩人かは知らないのでとりあえず冒険者としよう。

 冒険者たちは僕が数日前に戦闘をした所まで来ていた。


「結構デカいな」

「ああ。それに……」


 冒険者の一人が木を触る。

 溶解液ミストがかかった木だ。


「溶解液を霧状にして噴射してきたらしい」

「防衛本能だろうか?」


 ピンポンピンポーン! 正解!


「どちらにせよ危険だ。町にも被害が出るかもしれない。やはり見つけ次第討伐するぞ」

「「「「はい!」」」」


 一際目を引くリーダー格の女性冒険者がそう判断し、周りが返事をする。

 ひぇぇ……あの人は強そうだ。

 見るからに強者の風格を放っていた。

 さらに最悪なことに、冒険者たちは僕の拠点にまでやってきた。

 ま、まずい! そこは!


「ん? 人の足跡?」

「焚き火をした後もある。しかもつい最近だ。誰か居たのか?」

「釣り竿もあったぞ」


 グールに擬態して生活していた証拠がぁぁぁぁ!!

 はっ! 冒険者の一人が分裂体のいる洞に近づいている。

 まずい!

 僕は咄嗟にカラスの擬態を解き、洞にいる分裂体に指令を出す。

 葉に擬態しろ!


「お、洞がある。でも人が住めるような大きさじゃないね」


 セェェェェェェフ!!

 葉っぱに擬態した分裂体はゴミだと思われたようだ。

 しかしまずいな。

 ここまで調査が来ているとなれば、僕に安息の地はないぞ。

 隠している他の分裂体もいつ見つかるかわかったものじゃない。

 よし!


 僕は分裂体を一体だけ残し、サイズ変化で最大サイズになり、暴れて冒険者たちに存在を気づかせる。

 

「いたぞ! スライムの変異種だ!」

「本当にいやがった!」

「おい! ヤツの回り、霧がでてるぞ!」


 よしよし、冒険者たちが僕に気づいたぞ。

 あとは……


「風魔法で霧を飛ばせ! 矢を持っている者は追撃だ!」


 リーダー格の女性冒険者が指示を出す。

 僕の狙いはこれだ。

 矢は避けずになるべく受ける。

 そして痛がるように溶解液を乱噴射した。


「効いてるぞ!」

「だがこれじゃあ近づけない!」

「どうしよう、アンジェリカ!」

「私の魔法を使う! 時間を稼いでくれ!」

「「「了解!」」」


 リーダー格の女性冒険者アンジェリカというらしい……が、魔力を練り始めた。

 僕は溶解液を彼女に当たるか当たらないかのギリギリを狙って放つ。

 盾持ちの冒険者たちが彼女を守り、盾持ちじゃない冒険者たちも身を呈して守っていた。

 装備はダメになるだろうけど、許してくれよ。


「皆、ありがとう! もう下がっていい!」


 アンジェリカが僕に向けて剣先を向けた。


「光の奔流に呑まれるがいい……白光爆破撃ライトエクスプロージョン!」


 アンジェリカが魔法を放ったその瞬間、僕の視界は真っ白に覆われ……


 僕は、死んだ。



お読みいただきありがとうございます


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