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VS悪霊


「うぅ……………………」


 女将さんがうなされている。

 そしてその隣で寝ている店主の旦那さんは、今にも死んでしまいそうなくらい衰弱していた。

 今までずっと悪霊の魔の手に抗ってきたのだろう。

 女将さんも限界が来たのかもしれない。

 しかし、討伐対象である悪霊がどこにいるのか分からない。

 アマテラース様はまだ源泉には行ってないと言っていたが、もし今源泉に行っていたとしたら?


「ふんっ!!!!!」


 僕は両手で頬を叩いた。

 乾いた音と僕の奇行にルナさんがびっくりしている。


「どうしたの……?」


 ルナさんが聞いてくるが、僕の頭には入ってこない。

 考えろ。

 考えるんだ。

 悪霊は死んでいない。なんでだ?

 悪霊は……………


「生命力…………セーブポイント…………」


 源泉に行かない理由は、そこに行く必要がないからじゃないか?

 源泉には餌になる人間が来ないから……。

 まさか……まさか悪霊がいるのは…………


「街全体の温泉か?」

「んっ……」


 僕がそう呟くと同時に、ルナさんが膝を付いた。


「大丈夫ですか、ルナさん」

「ん……。ちょっと目眩……」


 そういえばこの人もお湯に浸かっていた。

 エルフは長寿というから生命力は高いんだろうけど、結構吸われたのかもしれない。


 ガヤガヤ、ザワザワ……!!


「騒ぎ……」

「行ってみましょう」


 宿の外が騒がしく、表に出る。

 倒れている人が多い。

 僕は屋台の店主に事情を聞いてみることにした。


「何があったんですか?」

「あぁ、人が急に倒れたんだ。で、一人が介抱しに近寄ったらそいつも倒れちまってな。それで……その知り合いも……」

「意識を失ったと?」

「あぁ。しかもそんな現象がそこかしこで起きてるらしい」

「伝染しているのか……」

「んっ……!?」

「お、おい! なんだアレは!?」


 ルナさんと屋台の店主が空を見上げている。

 もう夜で暗くなっているが、街の灯りや月の明かりでその姿がはっきりと認識できた。

 スケルトン。

 藤色のローブを着たスケルトンが宙に浮いて僕らを見下ろしている。

 そして何かの魔法を行使した。


「んっ……!?」


 ルナさんが再び膝を付く。

 屋台の店主は気絶したようだ。

 どうやら生命力を吸い取っているらしい。

 僕が平気なのは体力が普通の人間よりも多いか魔法防御力が高いからだろう。


「生意気……」


 ルナさんが矢を放つ。

 矢はスケルトンの頭を撃ち抜き、そのまま空の彼方に消えていった。

 スケルトンは再生している。


「理解不能……」

「あれは本体じゃありません。能力の一部です」

「カタカタカタカタカタ!」


 歯を鳴らして僕らに光の球を撃ってきた。

 不味い!?


「真……何でもガード!」


 真捕食で相殺する。

 ルナさんと街の人たちを庇いながら、スケルトンと戦い、さらに本体を探す。

 無理だ。

 せめてルナさんがあのスケルトンに対抗する手段があれば……と、僕がそんなことを考えていると…………


「とりゃあああああああああっ!!」


 スパッ!!

 突如登場した一人の少女がスケルトンを斬った。

 白竜の少女エリスだ。

 生命力の桁が違うから生き残ったらしい。


「ちょっと何なのよ、コイツ! ピッケたちが眠っちゃったのはコイツのせい?」


 スケルトンのいる所まで跳躍したエリスは、着地すると僕に尋ねてきた。


「そうだよ。でもあれは敵の本体じゃないんだ」

「えっ!? じゃああれ倒しても意味ないってこと!?」

「再生……」

「うわっ、ホントだわ! 厄介なヤツね」

「カタカタカタカタカタ!」

「何でもガード!」


 スケルトンの放ってきた魔法を再び真捕食で相殺する。


「エリス! アレの相手できる? 僕はその間に本体を叩いてくる」

「逆がいいわ! 私が本体を叩くから貴方がアレの相手をしなさい!」

「敵の本体が複数いる可能性があるんだ! 全部同時に倒さないと人間たちの生命力を吸収して復活してしまう!」

「面倒な敵ね……わかったわ! その代わり私の言う事を一つ聞いてもらうわよ!」

「むぅ……背に腹は変えられないか……。わかったよ。何でも言ってくれ」

「よっしゃ。ということで……」


 エリスがその場から消える。

 と思ったら既にスケルトンに近付いていた。


「あなたは私とデートね」

「カタカタカタ」


 嬉々としてスケルトンの相手をするエリス。


「あいつ、骨の趣味だったのか。なんか意外だなぁ〜」

「違うと思う……」


 ルナさんがツッコミをしてくれた。ありがとうございます。


「じゃあ僕は作業に取り掛かりますので……」

「ん……」


 佇むルナさんをその場に置いて、僕は悪霊退治の準備を開始した。




「真分裂。分裂数107。真擬態『カラス』」


 僕はお湯が残る温泉宿の一つで107羽のカラスを用意する。

 一つの個体から数を用意できるのは悪霊(きみ)だけじゃないんだよ?


「行け」


 カラスに擬態した僕の分裂体たちがこの街の全ての温泉に向かって飛んで行く。

 そして……


「真捕食」


 自爆覚悟でお湯ごと全てを喰らった。


『――ァアアアアアアアアアッ!!??』


 僕の体内で悪霊が断末魔の叫びを上げている。

 残る温泉は一つ。

 そう、僕の目の前にある温泉だ。


「――ァアアアアアアア!!」


 お湯がふにょふにょと蠢いて僕に襲いかかってきた。

 なぜか僕の中に底知れない怒りが湧いてくる。

 たかが悪霊の分際で………………


「スライムの真似をするんじゃねぇえええええっ!!」


 真捕食!


「一欠片の魂も残さず浄化してやる。お前は金輪際目覚めることはないと思え」

「ァァァァァァ………………」

「はい、ご馳走さま」


 アマテラース様に連絡して悪霊が完全に居なくなったか確認してもらおう。

 ステータスオープンと……


『名前:スイ

 種族:ガラクタ・ゴースト・デミドラゴン・キラー・ネオファイターポイズンスライム

 技能:真捕食、真分裂、真擬態、強溶解液、強腐食液、サイズ変化、胃袋、改造、火魔法、弱点看破、探知無効、黒の世界、雷魔法、真武術、虚偽記載、毒手、透過new

 レベル:32

 体力:1168

 魔力:1872

 物理攻撃力:883

 物理防御力:843

 魔法攻撃力:885

 魔法防御力:987

 素早さ:845

 耐性:打撃、毒、全属性

 弱点:斬撃、刺撃

 擬態:土、石、葉、カラス、ダンゴムシ、ムカデ、ミミズ、花、ミツバチ、グール、黒猫、人間、鉄の剣、銅の短剣、弓、矢、麻痺毒、斧、槍、黒いローブ、銅貨、銀貨、金貨、酒、瓶、ライター、タバコ、火薬、麻薬、小麦粉、パン、リンゴ、モモ、古びた壺、魔法ランプ、ネックレス、ペンダント、指輪、鍵、手錠、鎖、腕時計、鏡、綿、白い布、木材、ペン、インク、紙、ワイバーン

 連絡先:アマテラース、ゼウッス、ヘパイストース、タケミカヅーチ、ミミューズ、オロチ、ヘルメッス、ヘッラ、ロッキー』


 おっ、進化してるな。アンデッドの部分がゴーストになった。

 取得技能は透過か。幽霊らしい技能だ。

 さて、アマテラース様にメールをしよう。

 連絡先からアマテラース様を選択し、メールを送る。


『悪霊退治完了しました。もう居ないですかね?』

『ですよねぇ〜。タケル君は誰にでも優しいですけど、それって特別感とか感じないんですよね〜』


 ん? 誤送かな?


『メッセージが削除されました』


 誤送確定だw


『もうスライムさん! 急にメールしないでください。私今、友達とココアトークしてたんですから!』

『アマテラース様、ココアトーク派なんですね。まあそれはどうでもいいですけど、悪霊退治しましたよ』

『ちょっと待ってください……あ、はい、もう居ないですね。スライムさんの胃の中で浄化……消化?されてます』

『そうですか。それはよかった。所でアマテラース様』

『なんですか?』

『今って何されてるんでしょうか?』

『お友達とカカオトークです』

『そうじゃなくて普段ってことです。なんか怪しいんですよね? 連絡が一切来ない時期もありましたし、本当は何してるんですか? タケル君ってタケミカヅーチ様のことですか?』

『うぅ……こうなってしまっては話すしかありませんね。実は私、今女子高生してるんです。JKですよ、JK』

『はい? え? 歳とかどうしてるんですか?』

『そんなの神のチカラで簡単に誤魔化せます。というかスライムさん、失礼ですよ! 私、生きてる年数はともかく、容姿はピチピチの十代なんですからね!』


 つくづく神という存在は反則だと改めて思った。


『それよりもスライムさん! 早く二人の所に戻ってください! 探してますよ?』

『やばっ、忘れてた!』

『やーい、やーい、怒られちゃえー!』

『子供かっ! まぁいいです。今日はありがとうございました。ではまた』

『はい、また』


 僕はアマテラース様とのメールを止め、エリスとルナさんのもとへ戻った。

 次第に倒れていた人も意識を取り戻し始めた。

 数日後には悪霊が封じられていた温泉宿の店主や女将さんも、憑きものが落ちたのかすっかり元気になり、休職していた従業員も戻りつつある。



 そして僕は……



「あ〜、気持ちぃ〜。温泉さいこ〜」



 夢見心地な気分になって、温泉に何度も殺されていた。



お読みいただきありがとうございます。


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