スライム?
「すみません。調査を始める前にトイレ行ってもいいですか?」
「ん……」
トイレはこじつけだ。スライムである僕は排泄を必要としない。
トイレを理由にルナさんから距離を取り、僕はステータス画面を確認する。
『名前:スイ
種族:ガラクタ・アンデッド・デミドラゴン・キラー・ネオファイターポイズンスライム
技能:真捕食、真分裂、真擬態、強溶解液、強腐食液、サイズ変化、胃袋、改造、火魔法、弱点看破、探知無効、黒の世界、雷魔法、真武術、虚偽記載、毒手new
レベル:32
体力:1168
魔力:1772
物理攻撃力:883
物理防御力:843
魔法攻撃力:835
魔法防御力:937
素早さ:845
耐性:打撃、毒、全属性
弱点:斬撃、刺撃
擬態:土、石、葉、カラス、ダンゴムシ、ムカデ、ミミズ、花、ミツバチ、グール、黒猫、人間、鉄の剣、銅の短剣、弓、矢、麻痺毒、斧、槍、黒いローブ、銅貨、銀貨、金貨、酒、瓶、ライター、タバコ、火薬、麻薬、小麦粉、パン、リンゴ、モモ、古びた壺、魔法ランプ、ネックレス、ペンダント、指輪、鍵、手錠、鎖、腕時計、鏡、綿、白い布、木材、ペン、インク、紙、ワイバーン
連絡先:アマテラース、ゼウッス、ヘパイストース、タケミカヅーチ、ミミューズ、オロチ、ヘルメッス、ヘッラ、ロッキー
通知:メール一件』
ヒドラの討伐戦に参加したことでレベルが二つ上がっていた。
あと技能に毒手が追加されていた。
手が紫色になっている。黒の世界を使用すると黒い手になった。
黒い手袋だと思ったら実は毒の手でした〜!
とかできそうだ。
嫌なヤツがいたら不意打ちで握手してやろう。シッシッシッ……。
お、そういえばメールが一件来ているな。誰からだろう?
アマテラース様からだった。
『こんにちは、スライムさん。お久しぶりです。私のこと覚えていますか?』
『はい、覚えてますよ。僕をタケミカヅーチ様に売ったことは一生忘れません』
『そ、そういえばそんなこともありましたね! 所でスライムさん、青春っていいですよねぇ〜! 私もスライムさんみたいな青春を送りたいです!』
露骨に話題を変えてきたな、この女神様。
というか……
『僕青春してませんけど?』
『またまた〜。女の子たちと良い関係を築いているじゃないですかぁ〜。見てますからねぇ〜。特に恋愛ごとに興味津々な神様たちは誰とくっ付くか賭けをしていますよ〜。一番人気がレオーラ王女。二番がサラちゃん。三番がルナさん。四番がエリスさんです』
『また勝手なことを……。というか、はい? サラちゃん?』
『はい。サラちゃんです』
『ほわっつ? なんで神様たちはサラちゃんにも賭けてるんですか?』
『スライムさんはロリコンの気質があるからという理由です。意外とサラちゃんに賭ける神様が多いみたいですよ』
『僕はロリコンではないです』
一番ねぇよ。
『でも賭け金が一番高いのはエリスさんなんですよ? ほら、エリスさんってスライムさんを殺してるじゃないですか。だから一番選ばれなさそうという理由で倍率が百倍なんです。レオーラ王女の1.2倍と雲泥の差です』
『へぇ〜、そうなんですか』
『あっ、興味無さげな反応ですね? その宿のこと教えてあげませんよ?』
『そ、そんなことないですよ! いや〜、未来の僕は誰を選ぶんでしょうね? ちなみにアマテラース様は誰に賭けたんですか?』
『私です!』
『………………はい?』
『だから私です! スライムさん、私の伴侶になりましょう。そうすれば皆の賭け金が私たちのモノに……ククク……』
文面でのやり取りなのに怪しい笑い声が聞こえるようだ。不思議。
警察の神様とかいるのかな? あ、正義の神様か。
不正行為としてこの女神様を突き出したい気分だ。
まあいいや。話を進めよう。
『ところで宿のことってどういう事なんですか? 女性客が発狂する理由は、やっぱりこの宿に?』
『はい。その宿には悪霊が封じられています』
『悪霊……ですか……』
『その宿のご先祖様が払い屋としてそこそこの実力者だったのです。当時その払い屋は悪霊を地下に封印しました。そして監視の為にその宿を建てたのです』
なるほど。でも女将さんからそんな話は聞かなかった。
ということは……
『払い屋としても廃れていったということですね』
『はい。今の店主や女将さんは何も知りません。しかも悪霊の封印はもう解かれています。今は人々から生命力を徐々に吸い取り、チカラを蓄えています。特に若い女性をターゲットにしているようです』
『なんで若い女性を狙ってるんでしょう?』
『カップルで温泉宿に来る。すると人間はどうするでしょう?』
『どうするって……まぁ良い夜を過ごすでしょうね』
『はい。生命の営みをします。悪霊にとっては一番効率よく生命力を吸収できる瞬間です』
『なるほど。でも男じゃないんですね』
『きっと女性の生命力の方がおいしく感じるんだと思います。熊と一緒です』
そういえば熊は男か女か気に入った方だけを好んで食べると聞いたことがある。それと一緒か。
でも居場所が分かればこっちのものだな。
『情報ありがとうございます。とっとと地下に行って倒してきます』
『え? 地下には居ませんよ? 今は温泉に溶け込んでいます。まだ源泉の方には行ってないようですが、早めに除霊をしないと温泉街全体に悪霊の魔の手が広がってしまいます』
なんだって!?
女神様と呑気にメールしてる場合じゃなかった!
『ありがとうございます! 僕もう行きます!』
『はい。頑張ってください。終わったらまたお話ししましょう』
『はい!』
僕は女神様とのメールを中断し、トイレから飛び出す。
ルナさんにこの事を伝えなければならない。
「あっ、女将さん、ルナさんは!?」
「あぁ、冒険者様。エルフ様でしたら温泉に行くと言っていましたけど……」
「えぇ!? 温泉はどっちですか!?」
「あ、あちらの角を左に曲がってすぐですけど……」
「ありがとうございます!」
「あっ、冒険者様――」
僕は慌てて走った。
女将さんが止めてきたがそれどころではない。
僕は女湯の暖簾をくぐり、ドアを開けて中に入った。
「ルナさん! 温泉です! 温泉に悪霊が……いて……」
「ん〜……………………。ん……?」
ルナさん、裸で入浴中。
温泉に行くって……
「調査じゃなくて入浴かい!」
「変態……。早く出る……」
温泉に入ったままのルナさんから凍てつくような視線が向けられた。
「はい、すみません……じゃなくて! 原因が分かりました! 温泉です!」
「は……?」
「この温泉に悪霊が……ってルナさん、後ろ!」
「っ……!?」
「ルナさん!?」
温泉の湯がルナさんを捉える。
まるでスライムみたいだ。僕のアイデンティティが……とか言ってる場合じゃない。
ルナさんは咄嗟に口を押さえてお湯を飲み込まないようにしていた。
「今助けます!」
僕は真捕食を拳に纏わせてお湯を殴る。
拳が触れた部分だけが抉られ、ルナさんを救出した。
「けほっ……。ありがと……」
「はい! ルナさんは服を着て来てください! 僕はコイツを退治します!」
「わかった……」
「あっ、エルフ様! すみません、今冒険者様がこちらに……こ、これはいったい!?」
「敵……。元凶……。避難する……」
「は、はい!」
ルナさんが入ってきた女将さんを連れて更衣室に撤退する。
「ルナさんが居なくなったからもう加減はいらないよね?」
弱点看破からの真捕食!
「はい、ご馳走さま」
温泉のお湯ごと真捕食で喰らってやった。
除霊って感じではないけど、まあOKだろう。
僕が浄化済みのお湯を戻していると、服を着て弓を持ったルナさんが浴場に入ってきた。
「来て……」
ルナさんに手を取られて更衣室に戻る。
すると女将さんが倒れていた。
「急に倒れた……。運ぶ……」
「は、はい!」
悪霊は死んでない?
なんだか嫌な予感がする。
そう思いながら、僕は女将さんを運び、店主さんの横に寝かせた。
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