告白?
王都に戻ってきた。
一ヶ月ぶりくらいだろうか?
「入場者は各所属ギルドのカード提示をお願いします」
「はい」
門番にギルドカードを提出する。
「お、おい、この名前……」
「あっ」
門番たちが何かを確認し合っていた。
「何かあったんですか?」
「あぁ、いえ。なんでもありません」
「確認は終わりましたのでお通りください」
と言われたので門を通って中に入る。しかし後ろを振り返ると兵士たちが少し慌てた様子で動いていた。
そして馬に乗った一人が僕を追い越し、街の中心に向かって行った。
やっぱり何かあったのではないだろうか?
気になるが用事が先。
僕はいち早くドワーフの親方が仕切る酒造所に向かった。
「ドワーフのおっちゃ〜ん! いる〜?」
「ん? おう! 久しぶりだな坊主! ヒドラの毒が手に入ったのか?」
「その通りです」
僕は採集したヒドラの毒が入った瓶を五つほど胃袋から取り出す。
「約束は覚えてますよね?」
「もちろんだ! 約束通りタダで作ってやる! この量なら……そうだな、十日後に取りに来い!」
「美味しいお酒期待してますよ」
「任せとけ!」
完成した一瓶は親方にあげるとして、四つあればオロチ様も満足するだろう。一瓶二リットルはあるし。
……満足するよね?
ともあれ僕は酒造所を去り、久しぶりに王都観光と洒落込んだ。
ヒドラ討伐の報酬も出たし、しばらくはお金に困らない。
適当な喫茶店に入りコーヒーと甘味を楽しむ。
うん、うまいうまい。
『……使徒様、聞こえていますか?』
……ん? レオーラ王女から通話が入った。声色から若干の遠慮が伺える。
そういえば特に用が無くても連絡していいと言っていたが、連絡してくるのは初めてだ。
『もしもし。レオーラ王女? 聞こえてますよ』
『あぁ、繋がってよかった。凄い魔道具ですね、これは』
まあ僕自身でもあるからね。レオーラ王女が大切にしてくれるなら僕が完全に死ぬことはない。
『お褒めに預かり光栄です。それで僕に何か用事ですか?』
『あ、いや、大した用事ではありません。ただ……今、王都にいらっしゃいますか?』
『うん。半刻前くらいに王都に入ったかな?』
『そうですか。ではスイという名の冒険者であっているのですね?』
『おぉ、正解! あっ、もしかして兵士たちが僕の名前を見て慌てていたのはレオーラ王女に報告をしに?』
『そうです』
『でもなんで僕ってわかったの?』
『ギルドに協力して貰い、オーク討伐の参加者の中から探しました。その中から名も知られていなく、実力がある者を探した所、スイとエリスという名が浮上し、後者は言動やパーティーを組んでいるという点から排除。そしてスイ様は行方が分からない為、この冒険者が使徒様の可能性が高いと思いました』
『それはお見事。じゃあこれからは僕の事はスイって呼んでよ。様付けや使徒様だと堅苦しいからさ』
『……は、はい…………わかりました。ス、スイ……様…………すみません、こういうのは慣れていなくて』
『あぁ、まぁ王女様だからね。教育がしっかりされているようで何より。レオーラ王女が呼び易いのでいいよ』
『では使徒様で』
『あいあい〜』
『あの、使徒様……』
『なに?』
『私の事はレオーラとお呼びください。私は使徒様と……お、お友達になりたいのです……。ダメ、でしょうか?』
『そんな事ないよ。じゃあ公式の場じゃない所ではレオーラって呼ばせてもらうね』
『はい!』
笑顔のレオーラが脳裏に浮かぶ。
この世界で人間の友達なんて初めてだ。
え? エリス?
エリスは人間のフリをしてる竜だからノーカンだね。魔物友達ではあるが。
『そういえば使徒様。この一ヶ月はどちらに行ってらしたのですか?』
『北の方だよ。実は神様からのクエストがあってね。ヒドラの毒酒が飲みたいって言うからヒドラを討伐しに行ってたんだ。レイド戦は初めてだったけど中々楽しかったよ』
『レイド戦ですか。確か一匹の魔物を大勢で狩るのでしたね。私はやったことが無いので羨ましいです。あっても冒険者が沢山いますし』
『そうなんだ。そういえばオークの軍勢も珍しいんだったね』
『はい。あの時も本当は最初から参加したかったのですが、洞窟に突入した冒険者たちを迎えに行く事しか許可が出ませんでした』
それは君がお姫様だからだと思うよ。
『あの時はこっちも助かったよ。皆思ってたよりも消耗していたしね。レオーラが来てくれて僕は安心したんだよ』
『それはお役に立てて何よりです!』
僕が本心からそう言うとレオーラは喜んだ。リップサービスくらいはしておこう。
『じゃあ今度レイド戦をやる事になったらレオーラを連れ出してあげるね』
『あはは! それはいいですね! 約束ですよ! 楽しみに待っています!』
冗談で言ったつもりだったのだが、思いの外ウケてしまった。
今度レイド戦があったら国王様に許可を得てから連れ出そう。
『あっ……すみません使徒様。これから習い事がありますので、これで失礼致します』
『ん? そっか。それは頑張って。またお話しようね』
『はい! ではまた……』
『うん。また』
レオーラからの通話が途絶える。
……なんだか少し寂しくなってしまったな。
喫茶店が静かなせいもあるだろう。
「気晴らしに冒険者ギルドに行ってみよう」
あそこならいるだけで騒がしい。退屈凌ぎにはなるだろう。
普段はどんな依頼があるのか気になるしね。
冒険者ギルドに来た。
なんだか騒がしい。
何の騒ぎだろう?
「すみません。何の騒ぎですか?」
「決闘だよ、決闘。赤鬼のレッドと青牛のブルートが決闘するんだ。賭けもやるぞ」
気さくな兄ちゃん冒険者が教えてくれた。
「へぇ〜、決闘ですか。ちょっと見物させてもらおう。勝率はどちらが高いんですか?」
「ん〜、五分五分だな。ただどちらもパワーだけならBランクくらいある。戦闘だけなら王都の中でも上位だな」
「へぇ〜。そりゃ楽しみですねぇ」
闘技場に移動し、飲み物を片手に赤鬼さんと青牛さんの決闘を見物する。
両方ともハルバード使いらしい。
決闘が始まった。
「赤鬼負けんなー!」
「青牛! お前に賭けたからなぁー!」
「砕けろぉ!」
「てめぇがなぁ!」
お、赤鬼さん優勢だ!
いや青牛さんが誘ったのか?
しかしそれを見通している赤鬼さん!
お、青牛さんが仕掛けた!
決まるか?
おぉ! 耐えた!
観客席からも歓声が上がる。
決闘は赤鬼さんが辛勝で終了した。
「迫力あったなぁ〜」
回復魔法使いがその場で二人の治療を開始する。
そして闘技場は腕を上げたい冒険者たちが順番に模擬戦をしていた。
予想通りここは退屈凌ぎにはピッタリだったな。
そんなことを思っていると……
「いた……」
と僕を見ながらそんな言葉を発する冒険者がいた。
エルフの弓使い冒険者ルルナミーナことルナさんである。
「あ、ルナさん。お久しぶりです」
カップに残っているジュースを飲み干し挨拶をする。
ルナさんはそんな僕の手を取り……
「付き合って……」
と言ってきた。
「…………はい?」
……え? 今、告白された?
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