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VSヒドラ


「よし」


 モヒカン馬鹿の冒険者を成敗し、勝鬨を上げる僕。

 そこに新しい敵が現れた。


「よし。じゃないわよぉ。扉壊れてるじゃないのぉ」


 野太い声でお姉口調なマッチョのおっさんだ。


「魔物ぉおおお!? 冒険者あああああ!」

「失礼ねぇ。人間よぉ。あと貴方も冒険者でしょぉ」


 あっ、そうだった。あと確かに失礼だな。

 でもしょうがないと思う。

 だって真っ赤な口紅付けてるし、目元も化粧をしているし、網ツインテールなのに頭頂部には髪の毛無いし。

 しかも女性ギルド職員の制服着てるし。

 ぱっつんぱっつんじゃん。


「私はここのギルドマスターよぉ。マッちゃんって呼んでぇ」

「マ、マッちゃん……」

「そうよぉ。よろしくねぇ」

「よ、よろしくお願いします……」


 握手をするが凄い力を込めてくる。

 潰れないか心配だ。


「なるほどねぇ。ボンクを一撃で倒すだけはあるわぁ」

「偶々ですよ……」

「謙虚はいいわよぉ。貴方もヒドラ討伐に参加してくれるのよねぇ?」

「あ、はい、参加します……」

「お名前はぁ? あとランクも教えてちょうだぁい?」

「スイです……。登録したばかりなのでまだFです」

「Fねぇ。じゃあ後でDランクの冒険者証を渡すわねぇ」

「あ、ありがとうございます……」

「ところでぇ」

「まだ、何か……?」

「扉が壊れちゃったのだけどぉ?」

「あ、それは、あのモヒカン馬鹿が勝手に吹っ飛びました……。ひ、一人で芸の特訓でもしていたんじゃないでしょうか……」

「「「「「「ぷっ!」」」」」」


 お、周囲の冒険者たちにウケたぞ。受付嬢も笑ってる。

 あっ! マッちゃんも微笑んでる!

 これはイケるんじゃないか?


「貴方が殴るの、ばっちり見たわよぉ? まぁアタシとデートしてくれるならそれでもいいけどぉ?」

「直します! 工具どこにありますか?!」


 この人といるとなぜか精神がすり減っていく。

 デートなんて冗談じゃない!

 僕は工具を受け取ってさっそく扉の修理に取り掛かった。



「あー、酷い目にあった」


 扉を直した僕はギルドを出て町を散策することにした。

 もちろん人の姿じゃなくて黒猫の姿でだ。

 Bランク冒険者を一撃で沈めたFランクの冒険者がいると騒ぎになってしまい、噂を聞きつけた戦闘狂の冒険者が探し回っているらしい。

 しばらくギルドには立ち寄らないことにした。


「あっ、猫ちゃんだぁー! 可愛いぃー! ママー! 猫ちゃん!」

「あら本当ね」

「お菓子あげてもいい?」

「食べないから辞めなさい」


 僕は食べれる黒猫ですよ?

 お菓子だけじゃなくて魔法もパクリですね。

 母娘は笑いながら去っていく。

 ヒドラがいるのに平和な光景だ。

 僕は民家の屋根に登って日向ぼっこを開始した。



 翌日。

 少し早いがヒドラの討伐を開始すると通達があり、僕は急いで町の外に集合する。


「おい、あいつか?」

「ああ、そうだ」

「あいつがいるからヒドラの討伐が早まったって噂があるが……」

「噂じゃなくて事実だ。あいつとアンジェリカさんのパーティーがいるならイケるってマッちゃんが判断したらしいぜ。まだランクはDだが」

「マジか。そういえばあいつに負けた冒険者ってどうしたんだ?」

「あぁ、『破鎚』のボンクだろ。昨日のうちに町を出たって話だぜ。まぁ正直いなくなってくれてよかったよ。あいつかなりの問題児だからな」


 あのモヒカン馬鹿は町を去ったのか。それはよかった。


「集まってるわねぇ? これからヒドラの討伐に行ってもらうわよぉ。リーダーはアンジェリカちゃんねぇ」

「アンジェリカだ。ヒドラは毒攻撃に優れた亜竜。さらに周囲を毒の沼にしていて近接戦闘はほぼ不可能だ。故に遠距離攻撃が主体になると思う。特に魔法が使える者は積極的に攻撃してほしい。前衛は盾を装備して後衛に毒攻撃が当たらないようにしろ。私からは以上だ」

「それじゃあ行ってらっしゃ〜い! 期待してるわよぉ〜! ちゅっ!」

「「「「「「おえぇ〜!」」」」」」


 おい、何人かが既に毒状態だぞ。どうしてくれるんだオカマギルマス!

 僕は冒険者たちと一緒にヒドラのいる森へ入っていった。



「ねぇ、スイ君……だっけ?」

「はい。そうですけど……」


 森に入るとアンジェリカさんのパーティーメンバーが話しかけてきた。

 身軽な格好の斥候女性だ。


「あたしはクナハ。よろしくね」

「よろしくお願いします」

「君って不思議だよねぇ。弱そうに見えるのに強かったり、ハンマーも片手で受け止めちゃうし。雰囲気もただの人間じゃないみたい。獣人や魔族の血も入ってたりするの?」

「いえ、特には。力の使い方は師匠に教えてもらったことを実践してるだけですよ」

「そうなんだ。ジルバと同じかと思った。ていうかスイ君の師匠ってスパルタな感じ?」

「そうですね。ひたすら実戦の毎日でした。しかも向こうが納得するまで終わらせてくれないんです」

「うわぁぁ、あたし無理なやつだ」

「人によって態度は軟化すると思いますが……所でジルバさんというのは?」

「あぁ、うちの斧使い。母親が鬼人で父親が小人のミックスなんだよ。見た目は普通の人間だけど、力持ちで素早いの。だからあんなに大きな斧でも戦闘スタイルは高速機動が売りなんだよねぇ」

「反則じゃないですか」


 武神様たちが気に入りそうだ。

 ジルバさんは口調が荒い人だな。見た目も悪そうだ。ピアスも大きくワイルド。


「なんだクナハ。お前だけ親しくなってるのか? 坊主、俺とも話そうぜ」


 今度は大盾持ちの渋いおっさんが話しかけてきた。


「この人はねぇ、グリッドだよ。私たちの盾なの」

「なるほど。ピンチの時はこの人だけを置いて先に逃げるんですね」

「あははっ、それ良いかも! 今度やってみる?」

「おいおい、そこは見捨てないでくれよ」

「そういえば魔法使いはいないんですか?」

「純粋な魔法使いはいないな。アンジェリカが光魔法を使えるが、基本うちは物理攻撃を売りにしてるパーティーだからな」

「でも欲しいよねぇ、魔法使い」

「はんっ! 要らねぇよ! あんな運動音痴ども! こっちの利点が活かせなくなる」


 僕らの会話を聞いていたらしい。ジルバさんが乱入してきた。


「アンジェリカみたいに運動神経が良い魔法剣士ならいいんじゃないか?」

「そんな都合のいいヤツいるわけねぇだろ」


 ここにいますよ?

 とは言えないな。今の所パーティーに入るつもりもないし。


「お、止まって」


 クナハさんが周囲の冒険者を止める。

 そろそろヒドラに近くなってきたからな。


「あれがヒドラか……ん?」

「嘘〜……」

「ちっ、進化してやがる」


 視界に捉えたヒドラが薄い光を放ち、形を変えていく。

 首が四つになっていた。

 四つ首になったヒドラは毒を吐いてさらに縄張りを広げている。


「どうする? アンジェリカの光魔法撃っちゃう?」

「体力を削り切れないだろう」

「じゃあ地道に攻撃していくしかないか」

「いや、同期魔術を使う。それまで時間稼ぎを頼む」

「「「了解!」」」


 アンジェリカさんたちの指示で冒険者たちがヒドラを取り囲むように広がる。

 ヒドラもこちらの動きを察知したらしい。

 毒のブレスを冒険者たちに向けて放ってきた。

 後衛の魔法使いを庇って盾持ちがガードする。

 僕の持つ技能『強溶解液』や『強腐食液』のような溶解効果はないらしい。

 対してこちらの攻撃手段は弓矢と牽制の魔法だ。同期魔術に参加していない魔法使いたちがヒドラに向けて魔法を放っている。

 アンジェリカさんと数人の魔法使いたちが大規模魔法を完成させるまで、なんとかヒドラをあの場に釘付けにしなければならない。


 牽制の矢と魔法が放たれる。ヒドラが毒を吐く。前衛がガードする。また矢と魔法が放たれる。

 その繰り返しだ。


「キュラァアアアアアアアアアアッ!!」


 ヒドラが怒り、上空に向かってブレスを吐く。

 大きな水玉の毒液が冒険者たちに降り注いだ。


「くっ……不味い……」

「アンジェリカ!」


 同期魔術を使用している状態では身動きができないようだ。

 僕はアンジェリカさんたちの上空に跳躍し、真捕食を使用する。


「ごちそうさま」

「なにっ!?」

「毒が消えた!?」


 驚く冒険者たち。アンジェリカさんは驚きながらも同期魔術に集中していた。


「任せてもいいか?」

「もちろん」


 同期魔術の気配は大きくなっている。ヒドラもあれはヤバいと感じ取っているだろう。

 こちらに攻撃をすることが多くなってきた。

 毒のブレスを何回も吐いてくる。

 まぁ……


「効かないけどね」


 真捕食!

 はい、ごちそうさま。

 そしてそろそろいいかな?

 僕は横に跳び退いて道をつくる。


「完璧だ。同期魔術、発動! 塵となれヒドラ!」


 最初の森で僕を殺したことのある光魔法とは比べ物にならないくらい強烈な魔法が放たれた。


「キュラァアアアアアアアアッ!!」


 ヒドラも毒のブレスで対抗するが徐々に押し返されていく。

 そして大きな光の奔流がヒドラを飲み込み、そこには毒の沼だけが残った。


「ふぅ……我々の勝利だ」


 アンジェリカさんの勝利宣言に冒険者たちが喜ぶ。

 毒を食らって倒れた者もいるが、解毒剤で一命は取り留めたらしい。

 負傷者は多数だが死人はゼロだ。

 中々に良い結果ではないだろうか。


 その後、帰還班と毒の採集班に分かれ、僕は毒の採集を買って出た。

 報酬も貰い、町からは早々に立ち去って王都に帰ったのだった。



お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白いと思ってくれた方は、ブックマーク、評価等よろしくお願いします

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