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パーティー


「冒険者スイ。此度のオーク討伐に多大なる貢献を示したことを称し、ここにミルガーザ王国鋼鉄騎士の勲章を授与する」


 オーク討伐から数日が経過し、僕は王宮で授与式に参加していた。

 国王様……レオーラのお父さんは、見た目好々爺という人だが、纏う雰囲気は王様そのものである。

 鋼鉄騎士の勲章は名誉男爵くらいの効果があるらしい。さらに武器屋で見せれば多少の割引もしてくれるそうだ。

 正直使い所など無い気がするが貰える物は貰っておこう。

 役人が近づいてきて冒険者ギルドから借りたスーツに勲章を付ける。

 僕は一礼してエリスと入れ替わり、席に座って授与式が終わるのを待った。



 授与式が終わればパーティーだ。

 今回のパーティーは冒険者たちを労う意味が込められているらしく、王宮だというのに野生的な料理が並んでいた。


「うめぇ! うめぇ!」


 狼人族のAランク冒険者『烈拳』のアレスレアが骨の付いた肉を丸齧りしている。

 メイドたちがその姿を見て何か囁いていたが、悪口ではないっぽい。

 肉が載った皿を持った笑顔のメイドが近づいていき、おすすめしている。


「も、もう無理……」

「なんだいだらしないねぇ! それでも騎士なのかい?」


 あっちではバネッサ姐さんが騎士たち相手に飲み比べをしていた。

 バネッサ姐さんは実を言うと冒険者ではないらしい。傭兵団に所属しており、合流に向けて旅をしているとの事だった。

 ちなみに巷では『剛剣』という二つ名が付けられた。



『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪』

「いい……」


 そして王宮の楽団に見惚れているのは狙撃が得意なエルフの女性ルルナミーナだ。ルナと呼んでくれと言われたので、ルナさんと呼ばせてもらおう。

 二つ名は『風弓』。Cランクの冒険者だが、それはランク上げに興味がなくて依頼を積極的に受けていないらしい。

 でも強い。そしてエルフなので容姿が良い。

 つまりモテる。


「ルルナミーナ様、私はダーサイ伯爵の三男で……」

「私はモッテナイ男爵の五男で……」

「オレ様はお前と同じCランクの冒険者だ! 今回のオーク討伐でもこう敵をバッ! とだな!」

「〜〜〜〜♪」


 うん、どうやら聞こえていないようだ。

 男運は無さそうなのでその方がいいだろう。

 というか貴族の青年たちはどうやって入ったんだ?

 コネか裏金かな?

 あっ、彼らも冒険者なのか。嫡男じゃないから冒険者になれるんだ。

 でもそれで実家の威光を借りるのはどうなのか?

 まあ相手にしないのがいいな。



「ねぇ、貴方」


 ワインを飲んでいる僕に話しかけてきたのは白竜の少女エリスだ。

 冒険者ギルド貸し出しの赤いドレスだが不思議なほど似合っている。


「なに? というか久しぶり」

「えぇ、久しぶりね。貴方、この三日間どこ行ってたの?」

「ちょっと用事があって街を離れてたんだよ」


 実は天界で神様たちとパーティーをしていたのだ。

 僕が見れなかったバネッサ姐さんやアレスレア達の戦闘を酒の肴に盛り上がっていた。

 ちなみに僕の戦闘に付いては称賛半分、批判半分だ。

 ただ両者共に言った言葉が……


「「「「ロッキーが気に入るわけだ」」」」


 だった。

 どうやら戦闘スタイルが似ているらしい。

 変身したり、多彩な技で翻弄したり、無駄な事を好き好んでやる所がそっくりだと言われた。

 酷い。

 そこに追い討ちをかけるように自称親友のロッキーからおめでとうメールが来て、さらに酔いが悪くなった。

 少し話が逸れた。


「ちょっといい? 二人だけで話しましょう?」

「……わかった」


 ここで何だかんだ理由をつけて先延ばしにしてもしつこく絡んできそうなので応じることにした。

 エリスと二人でベランダに出て夜風に当たる。


「そういえば仲間は? 放っておいていいの?」

「えぇ、大丈夫よ。今頃美味しいご飯を嬉しく食べてるんじゃないかしら」

「そっか」

「それで、洞窟の時のことなんだけど、貴方はドラゴンじゃないのよね?」

「そうだね。まあこっちだけ正体を知ってるのも不公平だし言うけど、僕はスライムなんだよ」

「は? スライム?」

「うん、スライム」

「それってぽよぽよしてて振り回すと伸びたり、壁に向かって投げるとベチャッて潰れる最弱の魔物?」

「君がスライムをどんな風に扱っていたのかよくわかるけど、そのスライムだよ」

「じゃああの竜の姿は?」

「あれは擬態だよ。僕は見たものなら何にでも擬態ができる。そこから更に技能を使って変形もできるんだ」

「へぇ〜、器用なのね」

「そのせいで不名誉な友達ができたけどね」


 友達と言っていいかもわからないが。


「………………」

「………………」


 しばらく変な沈黙が続いた。

 するとエリスが……


「ねぇ、私たちのパーティーに入らない?」


 僕は少しの間をあけた。

 答えはもちろん……


「入らない」

「なんでよ!」


 バンッ! と手すりを叩くエリス。壊すなよ?


「こう見えて色々と忙しいんだ。パーティー行動をすると支障が出る」

「えぇぇぇ!」


 こいつ、断られると思ってなかったのか?

 竜のくせにリアクションは人間みたいなやつだ。


「ちょっと何笑ってるのよ! もう! 私がいるのに信じられないわ!」

「お前はどんだけ自分に自信があるんだよ。でも、そうだな……エリスだけ連れて行くのはありだぞ。何かあれば頼らせてもらおうと思う」

「むぅ……じゃあその時は一緒に狩りでもしましょう」

「いいね。舌が唸るほどの相手を狩らせてあげるよ」


 ドラゴンなら負ける事もないだろう。つまり、依頼の成功率百パーセントということだ。クックックッ……。


「気味の悪い笑顔ね。でも約束よ!」

「うん」


 そんな風にエリスと会話を一区切り終えると、夜の庭に人影が見えた。

 魔道具の灯りで照らされたその人はこの国の王女レオーラだ。


「あら? レオーラ王女ね。何してるのかしら?」

「さあ? 花でも見に行ったんじゃないのか?」


 王宮の庭には見応えのある花々が沢山ある。きっと庭師が丹精込めて育てているのだろう。

 心の腐っていない人間であれば誰だって見惚れるはずだ。


「話しかけてるようにも思えるけど……お姫様ってストレスが溜まるのかしら? 可哀想」


 確かにエリスの言う通り話しかけているようにも感じる。

 花に話しかけるか……もしかして僕に会いたがっている?

 わからん。

 でも今回の件でお礼も言っていないし、後で会いに行こうかな?

 そう思った所で会場の方から大きな音楽が聴こえてきた。

 どうやらダンスの時間らしい。

 と言っても踊っているのは少数だ。アレスレアなんかメイドに教えて貰いながら踊っている。

 意外にもバネッサ姐さんは上手いらしい。若手冒険者に指導もしていた。

 傭兵団と言っていたし、こういう集まりに参加することが多いのかもしれない。

 ルナさんはダンスよりも音楽に心を奪われているようだ。彼女に群がる男たちが一人ダンスをしているみたいでウケた。

 エリスの仲間のピッケ君とミィちゃんも踊っている。姉妹はまだ食べ物に夢中のようだ。


「ねぇ、私たちも行きましょうよ!」

「お前踊れるのか?」

「私を誰だと思ってるのよ! 会場にいる皆を驚かせてやるわ!」


 それはそれで目立つんじゃないか?

 僕は急かすエリスの手を取り、冒険者たちのダンスに混ざった。

 そしてエリスの踊りは上手かった。ガサツな性格なのに上手かった。

 おかげで変に注目を集めてしまったが、貴重な経験ができたとプラスに捉えておこう。

 こうして冒険者たちの慰労パーティーが幕を閉じた。



お読みいただきありがとうございます


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