VSボス
「次は私がやるからね!」
洞窟の奥に進みながら強く言ってくるエリス。
「はいはい。わかりましたよ」
「あなた、もう少し愛想良くした方がいいわよ。前も思ったけど可愛くないわ」
「男に可愛さを求めるなよ」
まぁお望みなら身体を改造して可愛い子になることもできるが、それは僕の精神が削られるので無しにしたい。
そうこう言っている間に次の相手が現れたようだ。
異様に貫禄があるオークだった。
「なあ、あれってどう見ても群れのボスじゃ……」
「手は出さないでよ! 私が一人でやるから! 貴方はそこで見てなさい!」
「……はーい」
ダメだ。絶対介入とかさせてもらえない。
どうしよう。とりあえずタケミカヅーチ様には活躍できないとメールを打っておこう。
あ、向こうからも連絡がきてる。
『地面を掘って地下に行け!』
地下?
よくわからないがエリスが戦闘に夢中になっている間に、地面に真捕食で穴を開けて地下に行く。
「わぁお!」
卵がいっぱいだ。
しかも中身は全部オークである。
オークは胎児のように丸くなっている。
どういうことだ?
お、またメールだ。
『その洞窟にはオークマザーがいる。直接的な戦闘力は白竜の少女が戦っているオークキングの方が上だが、オークキングよりも厄介な存在だ。だが貴様なら勝てるだろう。寧ろ貴様でないと対応できない相手だ。では健闘を祈る!』
僕じゃないと対応できない?
どういうことだろう?
分からないことだらけだ。
そんな風に首を傾げているとオーク達が卵から孵り始めた。
卵の殻は脆いらしい。
鳥の雛みたいに可愛くないのが減点だ。
感動とか全くない。
「やれやれ」
僕はオークを一体、掌底打ちで吹き飛ばし、消滅させる。
産まれたばかりのオークでも僕を敵と認識する知能はあるらしい。
すぐに僕を取り囲んできた。
ここは武の神様直伝の体捌きでお相手して差し上げようじゃないか。
「すぅー……ふぅー……」
僕の深呼吸を合図に、オーク達が一斉に襲いかかってきた。
技能の改造で腕を剣に変形させ、踊るように切っていく。
避ける攻撃は避け、受ける攻撃はいなし、流れるようにカウンターを繰り出す。
最後の仕上げは上に飛び上がり、強溶解液と強腐食液を混ぜた混合液を雨のように降らせた。
範囲内のオークを全て消滅させる。
残ったのは綺麗な光の粒子とその中心に佇む僕だけだ。
「さてと……マザーを倒しに行きますか」
ただならぬ気配を辿って僕は奥へと進んだ。
またもや卵が沢山あった。
空間全てを埋め尽くすほどの沢山の卵だ。
僕が入ると同時に孵化し、こちらに向かってくる。
数は先程とは比べものにならない。
そしてオークマザーは……
「上か。天井と一体化してるのかな?」
あれホラーだろ。天井から豚の顔が生えてるよ。
「ブヒャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
殺せ! かな?
マザーの一吠えで子供のオーク達が動き出した。
この数は一人じゃ無理だな。
まあそれも……
「僕が普通の人間だったらの話だけどね! 真分裂!」
数には数。
ステータスオール1の分裂体をオーク達にぶつける。
その瞬間、オーク達は爆死し、光の粒子になって消える。
分裂体の内部は強溶解液と強腐食液、火薬と火魔法、雷魔法などで満たされている。
尚、溶けて死ぬか焼死するか感電死するかは運によります。回避はできません。
そして数分後、空間には僕とマザーのみが残った。
「ブヒャアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
グサッ!
「え?」
マザーが吠えたと思ったら地面から槍が生えた。ノータイムでだ。
あ、ヤバい!
「真分裂! ふぅ……間に合った。うわっ! ちょ、待って!」
くっそ! この空間全てがマザーの支配下なのか!
とにかく地面はヤバい。
僕はカラスになって空中に逃げる。
今度は壁から土の塊が発射された。
「うおっ! くっ……真捕食! 真捕食! 真捕食ぅううう! ふっ、僕に飛び道具は効かないよ」
「ブヒャアアアアアアアアアアアアアッ!!」
残念ながらマザーにはこのネタは通じないようだ。
そっちの攻撃は封殺した。次はこっちの番だ。
擬態、ワイバーン! を改造して……
「真擬態、ソードドラゴン!」
角、翼、尻尾に至るまで剣を再現した黒い竜だ。
さらに雷魔法発動!
黒の世界も使って黒雷を身体に纏い、オークマザーに突撃する。
「一撃必殺……剣竜黒雷撃!」
ドゴォォォォンッ!!
ドゴォォォォンッ!!
マザーは声も出ずに消滅した。
がしかし、何か衝撃が二つあったような?
「きゃああああ! な、なにっ!? え? 黒い竜?」
あ、しまった……。
どうやら天井を貫通して上で戦っていたエリスを地下に落としてしまったらしい。
でもあの時、衝撃が二つあったよな?
ということはコイツも大技を使ったな?
そりゃ地面? 天井? も耐えられないはずだ。
そんなことよりもだ。
こうなってしまったら仕方がない。
僕は人姿に戻る。
「僕だ、エリス」
「えっ!? 貴方もドラゴンだったの!?」
「違う。まあ説明は後だ。とりあえず脱出するぞ」
僕は右腕を伸ばしてエリスを巻き抱え、左腕を上の入り口に向けて伸ばす。
ゴム人間ってこんな感じなのかな?
「よっと。はい、到着」
「あ、ありがと……」
上の入り口に着地すると、いくつかの足音が近づいてきていた。
「いた! おい! 無事か!」
「崩れる……。早く脱出する……」
「アンタら! ぼさっとしてんじゃないよ! 走りな!」
どうやら皆、敵を倒して助太刀に来たらしい。
アレスレアが一番ダメージを負っている。激闘だったんだなぁ。
僕たちは急いで洞窟を出る。外はまだオーク達が残っていた。
「ちっ、まだ倒しきれてないのかい」
「最後の踏ん張りどころだな」
「面倒……」
「うぅ……飛べば帰れるのに」
外にいるオーク達を見てテンションが下がる面々。
しかし僕は安心していた。
視界の端に白い雷光が見えるからだ。
その雷光は僕たちの所に向かってきている。
そして……
「頃合いを見て救援に来たのだが少々遅かっただろうか?」
「アンタは?」
「失礼した。私はこの国の第一王女レオーラ・ミルガーザだ」
「お、王女様!?」
「頭下げる……」
「えっ? な、なに?」
バネッサ姐さんとアレスレア、エルフさんが跪いて頭を下げた。
世間の事に疎い僕とエリスはそれを棒立ちで見ている。
こんな戦場の真ん中でやらなくてもいいと思うけど?
「うむ、様子を見るに元凶は倒したようだな。では帰ろう。貴殿たちは後を付いてくるだけでいい。道は私が切り開く」
そう言うとレオーラ王女は雷魔法で塞がりかけた退路を開いた。
神器の力は少しでも多くの人を助ける為に。
この人に神器が巡って本当によかった。
「ありがとう、レオーラ王女」
「当然のことをしたまでだ」
知ってる。
思わずそう言いそうになってしまうのを堪え、僕は微笑んだ。
こうして、僕ら突入部隊は無事に街に帰還し、後日王様から勲章と褒美を貰った。
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