VS群れ
オーク討伐は三日後。
それまでは王都の街中を散策するつもりだ。
結構広いので観光地も沢山あると思う。
僕は屋台で肉の串焼きを食べ歩きながら、王都を歩き回った。
武器屋、魔道具屋、喫茶店、図書館、博物館。
「中々良い街だなぁ〜」
前回は王宮しか出入りしなかったからこういうのは楽しい。
宿も取り、夜は居酒屋に行って美味しい食事とお酒を堪能した。
神様たちの為にお土産も幾つか買った。
そんな生活を二日も送っていたらお金が無くなってしまった。
明日のオーク討伐では活躍させてもらおう。
最前線に送られるといいなぁ。
そしてオーク討伐決行の日。
王都の正門前に集合した僕は……
「お前は遊撃部隊に決定した。当分は後方で支援に回ってもらう」
あれぇ? 最前線は?
僕は後方で待機を命じられた。
オークの軍勢は確認できるだけで五万。拠点にしている洞窟には二万ほどがいるだろうと予想されており、総数は予想で七万だ。
対してこちらは王都の軍隊が五千。冒険者が約八百。
十倍以上の差がある。
「あの茶色っぽいのがオーク達か。地面じゃないんだ」
許可をもらって物見塔からオークがいる方を見ると、茶色の物体で埋め尽くされている一帯を見つけた。
そこに先行部隊の突撃隊が近づいているのが見える。
「後方に罠があるな。誘い出して分断するつもりなのか?」
オークの一部が冒険者たちによる奇襲を受け、追いかけて行く。
罠にハマって数十匹が光の粒子になって消滅した。
「これを繰り返すのか。時間がかかりそうだ」
そういえば最悪の場合は籠城戦をすると言っていた。
そうならないようには祈っているが、あの数ではなぁ。
まぁタケミカヅーチ様も言っていたが最終的に負けはしないだろう。
王都にはレオーラ様がいるし。
「わぁ、凄いわね! あれがオーク? あんないっぱいいるのね!」
「いっぱいいっぱい〜!」
「あ、あれと戦うんですか……」
「ふぇぇ〜、後方支援でよかったね〜」
「仕方がないよ。僕らは実力が足りなかったわけだし。でもエリスは遊撃部隊には参加するんだよね?」
「そう言われたわね! まぁそれまでは待機で暇だけど」
なっ!? こいつらは!?
遅れて物見塔にやって来たのは三人組の冒険者。
真面目青年の盾持ち剣士ピッケ。
水魔法使いの少女ミィ。
僕を殺した事のある白竜の少女エリス。
そしてアマテラース様お気に入りの姉妹だった。
こいつら何でいるんだ?
いや、三ヶ月もあれば王都に移動できるか。
「あっ、すみません。騒がしくしてしまって。ご迷惑ですよね?」
ピッケ君が僕に気づいて話しかけてきた。
「はい。迷惑なので僕が降ります。さようなら」
触らぬ神ならぬ、触らぬ竜に祟りなしだ。
「え、あの……」
「ほっときなさいよ。向こうが降りるって言ったんでしょ」
「せっかくピッケ君が話しかけたのに不親切な人です!」
「変わった人ですね」
「ぷんぷん〜!」
怒ってないよ。
何となく騒動に巻き込まれそうだから遠ざかるだけ。
しかしどうしよう。
戦いを見物しようと思ったのに、暇な時間ができてしまった。
ワイワイ、ガヤガヤ!
ん? なんだか騒がしいな。
「お前ら早くしろ! 今はオークの対応で兵士たちも居ないんだ! ありったけの金を奪ええええ!」
「「「「「ひゃっはぁーーっ!!」」」」」
げっ! 銀行強盗だ!
あいつら、警備が手薄なのを良い事にここぞとばかりに取るつもりだな。
う〜ん、仕方ない。見てしまったし、僕が行こう。
「民間人に危害を加えて金を奪う。許せねぇな」
と、銀行強盗の真っ最中に堂々と出入りする男がいた。
そいつは人間の姿なのに頭に犬の耳と臀部からふさふさの尻尾が生えている。
いわゆる獣人族だろう。
「あぁん? んだてめぇ!」
「オレの名はアレスレア。誇り高き狼人族の戦士だ」
「ふんっ! 獣臭ぇ獣人が何の用だ! こっちは仕事で忙しいんだよ! お前らやっちまえ! 所詮は冒険者だぁ!」
「オレを……ただの冒険者だと思うな。ふんっ!」
「ぐぽあっ!」
「がぱあっ!」
「ごぺえっ!」
一瞬にして強盗が三人もやられた。
「なっ、なんだてめぇ!」
「オレのランクはAだ。この国の近衛騎士よりも強いぞ」
「げえっ!」
「ならこれでどうだ! 少しでも動いたらこいつを殺す!」
「な、ナイスだ!」
「た、助けて……」
残りの強盗二名に女性店員が人質に取られてしまった。
これでは逃げられてしまう。
よし! 僕が助けてあげよう!
さっそく背後から忍び寄って……ピュン! ピュン!
ん? 僕の耳元で何かが二つ通り過ぎた。
それは矢だった。
矢は強盗犯の二人に命中し、人質も解放される。
「くっ、しまっ……がはっ!」
「ごはっ!」
そこに間髪入れずにアレスレアが懐に飛び込み、強盗犯を気絶させた。
そして遅れて兵士が来る。
「すみません、遅くなりました!」
「強盗犯と怪我人は!?」
「軽傷者が少々出たようだ。強盗犯はオレが倒した」
「おぉ……あ、ありがとうございます!」
「いや、今回の件にはこちらも無視はできない。オレは待機を命じられた身だ。出陣の指令が出るまでは街の警備に尽力しよう。こいつらはオレが牢屋まで連れて行く」
アレスレアはそう言って五人の強盗犯を抱え、兵士の一人に案内されて牢屋に向かった。
僕の出番なかったなぁ。でもこれは仕方ないよね?
というかさぁ……
「アレスレアも相当だけど、ヤバい奴らがいるね」
僕は矢が飛んできた方を見る。
どんな奴かはわからないが、狙撃の腕は相当のものらしい。
きっとそいつも遠巻きに街の警備に尽力しているのだろう。
僕も僕なりにできることをやるか。
そんな感じに街の警備や雑用などで数日間を過ごし、そして……
『後方の遊撃部隊に選任された者は、直ちに正門前に集合せよ。繰り返す。後方の遊撃部隊に選任された者は、直ちに正門前に集合せよ』
街の放送で呼び出され、そこに強者が集った。
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