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 タケミカヅーチ様の指導が始まり、三ヶ月が経とうとしていた。

 僕は人間形態での近接戦闘をすっかりマスターしつつある。


「よし! 大分いいだろう! 私の感覚ではまだ50%くらいだが、下界では充分なはずだ!」


 ふんぞり返ってそういうタケミカヅーチ様。

 そりゃ、神様の領域に半分近づいた人は下界でも中々いないでしょうよ。


「じゃあ修行は終わりですか?」

「うむ。そして貴様は下界に降りてすぐに王都に向かうのだ! そして冒険者登録をするように!」

「王都? なんで? というか冒険者?」

「うむ。この三ヶ月で王都の近郊にオークの軍勢が出没したらしい」

「はい? 軍勢? あっ、もしかして……」


 僕はじぃーとタケミカヅーチ様を見た。


「いや、違うぞ! 貴様の修行の成果を見たくて用意したわけではない! そんなことをすればさすがの私もアマテラースに怒られる! 世界のシステムによって自然に生み出されたオーク達だ!」

「それならいいですけど」

「うむ。まあ人間たちだけでも負けはしないが、是非とも修行の成果を見せてほしいものだ。それからこれをやる」

「お守りですか?」

「食え。それは技能の鑑定眼を欺くアイテムだ。冒険者カードの作成には神器を使っていて、鑑定眼の技能も備わっている。それを食べれば種族がバレることも技能もバレる事もない」

「ほうほう。では、いただきま〜す。ふむふむ……綿のサラサラした感触は弾力のないグミみたいな感じがしますな。中に入っている札の硬い感触はジャーキーに似ています。味は無味でとても美味しいとは言えませんので、評価は星一つですかね」

「要らん情報を寄越すな」


 ステータス!


『名前:

 種族:ガラクタ・アンデッド・デミドラゴン・キラー・ネオファイタースライム

 技能:真捕食、真分裂、真擬態、強溶解液、強腐食液、サイズ変化、胃袋、改造、火魔法、弱点看破、探知無効、黒の世界、雷魔法、真武術new、虚偽記載new

 レベル:20

 体力:1144

 魔力:1748

 物理攻撃力:871

 物理防御力:831

 魔法攻撃力:783

 魔法防御力:925

 素早さ:833

 耐性:打撃、毒、全属性

 弱点:斬撃、刺撃

 擬態:土、石、葉、カラス、ダンゴムシ、ムカデ、ミミズ、花、ミツバチ、グール、黒猫、人間、鉄の剣、銅の短剣、弓、矢、麻痺毒、斧、槍、黒いローブ、銅貨、銀貨、金貨、酒、瓶、ライター、タバコ、火薬、麻薬、小麦粉、パン、リンゴ、モモ、古びた壺、魔法ランプ、ネックレス、ペンダント、指輪、鍵、手錠、鎖、腕時計、鏡、綿、白い布、木材、ペン、インク、紙、ワイバーン

 連絡先:アマテラース、ゼウッス、ヘパイストース、タケミカヅーチ、ミミューズ、オロチ、ヘルメッス、ヘッラ、ロッキー』


 ステータスを見るとレベルが20になり、物理攻撃力と素早さが爆上がりしていた。

 魔法攻撃力が一番低くなってしまうとは予想外である。

 真武術は体術はもちろん、どんな武器も扱えるようになる技能だ。

 魔法も使えるし魔法剣士でも目指してみよう。

 虚偽記載は今手に入れた鑑定を妨害する技能だろう。


「問題ないようなので、もう行きます。お世話になりました」

「うむ。皆で見ているからな! サボるなよ!」


 このサボるなというのは、誰かに手柄を渡すなということだ。

 つまりオーク達のボスを僕が倒せということだろう。


「それは流れ次第です」


 そもそも情報が少なすぎてどうすればいいかわからない。

 決めるのは下界(した)に行ってからだな。

 僕はカラスの姿になって雲海に飛び込み、王都を目指した。




「はい、次の方」


 王都を正面から入る為に、長蛇の列に並んだ。

 正門には兵士が見張りをしていて、僕の番が来ると軽い質問をかけてくる。


「王都には何をしに?」

「オーク討伐の加勢に来ました。報酬も出ると聞いたので」


 オークが軍勢を作っている件はかなり広がっている。

 僕のような一人旅の青年が知っていてもおかしくないはずだ。


「じゃあ冒険者カードを見せてもらえるかな?」

「これから登録しに行きます」

「え? 初心者冒険者なの? あ〜、討伐に参加できるかなぁ?」

「武道の心得があります。魔法も使えますよ」

「ああ、じゃあ試験を受ける事になると思うから頑張ってね」

「ありがとうございます」


 少しでも戦力が欲しいのだろう。

 歓迎されて王都に入ることができた。

 そのまま冒険者ギルドに行き、中に入る。

 ギルド内はとてもピリピリしていた。

 僕は受付に向かい、登録をしてもらう。


「すみません、オーク討伐の為に冒険者登録をしたいのですが……」

「はい、登録ですね。お名前は?」


 名前……あっ、決めてなかったな。

 前世の名前を使ってもいいけど、スライムから取ってスイにしよう。


「スイです」

「スイさんですね。ではこちらの魔道具に手を当ててください」

「は〜い」


 水晶のような魔道具に手を当てる。

 するとカードが空中に形成された。

 受付嬢がそれを取り、内容を確認する。


「はい、大丈夫です。こちらがスイさんの冒険者カードとなります。失くした場合は一万円かかりますので気をつけてくださいね」

「はい。ありがとうございます」


 受け取ったカードを見るとステータス画面の劣化版のような内容が記載されていた。種族の所はちゃんと人族になっているようだ。


「それから登録したばかりなので、オーク討伐に参加されるのでしたら特別試験を受けていただかなければいけないのですが……」

「わかりました。受けます」

「では担当者を呼んできますのでお待ちください」


 お待ちください、ね。

 受付嬢がいなくなった途端、僕を値踏みするような視線が強くなった気がする。

 そして、来た来た、人相の悪い冒険者が。


「おい、坊主。今は戦争中だ。遊びで来たんなら帰ってママのおっぱいでも吸ってな」

「オーク討伐に参加しに来たんです」

「はっ! テメェみてぇな貧相なガキが参加だって!? 冒険者舐めんなよ!」


 拳を振るってきた。マジか。初対面の人間に暴力振るおうと思うかね、普通。


「特に舐めていませんが?」


 僕は半身を捻って躱し、腕を捕まえる。

 割と強い力で掴んでいるので相手も驚いたはずだ。

 が、それは僕も同じで……


「合格だ。お前ほどの実力者が加わってくれるのなら、こちらとしても有難い。是非オーク討伐に参加してほしい。配置は最前線で構わないか?」

「それは望む所です。しかし、試験の担当者だったんですか?」

「そうだ」

「随分と似合っていましたが、あちらが素ですか?」


 ぷっ……!

 と何処からか笑い声が漏れ出した。


「こっちが素だ。笑った奴は後で覚えておけよ。ところでお前、名前は?」

「スイです」

「スイか。武術の心得があるようだが、他には何ができる」

「魔法が使えます。火と雷とアイテムボックスです」

「なるほど。遊撃や援護、後方の防衛に回してもいいな。オーク討伐は三日後だ。朝十時に正門前に集合することになっている」

「わかった」


 じゃあ三日後までは暇だなぁ。

 三ヶ月何も食べていなかったし、買い食いに精を出すとしよう。

 僕は冒険者ギルドを出て王都の街中へと歩き出した。



お読みいただきありがとうございます


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