評価
「スライムよ! 先ずは貴様の評価を告げる!」
黒猫の姿でお座りをする僕。
目の前で腕を組んでふんぞり返っているのが、僕に弟子が欲しいと依頼をしてきた神様タケミカヅーチ様だ。
「先ず貴様は戦闘が苦手だな!」
そりゃあ平和な日本にいた普通の青年でしたからね。
「だが一方で搦手は称賛に値する! 特に負け方に関しては我々神々たちも感心するほどだ! ロッキーに気に入られるのも頷ける!」
ずこっ!
そこであいつが出てくるのか。
「ちなみに、私が好きなシーンはバジム盗賊団の自爆シーンだ! 中々熱い演技だっぞ!」
「それはありがとうございます」
「その後の悪徳貴族の屋敷で花火自爆もよかった!」
「ありがとうございます」
「その後の王女との共闘も中々だった!」
「ありがとうございます……タケミカヅーチ様、めっちゃ僕のファンですね。サインでもしましょうか?」
「ではこの手のひらに頼む!」
「はいはい……スライムっと。ではまたお会いしましょう」
「うむ。って、違ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーうっ!!!!」
バンッ!
何処からともなく現れたホワイトボードを強く叩くタケミカヅーチ様。
そこには文字と数字がびっしりと書き込まれていた。
「これが見えるか!」
「それは?」
「貴様の今までの戦闘記録だ! その結果、驚くべきことが判明した!」
「それは?」
「貴様の直接戦闘での勝率はたったの五%だということだ! これは問題だ!」
「はあ? それのどこに問題が?」
「大有りだ馬鹿者おおおおおおお!」
吠える、タケミカヅーチ様。
「基本、戦闘というものは相手を見なければいけない。不意をつく、搦手を使う。それも戦闘にとっては必要だと認めよう! だがしかし! それだけでは勝てない……勝負すらできないのが現実だ!」
タケミカヅーチ様がそう言うと、ホワイトボードが変わる。
スラム街で姉妹が拉致されそうになっているシーンだ。
「このシーンを覚えているか?」
「はい」
「貴様は何もできなかったな」
「まあ、そうですね」
「あの時はドラゴンの嬢ちゃんが来てくれたからよかったものの、誰も来なかった場合、貴様は苦戦を強いることになっていただろう」
「そうでしょうか?」
「そうだ!」
麻痺毒もあるし、上手く対処できそうな気もするけどな。
というか、エリスがドラゴンって確定しちゃったよ。暫定だったのに。
「他にもこのシーン!」
「レオーラ王女と共闘した時ですね」
「貴様は見ているだけだったな!」
「神器持ち同士の戦闘に手出しはできませんよ。辛うじて最後に不意をついてルーク少年を倒しましたけど?」
「しかし倒したのは王女であろう?」
「それはまあ……そうですけど……」
「あそこで貴様に武道の心得があればと、私はどれほど後悔したか……」
「いやいやいやいや」
僕は猫の手を振った。
例え武道の心得があったとしても、あの戦闘の中に飛び込むのは誰だって嫌だろう。
「というわけだ! 私が満足するまで貴様には近接戦闘の修行をしてもらう!」
何がというわけなのか。
でもやらないと帰してもらえないよね?
「わかりましたよっと!」
僕は黒猫から人間の姿になる。
前世を模した姿だ。
ファイティングポーズを取って戦闘準備完了だ。
「うむ、ではかかってこい!」
「じゃあ本気でいきますよ!」
右パンチ……からの改造ソードアーム! 九十度剣撃!
うっそ! 躱された!?
タケミカヅーチ様は流れるようなフットワークで僕の懐に一発見舞う。
「ごはっ!?」
地面を転がる僕。
なんで躱されたんだ?
「視線で何を狙っているのかバレバレだ。それに攻撃も単調すぎる」
「こちとら平和主義者なんでね!」
蹴りからの足分裂……そして爆撃!
これならどうだ!
「ふんっ!」
爆発する前に足を投げやがった。
雲海でボンッ!と爆発の音がした。
「うっそ〜……」
「貴様の全てをかけてくるがいい。近接戦闘の極意を身を持って叩き込んでやろう」
僕は気合いを入れてタケミカヅーチ様に突撃した。
結局かすり傷一つ負わせることができず、その日の修行は終了した。
「ふむ。まあこんなものか」
息を切らして横たわる僕を他所に、タケミカヅーチ様はホワイトボードを用意し始める。
そのまま座学での講義が始まった。
「人間形態での近接戦闘が一番下手くそだな。まだスライム形態や黒猫形態の方がやりにくかった。パワーを増す為にワイバーンになったのはいいが、巨大な図体は的にもなるから注意が必要だ」
人間形態が一番酷いか……。喧嘩なんてまともにしたこともないからな。
スポーツとかもやっていたわけではないし。
「貴様は先ず身体の動かし方から学んだ方がいいだろう。しばらくは搦手も禁止して人間形態での戦闘を行うぞ」
「は、はい……」
こうして僕はタケミカヅーチ様の指導の下、近接戦闘の向上に励んだ。
その期間はおよそ三ヶ月にも及んだ。
そして、その間に……地上では大変な事態が起こっていたのだった。
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