拉致
『あ、もしもし、スライムです。ヘッラ様、今大丈夫ですか?』
黒猫の姿になった僕は、王都の裏路地でヘッラ様に連絡を取った。
『えぇ。戦いは終わったようね。よかったわ』
『黒幕からはなぜか気に入られてしまいましたがね。恐ろしい神様ですよ』
『そうね。彼は悪い神様かもしれないわ。でもこれだけは覚えておいて、彼は気に入らない相手には無関心だから。それに自分のおもちゃに手を出されるのが一番嫌いなの。その事でいつか貴方の助けになる時が来るかもしれないわ。だから暇なら遊んであげて』
ヘッラ様にそう言われると断りづらい。
『わかりました。向こうから接触があれば対応します』
『えぇ、ありがとう』
『それからこれ。色が変わってしまいましたがゼウッス様の指輪です』
『それはあなたが持っていてちょうだい。いいわよね、貴方? 十年も持ってなかったんだし、もう百年くらいは平気でしょう?』
『え? いや、そんなことは……』
『持ってていいみたいだから、そのままあなたが使ってちょうだい。それを食べれば雷魔法が使えるようになるから、食べちゃってもいいわ』
『え……ワシの指輪……』
『あの……ゼウッス様が何か言ってますけど?』
『指輪の作成者は私よ。私が許可を出したからいいの』
『そうですか……では遠慮なくいただきます!』
『えぇ。何かあれば私からも依頼を出すと思うけど、その時はよろしくね』
『わかりました!』
『じゃあ、またね。スライムさん』
『はい。また』
ヘッラ様との通話をきる。
僕は指輪を見ながら密かに思った。
『その指輪をあげるから私からの依頼は断らないでね?』
なんとなく、そう言われているように感じたのだ。
ま、その時はその時だな。
ゼウッス様の指輪を捕食!
ぐっ……お、おおおおおおおおおっ!!
身体の中から力が漲ってくる!
ステータス!
『名前:
種族:ガラクタ・アンデッド・デミドラゴン・キラー・ネオスライム
技能:真捕食、真分裂、真擬態、強溶解液、強腐食液、サイズ変化、胃袋、改造、火魔法、弱点看破、探知無効new、黒の世界new、雷魔法new
レベル:18
体力:740→1040
魔力:1144→1744
物理攻撃力:469→669
物理防御力:631→831
魔法攻撃力:581→781
魔法防御力:723→923
素早さ:531→731
耐性:打撃、毒、全属性
弱点:斬撃、刺撃
擬態:土、石、葉、カラス、ダンゴムシ、ムカデ、ミミズ、花、ミツバチ、グール、黒猫、人間、鉄の剣、銅の短剣、弓、矢、麻痺毒、斧、槍、黒いローブ、銅貨、銀貨、金貨、酒、瓶、ライター、タバコ、火薬、麻薬、小麦粉、パン、リンゴ、モモ、古びた壺、魔法ランプ、ネックレス、ペンダント、指輪、鍵、手錠、鎖、腕時計、鏡、綿、白い布、木材、ペン、インク、紙、ワイバーン
連絡先:アマテラース、ゼウッス、ヘパイストース、タケミカヅーチ、ミミューズ、オロチ、ヘルメッス、ヘッラ、ロッキー』
進化した!
種族が一文字だけ短くなった。
ステータスも大幅にアップ。
スライム系の技能も進化している。
真捕食は捕食スピードのアップ。それに魔法など物質がない物も捕食することができる。
真分裂は分裂の時のデメリットであるステータス等分を無くし、好きな値を割り振れるようになった。さっそくセーブポイントの分裂体たちのステータスを調整しておく。
真擬態は見ただけの物にも擬態できる。捕食する必要がなくなった。
強溶解液と強腐食液は威力がアップしただけだ。
探知無効はアマテラース様から貰った技能だな。
黒の世界はロッキーだろう。
これは色を付けることができる技能のようだ。
火魔法に使えば黒炎になるし、雷魔法に使えばルーク少年が使っていた黒雷になる。
攻撃系じゃないという所がなんともあいつらしい。
そして雷魔法。欲しい魔法の一つをやっと手に入れた!
あとで水熊にリベンジをしに行こう。
あとは耐性が全属性になったが、弱点に斬撃と刺撃が戻ってきた。
スライムって物理攻撃に弱いんだなと再認識。
さらに連絡先にヘッラ様とロッキーが追加されている。
前者はわかるが後者はブロックしよう。ブロック機能はないので心のブロックだ。
「くらえっ! 黒雷砲!」
ステータスを見終わった僕は、さっそく水熊にリベンジしに森に入った。
口から黒い雷の魔力弾を放つ。
水熊は相変わらず図体の割に素早い。
だが雷魔法が弱点のようだ。
このまま連発して体力を削り切ってやる!
「黒雷砲! 黒雷砲! 黒雷砲ぉぉぉぉっ!」
技能を連発して安全圏から一方的な攻撃をする。
水熊が光の粒子となって消えた。
やった! 勝った!
「んにゃーーーーご!」
勝利の雄叫びだ。
が、しかし……
バチバチ……バキュン!
「がっ……!?」
僕は高速で襲来した何かによって空中に打ち上げられた。
なにが起こって……げっ!?
地上を見ると美しい毛並みの銀狼がいた。
風と雷。二つの属性を使いこなして、悠然と佇んでいる。
こいつってもしかして、フェンリルとかいう……ちくしょう!
「僕だって属性二つ持ちだ!」
炎魔法と雷魔法の二つを融合させて、さらに黒の世界で色を付ける。
「黒雷砲・焔!」
炎と雷。二つの属性を持つ攻撃を放つ。
さらに……
「黒雷砲・溶!」
溶解液と腐食液が混ざったものも放つ。
そして最後に……
「黒雷砲・溶焔!」
全部をミックスさせたものをプレゼントしてやった。
今の僕が使える最強の攻撃手段だ。
着弾した地面は小さなクレーターができ、周りの草木は消失し、さらに周囲は黒い炎が地を這っている。
温度も相当熱い。
だが……
「ば、馬鹿な……!?」
フェンリルは涼しい顔でそこにいた。
そしてお返しとばかりに魔法を撃ってきた。
風と雷の複合魔法だ。
僕は雷の速度で迫るその魔法を躱わすことができず……
無数の風に斬り刻まれて、死亡した。
せ、狭い、狭い!
ポンッ!
「ふぅ〜、なんだか久しぶりな復活の仕方だった。それよりもなんだよあれ! 反則じゃないか!?」
あんなのに勝てるわけがない!
「もういいや……昼寝しよう」
僕は不貞腐れて黒猫の姿で惰眠を貪ることにした。
まあ当初の目的である水熊へのリベンジは果たしたし、よしとしよう。
というわけで、おやすみなさい〜。
「おい! 起きろ! いつまで寝ている!」
「ん?」
大きな声に起こされて目を開ける。
そこは雲海であり、僕の丸い形の大地の上にいた。
そして目の前にいるのは柔道着を来たおっさんだ。
「誰やねん?」
「我が名はタケミカヅーチである!」
タケミカヅーチ?
あれぇ〜、なんか聞いたことあるような……あっ!
「今年のお笑いグランプリで優勝したピン芸人さんですね」
「すぅー……違ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーうっ!!!!!!」
なっっっっっっっっが!
よく息が続いたな、このおっさん。
「私は武神だ! 武神タケミカヅーチとは、何を隠そう私のことだあああああ!」
うおお……かなりハイテンションなお方でいらっしゃる。
気のオーラが全開だ。
常時スーパーな戦闘民族の人なのかな、この神様。
「私は、不甲斐ない貴様を鍛える為に拉致した! これから貴様をフェンリルに勝たせる為に修行を付けてやる!」
えっ!!??
「ちょっと待ってください。今なんて言いました?」
「貴様をフェンリルに勝たせる為に修行を付けてやる!」
「いや、その前」
「不甲斐ない貴様を鍛える!」
「その後の二文字を言えよ!」
「アマテラースには許可を取っている! つまり、貴様の逃げ場はない! 心して我の修行についてくるがいい!」
え? ちょっと待ってほしい。
本当にこの神様と修行するの?
チェンジ! チェンジでお願いしま〜す!
とぅびぃ、こんてぃにゅー。
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