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VS悪戯


 黒い雷光が僕に襲いかかってきて、僕は何もすることができず直撃した。


「がはっ!」

「使徒様!?」


 黒猫姿の僕は光の粒子となって消滅した。


 あのクソガキ! 僕を躊躇なく殺しやがったなぁ!


「ルーク、貴様、何をしたかわかっているのか?」

「え? 姉上を誑かした邪神の使徒を屠っただけでしょ? 何か問題があった?」

「邪神の使徒だと?」


 ん? ルーク少年の言い方に違和感を感じた。

 僕が邪神の使徒?

 邪神かどうかは置いておいて、僕を使徒と知る者はあの人たちしかいない。

 つまり、神々の中にこの事態を仕組んだ裏切り者がいる。

 え? 僕が今どこにいるか知りたい?

 どこでしょう?

 答えは……


 レオーラ王女の肩でーす!


 実は突入前にこっそりミツバチに擬態させた分裂体を忍ばせていました。

 あとは宝物庫の財宝や通路の松明にも擬態しています。

 いやぁ、ボス戦前にセーブするのは常識だよね。

 僕の場合はセーブポイントが三箇所あるってだけなんだけどね。


「そうだよ。僕は聞いたんだ。姉上の側には黒猫に擬態した邪神の使徒がいて、そいつが姉上を誑かしている悪人だって」

「聞いたとは誰にだ? 少なくとも、私はそいつの方が信用できないんだがな」

「…………僕の友達だよ。……姉上でも……許さないよ……僕の……友達を……」


 なんだ? なんか様子が変だ。


「僕の友達を馬鹿にするナァ!」


 ルーク王子がレオーラ王女に襲いかかる。

 黒雷を纏った拳が胸鎧の部分に直撃する。


「――かはっ!?」


 ドッ! ズザッ!

 衝撃で地面を転がってしまった。

 今の一撃でレオーラ王女は瀕死の重傷だ。


「あっはははっ! 凄い、凄いヤ! あの姉上が一撃ダ! 今の僕なら何だってできル! そうダ! 僕が王様になって世界から悪いヤツらを消し去ろウ!」


 おいおいおいおい。狂気じみた事を言い出したぞ、この少年。

 ていうか人格変わりすぎだろ!? どう考えても操られてるじゃん!

 どうすれば……おっ、こんな時にゼウッス様から連絡だ。

 もう、今忙しいのに……。


『はい、もしもし』

『貴方が夫のお友達のスライムさん?』


 通話に出たのはゼウッス様じゃなくて奥さんだった。

 やべっ、ちょっと投げやりっぽく言ってしまった。


『あ、はい、そうです! え〜と……』

『私のことはヘッラとでも呼んでくださる? 夫が迷惑をかけたわね。そこの倒れてるお嬢さんにも』

『あ、いえ、全然そんなことはないですよ。それよりもその……ゼウッス様はどうなりました?』

『お仕置きしたわ。今はちゃんと反省したみたいだから、一先ずは済まそうと思って』

『そうですか』

『そもそも私が怒ってるのは指輪のことじゃないのよ。それ以外にも沢山あるの。って、今はそんなこと言ってる場合じゃないわね。貴方の胃袋(アイテムボックス)の中に指輪を送ったわ。早くそのお嬢さんに装備しなさい。左手の薬指にね。連絡は戦いが終わってから、またね』

『ありがとうございます!』


 僕は胃袋の中から指輪を取り出して急いでレオーラ王女の左手の薬指に嵌める。

 その瞬間眩い光が放たれ、レオーラ王女が完全回復した。


「ルーク」

「姉……上……」


 神器を装備して覚醒したレオーラ王女の気配に狼狽えるルーク少年。

 次に僕が見たものは、レオーラ王女の拳がルーク少年の頬を捉えた瞬間だった。


「ごはっ!」


 壁に叩きつけられるほどに強烈なパンチ。しかしルーク少年もまた神器持ちだ。

 傷一つなく立ち上がり、姉であるレオーラ王女を睨みつけている。


「僕の方が……僕の方が強いんだああああああっ!」


 黒雷で剣を作り、突進するルーク少年。

 レオーラ王女も白雷の剣を作って立ち向かう。

 黒雷の剣と白雷の剣が重なる。


「うおぉっ!?」


 衝撃で身体が飛びそうになる所を、踏ん張って耐えた。なんて戦いだ。

 そして神器の扱いの差が出てきたのか、次第にレオーラ王女が優勢になってきた。

 このまま……ルーク少年が防御に集中していても、至れ決着はつくだろう。

 戦闘の経験値に差がありすぎる。

 レオーラ王女の勝利で。

 だけど……


 ドゴォンッ!!


 砂埃が舞い上がり、視界が塞がれる。


 ここだ! ここしかない!


 僕は一瞬の好機を逃さず行動に移る。


「僕の勝ちダァ! 姉上ェエエエエエエッ!!」


 レオーラ王女の肩をルーク少年が黒雷の剣で貫く。

 だがそれは……


「残念。僕でした」

「なにっ!?」


 視界が塞がれている間にレオーラ王女の姿に擬態し、態とルーク少年に見つかったのだ。

 そして、光の粒子となって消える瞬間、本物のレオーラ王女がルーク少年の顎にアッパーを放つのを見届けて、僕は分裂体に意識を移した。




 一番近い通路の松明から復活した僕は、黒猫になってレオーラ王女と合流する。


「終わった?」

「使徒様。はい。しかしこの指輪は?」

「それはプレゼント。でもこの指輪は僕が貰うね。悪戯っ子には神器の扱いは危なすぎる」


 僕はルーク少年の指から指輪を外して胃袋にしまう。


「それに関しては申し訳ございません。よく言い聞かせますので、弟の不祥事はなかったことに」


 頭を下げてそう言うレオーラ王女。


「構わないよ。そもそもこの件を知ってるのは僕とレオーラ王女だけだしね」

「ありがとうございます」

「それに巻き込んだのはこっちみたいだし。ねぇ、いるんでしょ? ルーク王子のお友達さん」


 僕は確信も持って言い放つ。

 すると、遺跡の角の陰から子供が出てきた。

 ルーク少年の姿を模しているが、髪の色は黒色だ。

 ぱちぱちぱち。

 それは、拍手をしながら語りだす。

 げに恐ろしいのはそこに悪意がいっさい感じられない事だろう。


「凄いや。さすが今神々の中で話題になっているスライムだね」

「スライム?」


 レオーラ王女がそれの発言に疑問系で問う。


「ふふ、そうだよ。その黒猫の姿は仮の姿。その使徒は本当は元人間のスライムなんだよ。変わってるよね。人間として生まれ変わることもできたのに、スライムに転生するだなんて」

「そんな事はどうでもいいだろ? 悪戯好きの神様が何の用だ?」

「ふ〜ん、やっぱり僕の正体はわかってるだね。じゃあ話は早い。君が言った通り、僕は悪戯好きの神様だ。そうだな……ここではロッキーとでも名乗ろうかな」

「山登りでもしてろ」

「ぷははっ! そのネタはそこの王女様には通じないと思うよ! ふふふ、スライムさん、僕はね、悪戯が好きなんだ。君が言った通り、大好きでね。これも遊びの一環なんだよ。僕が悪戯したいと思ったからそうした。そこには善も悪もないんだよ」

「太刀が悪すぎる。死人が出たらどうするつもりだ?」


 僕はルーク少年を一瞬だけ見る。ルーク少年が途中からおかしかったのは十中八九コイツの仕業だろう。


「それはそれだよ。人間なんて沢山いるんだし、一人くらい減っても特に問題ないよ」

「それで私の弟をおもちゃにしたと?」

「そうだよ。あぁでも、勘違いしないでね。僕は嫌いな相手を遊び相手(おもちゃ)にはしないよ。その少年は僕と同じ悪戯が好きだったから、一緒に遊んだだけなんだよ。叱られても怒られても、次の瞬間新しい悪戯を考える。反省して大人しくなっちゃう人間よりもよっぽど好きだ。彼はきっと将来大物になるよ! 僕のようにね!」


 すると、突然僕の身体が光りだした。


「えっ、ちょ、なにこれ!?」

「僕と遊んでくれた報酬だよ! 面白い仕掛けをしたんだ。後でステータスを見てね」


 ケラケラと笑いながら言うロッキー様。


「それじゃあ、僕は帰るよ、スライムさん。僕と君は似ている。今日から親友だ。また遊ぼうね!」


 陰に潜るように消えて、ロッキー様は帰っていった。

 あの人、俺のステータスに何をしたんだ?

 とりあえず寝たままのルーク少年を部屋に運び、レオーラ王女に迷惑をかけたことを謝罪した。

 レオーラ王女は気にしなくていいと言ったが、内心怒っているに違いない。

 暫くは関係を断つとしよう。

 ちなみに、ルーク少年は起きると何も覚えておらず、また悪戯をする日々を送っているようだ。

 まあ、小さい子は元気な事が一番なのだろうけど……悪戯好きの神様も、彼のそんな所が気に入ったのだろうか?

 なんて、余分な事を考えてしまったのだ。



お読みいただきありがとうございます


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