神様の依頼
日課の日向ぼっこを済ませ、カラスになって空を飛ぶ。
向かう先は大きな湖だ。
え? 湖に向かっている理由?
ただの水浴びだよ。
日向ぼっこをして熱くなってしまったので、少し水に浸かりたいと思ったのだ。
街の川は水が汚いし、スライムが街にいると騒ぎになってしまう。
そこで湖を探して飛び回っていたところ、ちょうど良い感じの湖を発見したのだ。
湖の中心に行き、カラスからスライム形態にチェンジ!
ひゃっふーっ!
そのままフリーフォールをして湖にバシャンと入る。
あぁ……気持ちいぃ。
が、そう思ったのは最初だけで……
――ギロッ!!
僕は湖の中にいた大型魔物の餌になり、死亡した。
はぁ〜、また死んでしまったか。
街に死に戻りした僕は黒猫の姿になって空を見上げる。
今度は日陰で休もう。
『名前:
種族:ガラクタ・アンデッド・デミドラゴン・キラー・ビッグスライム
技能:捕食、分裂、擬態、溶解液、腐食液、サイズ変化、胃袋、改造、火魔法、弱点看破
レベル:18
体力:740
魔力:1144
物理攻撃力:469
物理防御力:631
魔法攻撃力:581
魔法防御力:723
素早さ:531
耐性:打撃、斬撃、刺撃、毒、闇、土、火
弱点:光、水、雷、氷、風、
擬態:土、石、葉、カラス、ダンゴムシ、ムカデ、ミミズ、花、ミツバチ、グール、黒猫、人間[バジム]、鉄の剣、銅の短剣、弓、矢、麻痺毒、斧、槍、黒いローブ、銅貨、銀貨、金貨、酒、瓶、ライター、タバコ、火薬、麻薬、小麦粉、パン、リンゴ、モモ、古びた壺、魔法ランプ、ネックレス、ペンダント、指輪、鍵、手錠、鎖、腕時計、鏡、綿、白い布、木材、ペン、インク、紙、ワイバーン
通知:メール』
そう思っていたらまたステータス画面が勝手に開いた。
メールを開くと女神様からだ。
『こんにちはスライムさん。やっぱり貴方って面白い死に方を探しているんですか? それとも真性のドMとか? 私がスライムさんと相性の良いお友達を紹介しましょうか?』
どこをどう見ればそう思うんですかね?
『違うんですか?』
違います。あと僕の好みは歳上で色気が溢れて優しいお姉さんタイプですよ。
『まあ凄い! 紹介しようと思っていたお友達はスライムさんの好みのタイプと全く同じです! お見合いのセッティングしてみますね!』
しなくていいです!
女神様のお友達とか、絶対碌なお友達じゃない。
『うっ……否定できないのが辛いですぅ〜』
ほらね。それよりも接触してきた理由はなんですか?
ただの世間話?
『それもありますけど、実はめんど……いえ、とても嬉しいことがありまして』
今面倒って言いかけた?
『ません。断じてません。スライムさんの事を皆に自慢したら皆面白がってスライムさんと接触したいと言い出しただけです。私はその仲介役です』
つまり僕にとっては面倒なことってことですね。
『というわけでスライムさん、皆からメールがいってると思いますので見てくださいね。私も時々送りますから。それでは!』
あ、逃げた。
わかりやすいな、あの女神様。
さてと、メールを見てみますか。
うわぁ〜、なにこれ……。
メールの内容は神様たちからの依頼だった。
『主題:弟子が欲しい!
依頼主:タケミカヅーチ
報酬:そんなものは己の力で取るべし!』
『主題:ヒドラ酒が飲みたい
依頼主:オロチ
報酬:素敵な一夜』
『主題:素敵な詩人を捕まえて♡
依頼主:ミミューズ
報酬:ライブのチケット!』
『主題:その世界の伝説の武器が見たい
依頼主:ヘパイストース
報酬:自作の武器』
『主題:妻にバレる前に失くした指輪を見つけてほしい。早めでお願い
依頼主:ゼウッス
報酬:なんでも言って』
『主題:ダンジョン攻略をしてほしい
依頼主:ヘルメッス
報酬:転移魔法とかどう?』
皆名前が適当すぎる。偽名の意味がない。
それに報酬が不明の神様たちはどういうつもりだろう?
ミューズ……じゃなくてミミューズ様のライブのチケットって誰の? 本人のかな? それなら行ってみたいような気もするが。
オロチ様は蛇の神様ってことでいいのかな?
ヒドラの酒は僕も興味があるけど報酬が怪し過ぎる。素敵な一夜ってなんだ? スライムになった僕には生殖器官もないんだけど? いや、それに結びつけるのは不毛だな。うん、きっと宴会とかだろう。
ヘパイストース様の自作の武器は欲しいなぁ〜。伝説の武器の情報は積極的に集めてみよう。
ヘルメッス様はなんでダンジョン攻略なんだろう?
というか見てるの?
ゼウッス様は……これは〜……うん……もうバレてると思うけど、なんか切実だから早めに探してあげよう。
最初にこなすのはこの神様の依頼でいいかな。
タケミカヅーチ様のはやらなくていいや。報酬も無いみたいだし。
とりあえずゼウッス様に連絡を取ってみる。
依頼主の名前の所をタップすると連絡ができるようだ。
『あ、もしもし? アマテラースさんの友達のスライムですけど、依頼のことで詳しく聞きたくて……今お時間よろしいですか?』
『おぉぉ……神はここにおったかぁぁぁ! よろしいよろしい! 時間なんてあってないようなもんじゃしなぁ! わっはっはっ!』
豪快な爺さんが通話に出た。
時間があってないようなっていうのは、神様だから言えるセリフだよね。
あと神はあんただろ!
なんでスライムに祈ってんだ。祈るなら失くすなよ。
『指輪を失くしたとのことですが? それってこの世界でのことなんですか?』
『そうじゃ! その世界じゃ。お主のいる国の王都のちょっとエッチな格好をしたお嬢ちゃんたちが色んなサービスをしてくれるお店だと思うんじゃ』
『……つまりこの世界の風俗店に来て失くしたと?』
『まあ、そういう言い方もできるのぅ』
そういう言い方しかできねぇだろ!
旅行に来て失くしたとかならこちらも必死に探したかもしれないが、夜遊びに来て失くしたのなら話は別だ。
『すみません、探すには時間がかかるかもしれません。もう奥さんに叱られてください』
『待て待て! ワシには時間がないんじゃ!』
『さっき時間なんてあってないようなものって言ってませんでした?』
『それは言葉の綾じゃ。もうすぐ妻と会うのじゃが、その時に結婚指輪が無いと困るんじゃ!』
そんな大事な結婚指輪を付けて風俗行くなよ。
『はぁ……わかりました。指輪を探してみますので、お店を教えてください』
『それが……その……』
『ま、まさか……』
『うむ。酔っ払って覚えてない!』
こんのクソ爺いがあああああああああっ!!
『じゃが安心してよい! その指輪は普通の人間が装備するには手に余る。常に光のバリアが身を護り、病気にもならない。さらに雷の魔法を魔力無しで使うことができる優れ物じゃ!』
『そんな大事な指輪を何で失くしたんですかあああああ!』
『酔っ払うことができないからじゃ! 神だって偶には人間に化けて酩酊したい気分になるのじゃ!』
知るかぁ!
『まあそういうわけじゃ。ワシの結婚指輪を装備してる者がいれば、かなり目立つ行動をしておると思うぞ』
『まあ確かにそうですね。英雄願望のある人間なら尚更目立とうとしますし』
『そうじゃそうじゃ。人間は業突く張りじゃからの。きっとワシの指輪でチーレムしてるに違いないわい』
人類もあんたには業突く張りとは言われたくないのではないだろうか?
しかもチーレムって……。
『ワシの指輪でチーレムしてる人間を探すのじゃ!
ではあとは頼んだぞぉ〜』
一番最初に面倒な依頼を受けてしまった。
そう思いながらも、僕はカラスに擬態し、王都に向かって旅立った。
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