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九月の朝

作者: 武田道子
掲載日:2022/09/11

九月の朝




夏は朝早い微睡の夢の中にさえ

もういない

昨日までべたべたと

まとわりつき

決して離れないと

耳元で囁いたことは

本当は

別れの言葉だったのだろうか



なぜこんなに静かになってしまったのだろう

九月の朝は

ザラザラだった大気は

生き返ったように

しっとりと柔らかく

鼻腔を湿らせる

甘く枯れた大地の匂いが

裸足の脚を温める



九月の朝は

黙っている

むやみに弾ける朝の光りにさえ

翳りが感じられ

空はけんか別れをした友のように

そっけなく

胸をついた小さな針穴から

すーっと夏が抜けていく



少しずつ形作られていく秋

九月の朝

透明に近い半月が

朝の光の中で夏の亡霊のように

浮かんでいる

十五夜に

甦る輝きを夢見るように


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