婚約破棄されたお姉様は世界一の花嫁に私がしてみせます!
カレンローズ・フロートはフロート公爵家の長女でマシュー・マロウ王太子の婚約者。
アイスローズと言われるほど冷静、優秀で滅多に笑顔を見せる事はなかった為、付けられた呼び名だった。
本当は恥ずかしがり屋ですぐ緊張してしまうからだったのだけど。
そんなカレンローズ姉様も家族の前では緊張する事なく素直に笑顔を出す事ができた。優しい娘であり姉だった。
王命で王太子の婚約者に任命された時も喜びより自分で良いのかと倒れそうになっていたが、家族の為に婚約者になる事を決めた。
私は大好きなカレンローズ姉様を守る為に公爵家の力や私の知識を使う事に決めた!
だって婚約者になった王太子は女を使い捨てるクソ野郎って噂だから。大事な姉様を餌食にしてなるものか!
ちなみに私はアレクサンドラ・フロート。フロート公爵家の次女で前世の記憶持ち。マロウ王国は前世の私が居た時代から言うと中世ヨーロッパくらいだから、前世の知識がお金になると知っているから、バンバン放出しちゃいます!
そして私は姉様も姉様の貞操も守りながら、この時を待っていた!
あのクソ野郎からの婚約破棄宣言を!
「カレンローズ・フロート!この場で貴様とは婚約破棄する!貴様は後の王妃には相応しくない!よってキャルロット・マカロンを新しい婚約者にする!」
クソ王太子の横にはふわっふわのベリーピンクの髪の少女がべったりくっついていた。この女、ぶりぶりぶりっ子でいままで何人もの男をタラシ、騙し、捨てて乗り換えるすっごい女。泣いた男女は数知れず…。私の姉様を悲しませた罪は償わせますけど。
「貴様がキャルロットにした虐めは許し難い!」
「私はマシュー様のおかげで何とか頑張り、この場に居ますが、本当は辛くて死んでしまおうかと悩みました。辛い日々でした」
大袈裟に演技し、マシューに抱きついた。
「か弱いキャルロットをこんなに怖がらせて、それでも公爵令嬢がする事か!」
「マシュー、やめないか!カレンローズには何の非もないではないか!」
マシューの兄であるアドニスがカレンローズを庇うと
「うるさい!庶子の癖に黙っていろ!貴様など兄でも何でもない!」
アドニスは国王の第一王子だが、母が庶民の出であった為王位継承権を持てず、王妃の子であるマシューから見下されていた。アドニスはそれでもカレンローズの前から移動する事はなくマシューが暴力を振るわないように庇っていた。
「カレンローズ、貴様は国外追放だ!家族もだ!!爵位も領地も返納してもらう!」
「そ、そんな!?私はその方を知りません!それに家族には責はありません。やめてください!」
カレンローズは自身のことより家族の未来の事を考えたら立っていられなくなった。
「姉様!」
アレクサンドラは走り近寄りカレンを抱きしめた。そして侍女のクレアにカレンローズを任せ、一歩前に出て王子に向かって言い放った。
「このクソ王子が!姉様を泣かしやがって!絶対に許さん!!だいたい我が公爵家をどうするですって?」
「はぁ?誰に向かって言ってるんだ!不敬罪だ!捕まえろ!!」
王子の言葉に従う騎士は誰一人居なかった。
「な、何故動かない?」
「だってあんたもう王太子でも王子でもないですから」
「はぁ?何言ってんだ?」
「姉様に婚約破棄宣言した時点で王族の資格無くなったのよ。そうですよね?国王様」
アレクサンドラが入り口を振り向くと国王と護衛騎士団が入ってきた。
「アレクサンドラの言う通りだ。カレンローズとの婚約はわしがフロート家に頼んだものだ。その婚約を勝手に破棄する者に王家の一員である資格は無い」
「何故ですか!?息子の僕より公爵家をとるのですか?」
「馬鹿者!王族は国民の為にあるのだ!自身が偉いと勘違いする者を王族には置いておけんわ!そんな簡単な事も分からんのか!?」
「し、しかし、たかが婚約破棄しただけでは無いですか!?」
フロート公爵家が我が国から別の国に国替えした場合、我が国にどれ程の損害があるか考えた事はあるのか!?
フロート公爵家は軍事、外交、商会での信頼は王家より上だ。それは残念ながら王家が弱体化しているからだ!それでも公爵家が他国に行かないのは現公爵とわしとの信頼関係があるからだ!
元々我が公爵家は王家から曽祖母が降嫁された事から、王家の血筋でもあり、子供同士は一緒に育つ事も多々あった。お父様と国王様も母同士が仲良く、年齢も近かった為、兄弟のように仲が良かった。残念ながら王妃と母は仲が良くなく、繋がりは希薄になっていたけど。
「そんな事、知りませんでした」
マシューは不貞腐れていた。
「何度も、皆がカレンローズを大事にしろと、誠意を持って愛せと忠告した筈だ!
お前がカレンローズを悲しませれば婚約は無効になり、責任を取りお前は廃嫡になると決まっていた!」
「母は俺が次期国王なのだから、好きにして良いと言っていました!」
でたぁ、プライドの塊の王妃の勝手な思い込み。こんな女が姑になったら、姉様は地獄しかないわ。そんな姑なんかいらん!
「国王様、姉様の事は父から私に全ての権限を頂いています」
「公爵から聞いておる。今の公爵家の財、人脈を築いたのは其方だから、公爵家の権限は其方にあると」
負けない権力を持つ為に、姉様や家族の為に頑張ったもの。
ふふっ。
「国王様、お聞きしますが、そこに居る王妃様とマシュー王子と我が公爵家、どちらを選ばれますか?」
「勿論、公爵家だ!」
「なっ!?貴方!家族を見捨てるのですか!?私は貴方の妻で、マシューは息子なのですよ!」
派手な王妃は国王を睨みつけた。王妃はは元々は隣国の王女で気位が高く、アドニス王子の母を元侍女だと揶揄して見下していた。
「マシューは廃嫡に、お前とは離縁する。お前の贅沢が無ければ、多少でも国が助かるからな」
「私はグリーラン国の王女ですよ!元国王は私の兄です!グリーラン国と戦争をする気ですか?」
「残念ながら、貴方は既にグリーラン国の籍からは抜かれていますので、王族でもなんでもありません。
そうですよね?大使」
「その通りです。2年前に籍を抜く代わりに国宝をお渡し致しました。その時にシュリン王妃様の署名も頂いております。万が一、シュリン様の籍があった場合でも我が国はフロート公爵家から多大なご支援を頂いています。恩を仇で返すような事は致しません」
王妃が実家を頼るのは分かっていたから、先手を取らせて貰いましたわ。
「シュリン、マシュー、二人とも部屋で監禁しておけ。決して出してはならない」
シュリン王妃もマシュー王子も見苦しいほど叫んでいたが、会場から連れ出された。
「わ、私は関係ありません!マシュー様とは終わりました。私は自宅に帰ります!」
キャルロットは真っ青になりながら、会場を後にした。
「あの娘にもマカロン家にも責任は取ってもらう!宰相、手続きを頼む」
「了解致しました。必ず責任をキチンと取らせます」
宰相は王に頭を下げた。
「身内の見苦しさを見せて申し訳なかった」
王自身は公爵に頭を下げた。
「王太子にはアドニス様を推挙致します。文武にも優れ、既に外交官として隣国への信頼もございます。国民に寄り添うお姿も素晴らしいですし、庶子だからと蔑ろにして良い人ではありません。
何より、姉が好意を寄せていますから」
「ア、アレクサンドラ?」
「お二人が想い合って居る事、知ってましたわ」
「この場でアドニスを王太子とし、カレンローズはアドニスの婚約者と宣言する」
国王が宣言と会場内から大拍手が上がった。
「アレクサンドラ、ありがとう」
「カレンローズは俺が必ず幸せにする。泣かせないと君に誓う!」
「そうしてください。姉を泣かせたら我が家が黙っていませんから」
アレクサンドラはそう言って2人を祝福した。
一年後カレンローズの結婚式はアレクサンドラ主導で盛大に執り行われた。
後にカレンローズはよく笑う王妃になった。
シュリン元王妃とマシューは実家のグリーラン国預かりとされ、生涯領地から出る事は叶わなかった。キャルロットは北の修道院に送られ、こちらも生涯修道院で暮らした。キャルロット自身は悔い改める気持ちは生涯持つ事は無かったと見張りは報告していた。
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今年も後半月、皆様体調崩さず、良い年を越せますように
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