表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デジタル時計はすぐ狂う  作者: とうふ
【第一章】未来から何の目的もなく来ました。
3/16

02 自分が狂っていると思う人はまだ正常。

 自分のやってきた行動を逐一覚え、全く同じように再現することができるだろうか?

 しかし、過去の世界に行き元の世界に戻ろうと思うのであれば、過去の行動を完全再現しなければならない。

 本来そこにいない人間が、そこに突っ立てただけで人が死ぬ。たとえ未来から来たとしてもここにいるだけで狙った人間を殺せると計算出来る人間はいないだろう。

―――――――――――――――――――――――――


  青葉秀雄は事故死だった

 

 兄の死を経て晴輝は理解した。

 直接的に関わらずとも未来を変えることができることを、もう元の世界線に帰ることはできないことを。そして、


 「 未来の知識で異世界最強! 的なことは出来ないわけか」


 別に大した目的があって過去に戻ったわけではない。なんなら自発的に戻ったわけでもない。そんな晴輝が過去に戻って考えていたのは、中学で初めて会うであろう人達との距離を未来の知識で軽々と縮め、人生勝ち組カーストに入るまさに『未来の知識で異世界最強!』作戦だったのだが。


 「俺が話しかけただけで死人が出るかもって考えるとなあ…」


 兄が死んだことに悲しみはなかった何ならおそらく3年後に手に入ったであろうスマホや兄のギターなどが手に入って嬉しいぐらいだ。ついでに壁を殴って指から血が出るという未来も回避できた。


 「グフフ」


 気持ち悪いぐらいに上手くことが進むので気持ち悪い微笑みかたをしてみたがしっくりこない。中学のファーストキャラクター作りに取り入れてみようと思ったが却下だ。

 悲しみは断じてない。しかし恐怖はあった、自分がきっかけで友人が死ぬかもしれないと考えると迂闊な行動はとれない。なるべく慎重に中学ライフを満喫することを決意する。


 兄の葬式が間も無く終わる頃、晴輝はこの世界での生き方を決めた。


―――――――――――――――――――――――――

 

 とは言っても中学に入学するまで大してやることもないので入学式までの時間は基本的にゲームをして過ごした。

 

 「ネット対戦には猛者しかいねえな…俺このゲーム高3になるまでやってたんだぞ」


 超乱戦という1vs1の対戦ゲームをやりながら画面に向かって喋る。このゲームの発売が去年なのでプレイ歴で晴輝に敵うものはいない。


 「っクソ…ランキングの順位が4位からずっと上がんねえじゃねえか!」


 このゲームのランキング制度は自分よりランクの高いプレイヤーを倒せば倒すほどポイントがよく入り、雑魚に勝っても対してポイントは貰えない制度で、やり込んだプレイヤーではなく本当に強いプレイヤーが決まるランキングだった。

 春休みももう最終日いい加減飽き始めてきた晴輝が無心でマッチングを待っていると、


 『HARU Qi とマッチングしました』


 「本命とのマッチきたあああ」

 思わず立ち上がり晴輝は座ることも忘れてゲームに集中する。倒せば多くのポイントがもらえる3位のプレイヤーとマッチングしたのだ。

 やはり強い、ここまできたら才能なんだろうと素直に認めてしまう。プレイ歴限界突破中の晴輝が才能という壁を感じてしまうほどに圧倒された。


 「明日から中学生か…」


 数日前の自分ならはしゃぎ狂っていたのだろうか、今はただ悔しくてなんとも言えない気分だ。


 「切り替えろ!俺っ!」


 朝起きてまず、頬を軽く叩き自分に喝をいれた。

 気持ちの差が結果として出てくることがあるとどっかのだれかが言ってた気がする。

 ゲームのお陰で自分が凡人なことは理解できた、それなら気持ちで勝つしかない。


 「勝負は4月と言ったとこか」


 ただ数字を上げるためだけにゲームをしていたわけではない。数日間の戦闘で全盛期よりも腕は上がった気がする。


 「今度こそは勝たせて貰うぜ!天才と呼ばれてるお前に敗北の2文字を刻んでやる!」


 この言葉を聞けば大体誰もが熱い闘いが起こると予想するものだろう。晴輝も自分がこんな言葉に心を踊らされる日が来るとは思ってもいなかった。


 「強いていうなら『リベンジ・マッチ』だな」


 自分の台詞が精神年齢に似合わなすぎてこんなことを平気で言う全国の主人公達を改めてすごいと思った晴輝は少し頬を赤らめながら部屋を出る。

 台詞が恥ずかしかったわけでもなく、気分が高揚していたわけでもない。

      「少し強く叩きすぎたな…」

    やっぱり頬など叩くもんじゃなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ