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デジタル時計はすぐ狂う  作者: とうふ
【第一章】未来から何の目的もなく来ました。
2/16

01 分岐点に着いたときここが分岐点だって気付くやつはおかしい

 アラームが鳴る前に起きて数分遅れて鳴るアラームを止め、アニメの超人キャラみたいな俺かっこいいっと優越感に浸るのが晴輝のモーニングルーティーンだった。


 「スマホもないし、部屋の様子も昨日と違う」


 何が起こっているかは大体検討が付いている。しかし主人公ってのはここですぐ答えに結びつけず、冷静に状況を確認するものだと思うので特に何も考えず部屋や自分の体を観察する。


 「中学の鞄が部屋にあって……スマホがなくて……

っとその前に」


 時間を確認しようと思い今日いなくなるはずだったデジタル時計先輩を手に取る。


 「時間は大丈夫だな。そんなことよりも…」


 時計の日付は3月28日見るのも忌々しい最悪の日付をしっかりと表示してくれている。だが


 「なんで2020年のまんまなんだよ」


 時計だけは過去に戻っていなかった。そもそも自分が過去に戻ったというのも憶測でしないのだが。

 

 「まあ……とりあえず」

 

 部屋にいても何も分からないので部屋から出ることにした。2020年なら感染症のニュースが朝から流れているはずなんだが。

 

 『花見シーズン到来となり東京・上野恩賜公園人で溢れています。今日は東京都だけではなく日本全国で気温が高く良いお花見日よりとなるでしょう』

 

 ニュースを横目に母親のスマホで日付を確認する。


 「2014年3月28日…」


 少し弾んだ声で呟く。本当に過去に戻っている。ちょうど中学に入学する年だなと考え込んでいる時、勢いよく扉が開く。


 「それじゃ、遊びに行ってくるわ」


 クソ兄貴こと晴輝の兄、青葉秀雄だ。相変わらず知性のかけらもない声で馬鹿みたいに叫んでいる。


 「分かったー、って晴輝あんたどうしたの?早起きなんかして」


 秀雄を見送ろうとした母と遭遇する。今が春休みの途中なことに気づく。


 「クソ兄貴の声で目が覚めたんだよ。朝飯はいらない二度寝するから」


 別に眠いわけではないが、会話するがめんどくさいので寝起きでイライラしてる風を装い自分の部屋に戻る。


 「あんたももうすぐ中学生なんだから早く起きるようにしときなさいよ」


 甲高い母親の声が頭に響く。本当にイラつきそうだ、部屋に戻ると落ち着いて今のこととこれからのことを考える。


 「せっかく中学生に戻れたんだ。やるべきこととかあるんだろうけど」


 目についたゲーム機を拾って起動させる。晴輝は自分があまり賢くないことを自負している、考えたところで正解は見つかるとは思えないので直感で今1番やりたいことをする。

 さすがに6年前のゲームをいまさら楽しむなんて無理だろうと思っていたが。意外とハマってしまう。

 何時間か経ったのだろうか母親ももう仕事に出ているのだろう。ひと段落ついたところでリビングに向かい昼食の確認をする。


 「6年後にはない。レア弁当ばっかだな」


 6年前のコンビニ弁当を見て懐かしさを感じている頃だった。電話の着信音が家中に響く。スマホを持ってから家の電話が鳴ることなど滅多になかったのでまたもや懐かしさを感じながら電話に出る。


 「もしもし」


 自分でも不思議なぐらいに無邪気でワクワクした子供のような声が出て。少しおかしくて笑うそうになる。


 『青葉さんのお宅でしょうか?━━━』

 

 衝撃的すぎる内容に声の主の性別すら理解できなかった。返事をするのも忘れている。晴輝は今自分が悲しんでいるのか、喜んでいるのかもわからない。いやただ驚いているだけでそんなことを気に留める余裕すらないのかもしれない。



  その日、忌々しいクソ兄貴青葉秀雄が死んだ。



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