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階‐きざはし‐の彼方  作者: 炎鷹
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第七話

 ひとしきりしゃべり倒したが、お互いに疲れが見えたところでエドアルドは区切りをつけることにしたらしく、ペンを置いた。

 続きは明日以降と言われ、部屋をでる。

 連れていかれたのは、当然、牢獄。


 気を使われているのか、そのフロアに先客はいなかった。

 当たり前のように入ることを促され、従うしかなかった。

 鍵のかかる音が重く響き、無言で彼は去っていった。


 疲れた。お腹空いた。何より、眠たい。

 見渡しても布団はない。ただ、使い古しの布が隅にたたんであった。

 顔を近づけるとあまりいい匂いはしない。外に干したことがないかもしれない。できれば、触りたくない。しかし、床は石のようである。明かりが乏しいので確認ができない。


 はっきりしているのは硬すぎる床に直接寝るのは嫌だった。

 ひとまず、それを床に敷き寝そべることにした。


 目を閉じて、心を無にする。

 何も考えたくない。

 体を休めるのが先決。これから先のことは、目が覚めてから考える。睡眠不足は判断を鈍らせる。

 そう言い聞かせて、寝ることに集中することにした。


「あの書類はどうなった?」

 白を基調としたフロア。厳しい声が響く。


 わかっています。期限があることは。ただ、電話対応もあるわけで、飛び込み仕事に追われてどうしても社内書類は後回しになってしまう。


 そういえば、あの契約の担当者に連絡してない。あっちの返事もまだ。数字も出さないと。


 年度末が近いので締め切りは前倒しだ。しかし、こちらの事情はお構いなしに電話はかかってくる。お願い、この書類が終わるまで待って。

 目を通しても頭に入ってこない。周りは騒がしい。電話は鳴る。誰も取りたがらない。


 もう、椅子に座っているなら電話を取りなさいよ!

 私は電話番ではないのよ!


 イライラを何とか押さえつけて、電話機に手を伸ばす。


 そこで、目が覚めた。


 仕事のことを考えていたせいが、体が熱い。いつもそう。不平不満が溢れかえり、行き場を失って体中を駆け巡る。

 ぼんやりした視界。いつもとは違う指先の感触。


 ああ、家じゃなかった。

 絶望を感じて涙がこぼれた。

 ここはどこなの。どうしてこうなったの。


 仕事が忙しくて、休みの日は体力を回復させるだけで精いっぱい。

 そんな毎日だから、いつかは逃げたいと何度も思った。けれども、こんな形では決してない。


 着ている服で顔を拭い、身を起こす。

 うっすらとどこからか光がこぼれている。

 朝になったのだろうか。物音は聞こえない。


 誰か来てくれるのか。このまま忘れ去られてしまうのか。

 不安にかられて体が震えた。

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