1/19
第0話 プロローグ
地平線に近い空が鮮やかな茜色に染まり、名状し難い光景はやがて、夜空のカーテンに覆い隠される。
壮大に広がる大地には遮蔽物はなく、殺風景で物寂しい世界は無限を築いている。
その世界で銀を宿した少女は、会えない人を待っていた。
果てから吹く流麗な風が少女の横を通り過ぎると、万緑の草原は音を奏でながら、静かに騒めき始める。
少女が屹立する地が、黄昏と漆黒のグラデーションに分かつ時、この世界しか存在しない天色の花が咲き誇る。花弁が幻想的なまでに青白く発光すると、寸刻も経たない内に光彩の綿毛へと変わった。
それが闇夜に煌煌と浮かび上がると、件の待ち人へ向けてふわふわと風で運ばれる。
星々の降臨。玉兎の現出。雲一つない空が作り出す様相には、それらは存在しない。冷然たる宇宙には、たった一つの小さな原始星しかなかった。
そして、暗闇の先にいる件の待ち人に光が届く瞬間には、
銀を宿した少女は、忽然と世界から消えている。