小さな村「レティ村」
どんどん煙が濃くなっていく
2人は少し走ると村に着いた
村の入り口らしいところに四角い古びた木の看板にレティ村と書かれている
どうやらこの村から出た煙のようだ
景色などに目を楽しませるものがない殺風景な小さな村
古びた集落があって人口は多くても100人ほどだろう
村の住人とおもわれる人達が消火作業だろうか?
なにか慌ただしくしている
男が20人と女が10人ほど
「あーだいぶおさまったな」村の男A
「もう大丈夫だろう」村の男B
「ん?」後ろで見ていたシーコとドクンの存在に気付く村人数人
「あんたたちは?村の者じゃないみたいだけど」30代くらいの村の女が話しかけてきた
「ええ、町に行く途中で煙が見えたので気になって・・」
「ああ、旅の人ですか」
「火事ですか?」
「う、うん、、え、ええ」なぜか歯切れの悪い村の女。きっぱりと言い切ることがなくじれったい様子だ
その会話を聞いていたドクンも腑に落ちない。なんとなく納得できない感じ
村の住人たちは火事らしい消化が終わりそれぞれその場から離れていった
話しかけてきたのは村の女一人でそのほかの村人はドクンやシーコのことはジロジロと見るのだが話しかけようともしない
なんとも愛想の悪い村人たちだった
「なんか感じ悪い村ね」不機嫌な口調のシーコ
「でももう暗いから今日は泊まっていこっか。宿くらいあるでしょ」
「ああ」ドクンが頷く
2人が村に着くころには辺りは暗くなりかけていた
このまま町に向かうよりもここは村に一泊して朝から移動したほうがいいとシーコは判断した
「あそこ宿じゃないの」
2人で村を歩いていると宿らしい所を見つけた
「いらっしゃいましー」
宿に入ると20歳くらいの女が迎える
「一泊泊まれる?」
「はい、大丈夫です。お食事のほうは?」
「どうする?私はそんなにおなかすいてないかなー」ドクンに視線を送るシーコ「俺は減ってる」
「あ、そうだ!ホワイトタイガーの解体しなくちゃ」
先ほどドクンが倒したホワイトタイガーの解体を思い出したシーコ
「すいません、魔物の解体お願いできるところってありますか?」
宿屋の女に解体してもらえるところを聞くシーコ
「魔物の解体ならうちでもやってますけど・・・」
宿屋の食事には牛や豚など家畜の他に魔物の肉が使われることも珍しくない
この女でも魔物を解体して捌けるだろう
町でもないしこの小さな村には解体専門で仕事をしている人もいないだろう
「ホワイトタイガーなんだけどできますか?」
「え、ホワイトタイガー!!!」
解体する魔物の名前を聞いて驚く女
女は最初解体の仕事をシーコから頼まれて嬉しい気持ちになって喜んだ
その理由はこの小さな村レティにはあまり仕事がない
宿屋といってもこの小さな村に訪れる人は多くないというかほとんどいない
ドクンとシーコが訪れるまで前の客は2週間前のことだ
村に珍しい物があったり観光地でもない
ドクンとシーコのようにたまたま寄ったという人しか村に来て泊まることもない
魔物の解体だって冒険者ならできるなら自分の手でするだろう
わざわざ宿屋の女にお金を払って頼んだりしない
「はぁ・・できないですね・・・」
女は悲しかった。ため息をついて落ち込んだ
やっと仕事をしてお金がもらえると思ったのに
解体のお礼に素材や肉を分けてもらえたかもしれないのに
「そうよね、やっぱホワイトタイガーは無理よね~」
シーコも残念な表情
ホワイトタイガーと言えば皮も爪も牙も高級素材だ
(素人の自分が素材を傷つけて素材価値を落とすわけにはいかない)
宿屋の女はこう思った
この宿屋の女が魔物の解体をしたことがあると言っても小型の魔物と家畜を捌けるくらいだ
体長5mもあるホワイトタイガーの解体が完璧にできるわけがない