それぞれの決意
「はっ!」「はっ!」「はっ!」
大僧正フェックルの弟子達が朝早く濃い霧がかかる中、修行に励んでいた
みな坊主頭で立派な体格をしている。その中に身長130㎝ほどのドクンの姿があった
フェックルの弟子達は300人ほど、みなフェックルの圧倒的な強さと人格に惚れ弟子になった
己を鍛えるために日々修行の毎日だ
今している修行は槍のように長い木の棒を持ち形稽古をしている
「いや!はーーーー!」
ドクンも木の棒を振り下ろしたり突いたりして声を出す
「そのくらいでいいだろう」
体を止めて水格のもとに集まる弟子たち
「それでは次は対人で形稽古してその後は試合をしてもらう」
「おおお」
弟子たちから少し声が上がる
「水格様、一つよろしいですか?」
「なんだ、大膳」
ドクンのほうを見て「あの子供は?・・・・」
昨日の話し合いに大膳は参加していなかったようだ
「あの少年はドクンという、しばらくここで修行することになった」
「ハハ、冗談でしょう、私どもの修行にあの子供がついてこられるとは思えませんが」
「フェックル様が弟子の許可をされた」
「なんと・・・信じられん・・・」
大膳はフェックルの弟子となり10年。毎日厳しい修行に励み自分の才能に自信をもち、誇りをもっていた。一緒に弟子入りした友と呼んでいた者達はその修行の厳しさに耐えられなくなり脱落した。そんな人間を大勢見てきた。それがこんな子供が弟子入りを許されて共に修行をする・・・あり得ない、そんなことがあってたまるものかという怒りの感情だった。
「よし、それでは始めてくれ」
水格の声に弟子達が修行を再開する
ドクンの姿が目に映る
「私と形稽古しないか」
気づいたら大膳はドクンに話しかけていた
「いいよ」
ドクンも相手がいなかったのかすぐに返事をする
手を合わせて礼をする大膳
ドクンも相手がやっているので何となく同じようにする
「それでは少年かかってこい、本気できてもかまわないぞ」
「じゃあいくよ」
ドクンも構え相手を真剣な顔で見据える
ドクンが大膳に走って飛び込む
(早いな・・・)大膳はドクンの動きを評する
バチィィィンッ!!!!!!!
ドクンの拳を手の平で受け止める大膳
「いい拳だ、フェックル様に認められるだけのことはある」
「おっちゃんもなかなかやるね」
「フ・・・」
軽く微笑む大膳
バシッ!ビシッ!ドカッ!弟子達の対人の形稽古が2時間続いた
「ハア、ハア・・・やるな少年」
「おっちゃんもつええな」
大膳と違いドクンは余裕そうで全く息を切らしてない
「ハハ、何を言っている、私と違い全然疲れてなさそうだが」
大膳は最初に持っていた怒りの感情は無くなっていた
場面が変わりそこは神殿
シーコとミリアの姿があった
「ミリアここは?」
「ここはラクターナ神殿、魔法使いの修行の場です」
「シーコも私と同じ魔法使いなので、ここで鍛えていけば短い時間でレベルを効率よく上げられます」
「へえ」
「これからの冒険では私達はどう考えても力不足です。ドクンさんの修行が終わるまで私達もここで鍛えましょう」
「うん」
(でもドクンは会った時から強かったし・・・修行したらどうなるのかしら)
オシャレなカフェで一人の悪魔がコーヒーを飲んでいた
「はぁ、落ち着くぜ…朝の一杯はたまんねえぜ」
ホッとして心落ち着くクーポン
「シーコとミリアは魔法の鍛錬に行ったしリンも一緒に遊ぼうと思ったら用事があるとか言ってどっか行くし・・・」ぶつぶつ文句を垂れるクーポン
「ふぅ、俺様もちょっと久しぶりに鍛えてみるか…中位悪魔くらいには進化しときてえな」
クーポンは心をきめて決意をした
そこは町から少し離れた草原、獣人の少女の姿があった
「さあやるぞ!」と決意して心が奮い立つリン
前には草や木の実に果物と供え物がありリンは手を組み念じる
一瞬だけ光り輝くように美しいまぶしい光が発生して軽く煙が出た
リンの目の前に可愛らしい子猫が3匹召喚された
「やったー!成功したー」子猫達を召喚できたことに喜ぶリン
「なんだ、このガキは?」
「こいつが呼び出したんじゃないか?」
「生意気そうな奴だな」
可愛らしい見た目の子猫達は呼び出した主人のリンを小馬鹿にしたことを言う
「え?あの、ちょっと・・・」
リンは可愛らしい子猫達の意外な反応に戸惑う
「ああ、こいつが呼んだのか、見たところまだ子供だな」
「こんなガキの言うことなんか聞きたくねえな~」
「誰が従うか」
「話を聞きいて!」リンが注意する
人間には「ニャーニャー」と言ってるようにしか聞こえないが獣人のリンには子猫達の会話がはっきり分かる
「なんか怒ってねえか?」
「そんなの無視だ、それより最近いい食い物見つけたんだ」
「ウチも美味しい物持ってる♪」
「コラ!」リンが怒る
子猫同士で会話をしているがリンのことは全く無視だ
完全にリンのことを舐めている
子猫達は首に下げていた巾着袋からお菓子を出した
「このクッキーというのはうまいな!チーズ味か」
「カリカリしたシーフードのこれもいい」
「やっぱササミジャーキーでしょ」
子猫達はそれぞれが出したお菓子を食べ比べて自由に考えを述べ合い議論し始めた
「いい加減にしなさい!!!」
リンは子猫達の身勝手なふるまいにけしからぬ!と我慢の限界で憤慨する
リンは子猫達が食べているお菓子を取り上げた
「なにすんだ!」
「この野郎返せ!」
「このガキが許さんぞ!」
さすがに食べている物を取られたら子猫達もリンに反応せざるを得ない
怒りが爆発したリンと子猫達のバトルが始まった
「子猫だからって舐めてるみたいだな」
「こういう奴は体にきいたほうがいい」
「どっちが主人かちょっと分からせてやるか」
子猫達はお菓子を取られて怒り心頭になった
「舐めてるのはあなた達のほうでしょ!」
リンも負けずに言い返す
「シャーッ!」「キシャーッ!」
子猫達が可愛らしく威嚇をしてギラッ!と爪を構える
(全然怖くないんですけど・・・)
「シャーッ!」真正面にいた一匹が飛びかかってきた
「動きが遅いよ」左にサッとかわすリン
「チッ」
傍から見たら少女が可愛らしい子猫達と触れ合って遊んでじゃれあっているほのぼのとした光景ではあるが少女も子猫も本気だ
すかさずもう一匹がリンが避けたほうに飛びかかる
「おっと、甘いよ」
連携攻撃に少しリンが驚くが難なくかわす
しかし同時にペタッと自分の背中にダイブされたことに気付いた
「捕まえた」
(今気配が分からなかった)
「捕まえたから何なのかな?」
まだ心にゆとりがあるリン
しかし体に力が入らない、動こうと頭で思っても体が反応しないことに気付く
(え?どうして・・・)
「それがウチの能力だ、触れた相手の行動を数秒間停止させる」
「シャーッ!」
その時先ほどかわされた2匹が同時に飛びかかってきた
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーー」
ポコッ!ポコッ!リンの顔に猫パンチが決まった
「どうだ!」
「参ったか!」
子猫たちは自信満々に言う
(あれ?でも全然痛くない…手加減してくれたのかな?)
「はい、わたしの負けだよ」
軽く微笑み負けを宣言しリンは感覚的に大人の対応をしたような気分になった




