少年ドクンと魔法使い少女シーコの闘い
少年の家に到着
小さな家だがしっかりとした造りで雨漏れなどなく少年が一人で住むには十分な広さだ
「ここだ」魔獣の足を肩に乗せながら言う
「へえ、あんたここで一人で住んでるの?」
「うん」と頷きながら魔獣の調理にかかる
「寂しくないの、こんな山奥に一人で」
「うん」慣れたように家の前で火を起こし木を刺し魔獣を固定しそのまま丸焼きにしている
少女は少年が調理している間、家のほうに足を運び目を向ける 外には少年の下着や服など洗濯物が干してあった
少年らしく?ところどころシワがあって雑に無造作な干しかたではあるがしっかりと生活をしているということを感じ取ることができた
あんな子供がこんなところで一人で暮らしてるんだ・・・
「おーい!できたぞ!」
「はーい」少年の呼びかけに少女が答える
切り株のような椅子に腰掛ける少女 少年も同じような椅子に座っている
「うまそう!」丸焼けになった魔獣にむしゃぶりつく「アチッアチチ」できたばかりだから当然熱い「ふうふう」少年は吐息で覚ます
「ほらお前も食えよ」と肉を手で引きちぎって食べやすい大きさの肉を少女に渡す「うん、ありがと」
そして魔獣の丸焼きを見て少女は気づいた
(ん・・・?よく見るとこれブラックベアじゃないの?魔物図鑑で見たことある、確か魔物ランクDの・・・え?こんな凶暴な魔物をこの子が仕留めたっていうの、まさかね・・・)
少女はその魔獣を本で見てよく知っていた
まあ冒険者ならある程度魔物の知識に詳しくなくてはこの世界では生きていけない
この世界では生息している魔物にはランクが付けられている
上位魔物ランクからSSSランクSSランクSランクAランクBランクCランクDランクEランクFランクと基本的には強さで分けられていて弱くても希少性によってランクが高い場合もある
一日ぶりの食事に少女は嬉しそうだが魔獣の丸焼きを見て少々食べるか戸惑っていた
(いや肉は美味しいって書いてあったけどさあ・・・)
でもお腹がグーと鳴る 「もうガマンできなーい!」少女は勇気をもって肉にかぶりつく
「ングウグ ん、これ、見た目よりずっとおいしい」少女が笑顔になった 「ハハハ」少年も笑顔を返す
食事をしながらの会話
「そういえばまだ名前聞いてなかったね」 「ああ、俺はドクン」
「ドクン? 変な名前」馬鹿にしたように笑う「なんだよ!じゃお前の名前はなんだよ!」ドクンは怒った表情と口調だ
「わたしはシーコよ~!」少女は胸を張って自信に満ちたように答える「シッコ?しょんべんか?」ドクンの言葉に「シーコよシーコ!女の子の名前をなんだと思ってるのよ!」口うるさくキレる
「それでシーコは何があったんだよ・・」肉をモグモグほう張りながら言う「はぁ・・今は修行中の旅なの・・・でも初めからつまづいて」ため息を吐きか細い声で答える
「ふぅん、シーコもいろいろ大変だったんだなあ」相槌するドクン「学校と違ってうまくいかないわー、私これでも魔法使いなの」
「へぇ、シーコは魔法使いなのか~」「そう、卒業して修行に出たんだけど・・・」
「でも魔法使いなのにシーコは全然強そうじゃないなぁ、俺の知ってる魔法使いはもっと強そうだった なんか光がパアーって出て大きな光の玉が出てきたんだ!何の魔法か分かんなかったけどすごかった 一瞬で悪い魔物の群れを倒してた」
過去にドクンは魔法使いを目の前で見たことがあったらしく その時見たことを興奮して話した ドクンが見た魔法使いはかなりレベルが高く熟練された魔法使いのようだ
「そりゃあ私だって修行中の身で自分がまだまだだって分かってるけど・・でもね、言っとくけど少なくともあんたよりは強いわ!」弱いと言われたシーコはドクンの話にムッ!として指をさし強めに反論する
「ええー嘘だー、さっき魔獣くらいであんなに大声出してビビッて倒れたのに」ドクンは無邪気にケラケラ笑う
「じゃあいいよ、私とちょっと戦ってみる?」挑戦的なシーコにドクンは「いや、いいってシーコが怪我するよ」肉を食べながら呆れた感じに言う
「ふぅん、逃げるんだー 私と戦うのがそんなに怖いんだー」また挑発的な表情で言いかたをするシーコ
「やってもいいけどシーコほんとに怪我しても知らねえぞ」少々本気で怒り気味の顔になったドクン
「いいわよ~私負けないし~」余裕で乗り気なシーコ「ホントにホントに怪我しても知らねえからな」イラだつドクン
ドクンとシーコがある程度距離をとって向かい合う 二人とも真剣な表情で周りの空気が静まり返る
「じゃあいくぞ!」 「フフン、きなさい!」と余裕なシーコ
(さぁ、私の魔法でどうやって可愛がってあげようかしら、まぁあんな子供相手に本気になるのもね、軽く痛めつけるくらいでいいかな)悪い顔でニヤリとするシーコ
次の瞬間シーコの視界からドクンの姿が消える「え?消えた!」その瞬間シーコの目の前にドクンが現れ「ハㇸ!?」意味がわからない言葉を発し目が飛び出そうなほど驚いているシーコの顔にパンチ
バンッ!!と強烈の音とともにシーコは10m以上吹っ飛んでしまった ズザザザザーーーー
ドクンとシーコの間は20mほどあった その距離をまばたきしてる間もなく一瞬で移動したのだからシーコが驚くのも無理はない ドクンの動きは常人ではありえない速さだったからだ
「え?」ドクンは驚いたような気まずい顔になり 急いでシーコにかけ寄る「おーい、大丈夫かー 死んでねえかー」
シーコは仰向けで中途半端な大の字の状態で口は半開きで泡を吹き目も白目で完全にのびていたが死んではいない様子