プロローグ:k(x), l(y), m, n <Hr/t>
「ねぇ、私を殺してくれる?」
それが、この場所で彼女が最初に発した言葉だった。
「それはプログラム? それとも……」
自分の意思と言いかけて、あり得ないと頭をふる。
それを察したように、彼女が頷いた気がした。かすかにショートヘアが揺れる。
「そう、これが私の意思」
そうして彼女はニッコリと笑ってみせるが、顔の半分が破壊され、真っ赤な液体を垂らすそれは、僕の知る彼女の笑顔ではなかった。
「君の意思なわけがない。そうだろう」
君の意思、そんなものはないのだ。僕はもう知っている。彼女のことについても、彼女がなぜここにいるのかも。
「ううん、今の私は違うの。信じて。愛してるなら、殺して」
そして彼女はもう一度、殺してと囁いた。
僕は握りしめたSslプラズマハンドガンを彼女へと向ける。
「どういうつもりだ」
彼女の笑顔は、半壊していても、不気味なほど綺麗だった。
「愛してるなら、殺して」
彼女の手が僕の手に触れる。彼女の心臓のあたりにプラズマハンドガンが接地する。
「函数fは十分滑らか」
彼女ほそう微笑んで、ぐっと顔を近づけた。
彼女の吐息が、僕の頬を撫でる。
どうしてこんなことになったのだろう。
僕はただ君が好きで、君も僕が好きで、ただそれだけで。それがずっと続いてくものだと思っていたのに。
それなのに、どうして。
僕はそっと引き金を引いた。