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氷海のマーマン  作者: ベスタ
19/19

18 終わらない明日

 ナラエゴニヤの首都、グルコースではタコス軍の兵士で大いに賑わっていた。

 それは自分たちの倍の戦力の兵士に勝ったことへの喜びであった。


 酒場は賑わい、多くの兵士は自分たちの武勇伝を語ったりしていた。

 それを盛り上げるように楽師たちは音楽を鳴らし、その日1日は祭り状態であった。


 一部のなくなった者たちを追悼する者たちも、やがて悲しみを乗り越えて立ち上がる日も来るだろう。

 そんな中で、テルは自分に割り当てられた部屋にこもっていた。


「テル、大丈夫?」


 フーカが扉をあけて入って来る。

 心配そうな顔が向けられて、テルはああ、と元気のない声でフーカを見るのであった。


「心配をかけて悪いな」

「私は大丈夫だよ。それよりも体調は平気?」


 テルは体調不良といって自分の部屋でこもっているのであった。

 そのため、いつもはテルの口の中にいるノエもフーカに任せている。


 実際はノエはテルよりも年上なのだが、体の大きさの問題で。


「元気になったら外を回ろうよ。アカネも探して一緒にさ」

「…………ああ。そうだな。一緒に、な」


 だがフーカも、そしてノエも知らない。


 アカネがおそらく死んでいることを。

 それもテルの指示した攻撃で。


 アカネの名前が出てテルの体はびくっとした。

 今はその名前を聞くことすら怖い。

 口からとっさに出たのは嘘だった。ひどい嘘だったとテル自身思っていた。


 そんな様子のテルを見て、フーカは今はそっとしておくことにしたのだろう。


「じゃあ、またね」


 そういって退室した。


 テルは未だにアカネの死を引きずっていた。いや、それだけではない。

 あれほど多くの死を作り上げたのだ。たったひとつの指示で。

 それがあまりにも怖くなってしまった。


 知らず知らずのうちに目から涙が流れていく。

 きっと泣いているのだろう。

 周りの海水に混じってしまいそれもよくはわからない。泣いている実感すらないまま、テルは泣いていた。



 悲しさと苦しさが渦巻いてテルは布団の中で丸くなる。

 その布団の中からテルの鼻水をすする音が響くのであった。




 窓の外から喜ぶ兵士たちの賑わう声が響いて来る。

 それは自分たちの倍の戦力の兵士に勝ったことへの喜びであった。


 酒場は賑わい、多くの兵士は自分たちの武勇伝を語ったりしていた。

 それを盛り上げるように楽師たちは音楽を鳴らし、祭り状態であった。


 そんな音を聞きながらテルは、まだあと2つの海域が残っていることを思い出していた。

 ハルカズムとマカレトロ。




 戦争はまだまだ続いていくのだ。

ここまででナラエゴニヤ海域でのテル達のお話は終わりとなります。

次はハルカズム海域でのお話となります。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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