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2. 魔物

のどかですよねぇ、夏って。ここは結構北のほうだし、冬はむちゃくちゃ寒いけど、その分、こんなステキな季節が味わえるんです……

見渡す限り緑の景色に、透き通る青い空と白い雲。もう、動きたくないです……

あたしは今、図書館の中庭の『ザ・誰も近づかない場所』で平和な時を過ごしています。3冊ほどの本を持って……

でも、こんな素晴らしい日に本なんて読んでたら、罪だなって思うんです……本気で気持ちい〜です……

はぁ。

本日の宿も確保したし、もう心配することなし!よし、寝よっかなぁ……

あたしは目をつぶる。

つぶっても、視界が赤くなるほどに強い太陽が気持ちいいです。ふー……

こういう平和な時になって、ふと思うことその1。

『みんなは今何してんのかなぁ。』

あたしの友達は、こっちの人だから(一回見ただけで術を完コピできるザ・魔物)、いろんな分野で活躍できる将来があって、高等部の進路選択に悩んでる人も多い。特にうちの場合、高等部2年からは、くっきり道が別れるからどういう道を選んでも平気なようにって、1年のときにいろいろ科目選択する子が多いんだよね(高等部の科目は、全部選択制)。まっ、あたしには、人間鑑定士としての道しか伸びてないから(他はお先真っ暗)、選択科目も限られたものだけでいいし(その中には、実際魔法界で生きていく上で必要最低限の魔法の個人レッスンも入っている……あんまり魔法ができないと、社会に出た後に、『これがかの有名な王立魔法学園の卒業生か』という汚名が学園にもついてしまうから)。でもやっぱり、普通の人は…

この時期、大変なんだろうなぁ。

こんなこと言うのは不謹慎だけど、やっぱそういう進路悩みとか経験したかったよ。青春の1ページとして……

はぁ……

なんかいつもより重いため息。

「ガサガサガサガサ……」

ええっ、なんか今物音したよね。しかもすっごく怪しげな……

ここは魔法界ですし、今あたしは『ザ・誰も近づかない場所』である中庭の隠れ森林(中庭に森があるんです……広いって言ったでしょ……)のすぐ側にいるんです。ちょっと歩けばすぐに、その怪しげな森に入れるんです……ってことは、

魔物と出会いますフラグ立ちまくりじゃないですか!

と簡単にみなさんは言うでしょう。ですが、あたしにとって魔物とは、ゼッタイニ、サケテトオルベキモノなんです。

なぜか?あたし、ヘタレ魔女なんです。この学園では幼稚園児でも攻略できるこいぬ程度の魔物でも(こいぬが魔物?と思われた方、魔法界ではこいぬもしゃべるし、攻撃してくるやつもいるので、一様魔物です)あたしは攻略できません……(あいつら、あたしが平凡魔法も使えないことを知っていて、おだててくるんです…バカにしてくるんです……)だから、こういう場合、静かに、身を潜め、誰にも(魔物も含め)見られないように、退散するのがあたしのモットーなんです……

ということで、さっそく実践です。

あたしは、本を右手に持って、ゆっくり立ちます。そして、はじめはゆっくり、ゆっくり……そして、だんだんと速く……

「きゃあああああああああ!」

走りだしたあたしの前に、変な小鳥みたいのが舞い降りました。

あたし、これでいて、魔物とか絶滅したらダメだよなって真剣に考えているやつなので、しっかり急ストップして、小鳥さんを守りました。が……

やっちゃったよ……お約束だよ……魔物だよ……

どうしよっか。どうしようもないな。どうしようもないけど、どうしようか。どうしようも……

あたしのアタマは今現在パニック状態でございます。

というところで、小鳥さんがこっちをむきました。そしてニターーっと笑って話し始めました。

「こんにちは。」

あれ?

「こんにちは。」

「こんにちは。」

小鳥さん、なんだか甲高い声で、「こんにちは。」を繰り返しまくってます……もしやコイツ……

「バカなの?」

おーっとミーナさん、そこ、ズバリ言ってしまいますか!とあたしは急に不安になります(ミーナはみなさんお忘れでしょうが、あたしの名前です)。

だって、もう一回見てみると、この小鳥さん、またニターーーっと笑ったんだもん!さすがに怖いよ。そして、小鳥さん、口を開けたかと思うと、

「バカなの?」とあの甲高い声で、でもあたしの口調を真似して言ってきたんです。

「えーっと……」

返事に困るあたしです。バカはバカなりにバカと言われるのがイヤなんです……はい……

「えーっと……」

そしたら、驚くことに、またあたしの真似をしてくるんです、この鳥!本気であたしを真似できると思ってんの、コイツ……ってことは、やることはひとつでしょ。

「なまむぎなまごめなまたまご!」とあたし。

「ナマムギナマゴメナマタマゴ!」と小鳥さん。

「となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ」とあたし。

「トナリノキャクハヨクカキクウキャクダ」と小鳥さん。

「とうきょうとっきょきょかきょく」とあたし。

「トウキョウトッキョキョカキョク」と小鳥さん。

はぁはぁはぁはぁ……ちょっと待って小鳥さん!あなた、結構プロなんじゃないの?

あたし、これでも早口言葉は強いんです(上の全部言えてたしね……)。でもこれは、ただただスパルタ教育の成果であって(自分で自分をスパルタに教育したことがあります……有り余るこの学園の生徒さんたちの才能に対抗するため、自分の特技を作ろうと思って)、元からできていたものではないんですよ!それをこの鳥さんは……

いやいや、コイツ、過去にめっちゃ練習してたりして?いやいや……

あり得るよな……

あたしが謎に浸っている間、小鳥さんは真剣にあたしを見つめていました。曇りないまなこで……

なんでこの子、喋んないんだろ……

もしや……

よく少女漫画にあるあれですか?好きな女の子には、素直になれなくて、逆にいじめてしまうという……

もしかして、小鳥さん、あたしのことが好きなんですか?[なにがどうしてそうなった?by筆者……すいません、耐えかねず、つい……]

そうですよね、絶対そうです![異種恋愛かよ……]

考えてみれば、思い当たることが次から次へと浮かんできます……[浮かぶのかよ、スゲーな!]

だって、初対面の時、ずっと「こんにちは。」って言い続けてたじゃん!それも多分、恥ずかしくてそうなっちゃったんだよ![……]

それに、毎回毎回、あたしのこと真似して……どんだけいじめたいんだよっつーの![…………]

考えれば考えるほどつじつまが合って来ます。だから多分、この子あたしにベタ惚れなんだ……[………………]

そう考えると、コイツのこと、めっちゃ愛しく思えてきたよ……[おい!]

あたしはかがんで小鳥さんと向き合った。

お互いを見つめる目に光が宿る。得体の知れない何かがあたしたちの体をすり抜けて、あたしたちはこの空間にいながら、別次元にいた。[異種恋愛という妄想の世界に浸ってしまったミーナ目線では、なんでもない風景がこう見えるようです……別次元ってなんだよ……]

「小鳥さん。」あたしは、優しく声をかけて、手を差し伸べた。

「コトリサン。」小鳥さんが言った。

小鳥さんはあたしも小鳥だと勘違いしているのね。[ミーナ流都合のいい解釈の仕方]かわいいったらありゃしない。

あたしは、手に乗った小鳥さんを、自分の目の高さまで持ってきて、こう言った。

「大好き。」

「ダイスキ。」

あたしは、顔を近づけて小鳥さんにキスをしようとした。[それはもうヤバいだろ!]

次の瞬間、痛っ!

小鳥さんが身をひるがえして森の方へ飛んで帰った。[お約束でよかったです……]

はぁ……キスは小鳥さんにはスペックが高すぎたか……[自分の身を守っただけだよ、小鳥さんは!]

あたしは、ちょっとしょんぼりして地面を見つめた。

てか、ちょっと待って自分!なにがどうしてそうなった?[よかったよ……やっと冷静になってくれたよ、ミーナちゃん]

多分、あたし、ありきたりな運命に飽き飽きしてたんだよね。そしたら、また妄想が暴走してしまって……気づけば……ってことだよね。なんか自分が悲しい人に思えてきました……[言い過ぎたかもしれない……]

ていうかあたし、そもそもあんな変な鳥に恋するって本気で考えたの?それっていくら異種恋愛でもあり得なくないか?[ありがとう、ミーナちゃん、冷静になってくれて……]

そう思うとあたしは今までの経緯がバカらしくなって[そりゃなるわな!]、恥ずかしくなって、早くその場から離れたくなりました。そして、そのまま走り出そうとしました。

その時です!あたし聞いたんです。森の方から、野太い笑い声に続いて、甲高い笑い声を!

待って待って待って待って!

あたし、やっと妄想の世界から帰ってきて、冷静になって思う。

これこそ、もっとすごい魔物現れますよフラグ立ちまくってる状態だって!


あああああああ!

筆者ツッコミはしないって決めてたのに!やってしまいました……

これからも顔を出してきそうな私のセンスのないツッコミは、[]の形で表しますので、ご了承ください。

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