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パンチラと神  作者: 橋沢高広
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【第40回】

 

 俺は自らの前にあったティーカップに手を伸ばし、もう冷めてしまった紅茶を一気に喉へと流し込む。

 それを見た胡桃くるみがソファテーブルの上で新しい紅茶を作り始めた。その間、東雲しののめ侑紀ゆうきも紅茶を飲み干す。

 少しして、胡桃が立ち上がり、各々のカップに紅茶を注いだ。一連の作業が終わり、ソファに座るのと同時に彼女は疑問を口にした。

「ご主人様は、どうして私と『彼女』との関係を『友達』だと思ったのですか?」

 俺は、その問いに答えず、逆に聞き返す。

「本題からは離れるが、まず、前提となる話をしたい。少しの間、それに付き合って貰えないか?」

 その言葉に胡桃は黙って頷く。それを確認してから、俺は声を出す。


「他人の趣味に関して、〈とやかく〉言う気はないが、胡桃のプライベートには驚かされ続けた。

 まず、普段着として着ているメイド服だ。深夜に放送されているアニメで見た様な少し派手なメイド服を着ているし、胡桃は自分で服が作れるという事だから、それはオリジナルだと思うが、そのメイド服を着た生活を送り続けるのは正直に言って、『どうなのかなぁ……』と思っている。

 しかも、胡桃は自らの希望で俺を『ご主人様』と呼ぶ。

『俺、胡桃の雇い主じゃないぞ!』と考えてもいるが、白状してしまえば、そう呼ばれる事に対して、性的な意味を含まない軽い興奮を覚えているのも確かだ。

 ついでだから言ってしまうと、こういうシチュエーションで女子と接したいと考えている男共は多い筈。だから、『メイド喫茶』という商売が成立するのだろうが、ここでは、お金を払わず、それが体験出来る。しかも、胡桃は、かなり可愛い女子だ。背が低いから、上目遣いになってしまうのだが、それが男心をくすぐる。メイドに興味がない俺でさえ、こんな状況だ。これが好きな連中なら、どうなって、しまうのか……。

 余談ついでに、もう一つ話すと、俺は東雲と侑紀が関係した処でクラスの男子から、『丁寧な言葉による優しい暴力』を受けた経験がある。その時、胡桃のプライベートが知られていない事に安堵していたんだ。例え一時ひとときであっても、胡桃から、『ご主人様』と呼ばれているのを知られたら、俺は何をされるか見当が付かない状況に追い込まれただろう……」


 俺は思わず、溜息を漏らしてから、続きを話した。


「さて、ここからが本題だ。今も言った様に胡桃のプライベートには驚かされた半面、これは本人の趣味だから、口出しする気は毛頭ない。まぁ、本音を言えば、『悪くはない』と思っているが……。

 それは、それとして、ここで注目したいのが、胡桃と関係を持った神は、この生活を『容認』しているという点だ。はたから見れば『妙な日常』の筈だが、これを神が受け入れているのは、胡桃のプライベートを『大切にしている証拠』と俺は捉えた。

 人間が『付き合う』際には、どうしても、そこに利害関係が発生する。それは金銭的な意味だけではなく、思想、信条、趣味という点にも及ぶ。例え友達……、恋人や、夫婦という次元になると、俺も解らんが、友達という関係でも、その利害関係は存在する一方、『友達だから』という思いがある為、容認出来る範囲なら、それを許そうともする筈だ。つまり、神として、常識外れとも言える胡桃のプライベートを認めているのは『友達という意識』が強いのでは、ないかと推測した。

 その証拠として、神が胡桃に『悪さ』をしていない点にも注目したんだ。

 余り言いたくないが、神は人を殺せる能力すらも持っている。その様な強力な〈力〉を使えば、胡桃を強制的に〈従わせる〉事も可能だろう。しかし、神は、それをしていない。

 更に加えるのなら、胡桃と友人関係を築いている東雲や侑紀に対しても、不利益となる行為をしていないのは、『東雲とも、侑紀とも、友達になりたい……、だって、二人は胡桃の友達だもの……』という意識が強いのでは、ないかと考えたんだ。

 その半面、神自身が東雲や侑紀……、これは俺も含まれると思うが、これらの人間と関わりを持ちたいと考えた時に、何だかの『強力な理由付け』が必要となった。何しろ神は『意識体』なのだから……。

 そこで、それらしい話を〈でっち上げ〉、神は胡桃の友人に近付こうとする。その話が『神によるゲーム』だ。しかも、東雲にも、侑紀にも『神が付いている』という設定にしたのだが、そこには矛盾が多過ぎた。その点に関して色々と考えている内に俺は『神は友達を欲している』という仮説を導き出し、それを口にした。

 正直に言えば、この件に関して、全く自信はなかったが……」

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