【第4回】
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俺は、この町の土地勘が全く、なかったが、東雲が描いてくれた簡易的な地図のお陰もあり、その家は直ぐに見付かった。ごく普通の一軒家である。
「うわー、久し振り、勇ちゃん、こんなに大きくなったんだ!」と、俺は東雲の母親から熱烈大歓迎を〈玄関先〉で受けた。その玄関で俺と彼女の母親は十五分程、立ち話をする。
(何故、ここで立ち話?)という疑問も当然の如く湧いた。玄関の扉は閉められていたものの、母親は俺を一向に室内へ迎え入れ様とはしない。しかも、この時、東雲自身も玄関にいるのだ。
(何故?)という疑問が頂点に達した時、東雲が声を上げた。
「ねぇ、お母さん、もう私の部屋に行っても、いいでしょう?」
一瞬、(何、言ってんだ、こいつは?)と思ったが、母親は、「そうね」と告げ、「勇ちゃんなら、まぁ、いいか」と、意味深長な薄笑いを浮かべる。
東雲が、「じゃぁ、こっちに来て」と言いつつ、玄関から出る様、俺を促した。
(どうなってんだ?)という疑問を抱きながら、俺は彼女の後を追う。
玄関脇の細い通路を裏側へ向かうと、そこには大きな庭があった。駐車場に例えると、楽に五十台は停められる広さがあるだろう。中央部には池があり、しかも、そこには橋も架かっている。
(家の裏側、こんな感じだったんだ……)と俺は驚きを隠す事が出来ない。だが、本当の驚きは、これからだった。
庭の片隅に一部二階建ての建物が立っている。一見して「離れ」と判るものだった。正に「長方形」という建物の屋上に、「正方形」の部屋があるという形だ。その二階部分には窓もあるから、人が住める作りなのは間違いない。
俺は、その離れに招き入れられた。
畳にして二十畳程だろうか。室内だけを見れば、高級なワンルームマンションの様である。部屋の片隅には小さなキッチンも併設されていた。
室内に置かれた調度品は少ない。少し大きめの勉強机と木製の本棚が二架。その横に二十四インチだと思われるテレビがあり、部屋の中央部には、かなり立派なソファセットが置かれている。
(まさか、これが東雲の部屋?)
そう考えていると、彼女は、「さあ、上がって」と言い、自らは玄関で靴を脱ぎ、さっさとソファへと向かった。俺も、それに倣い、室内を見渡しながら、ソファへと歩みを進める。
この建物、庭に面した部分は全面がガラス戸になっており、室内は電気を点けなくても非常に明るかった。
「凄い部屋だな……」
東雲の正面に座り、俺が、そう呟くと、彼女が応じた。
「お父さん、事業で成功したんだ。それで、この家を買ったの。表は一般的な住宅だけど、裏側は凄いでしょう。私も、この家を初めて見た時、興奮しちゃったんだから!」
そう言いながら、スマホを取り出した彼女に対して、俺は〈目のやり場〉に困っていた。
上半身は、ごく普通のセーター姿であったが、着用していたスカートの丈が短いのだ。しかも、フレアタイプを履いている。更に、ソファテーブルの天板はガラス製。彼女の下着が「見えそうで、見えない」という状況であった。
(視線を外さなければ……)と思いつつ、それが出来ない男の悲しい性。しかし、事態は、こんな甘いものでは済まない。
彼女はスマホを簡単に操作した後、「ねぇ、勇介は紅茶、好き?」と尋ねた。
「嫌いじゃないが、はっきり言って、味の違いは判らん。中学の時、ペットボトルの紅茶で飲み比べをした事があるのだが……」と言った処で俺の言葉が止まる。
部屋の片隅にあったドアが開き、メイド服姿の女性が現れたからだ。いや、正確に言えば、「メイド風コスプレ衣装」と言った方が正確な出で立ちである。
(深夜に放送されているテレビアニメで見た事があるぞ、この様なメイド服……)
必要以上に大きな胸のリボン。〈ミニ〉ではないが、膝が常に見えている丈のスカート。洋服の生地は暗めだが、光沢がある青がベースとなっている。
しかも、更なる衝撃が俺を襲った。