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パンチラと神  作者: 橋沢高広
35/44

【第35回】

 俺は話を続けた。


「しかし、生物兵器にしろ、化学兵器にしろ、神が本気で人類滅亡を目論んだのなら、その開発が出来る人間をコントロールし、それらの兵器を完成させる努力を惜しまない筈だ。

 生物兵器に言及すると、死亡率が高く、感染率の高い細菌やウィルスの開発に成功すれば、今直ぐにでも世界的に流行させる……、いわゆる『パンデミック』を起こせるだろう。

 化学兵器に関しては、実際の戦争で使われたという指摘もある。それならば、その化学兵器を大々的に使用すれば……、それでも『人類滅亡』という事態には至らないと考えられるが、数万人……、いや、数千万人という単位での大量殺人が可能かも知れない。だが、実際には、その様な規模で化学兵器は使用されていない」

「そうなると、少し変ね?」と、侑紀ゆうきが口を挟む。

「何故、神は、それを、しなかったんだろう?」

 その問いに俺は答えた。

「ここで神が自らに課した、もう一つのルールが登場する。それが『知的生命体が考えている内容を神にフィードバックさせて、その事象を作る』というものだ。その一方、侑紀は人類滅亡の手段として『全面核戦争』を挙げたが、その際、『一つしか考えられなかった』とも言った。つまり、神は侑紀から『核兵器の使用』というアイディアしか得られなかった事を意味する」

「そうなると、神は人類滅亡の方法として私が提示した『全面核戦争』しか選べなかったのと同時に『知的生命体以外、殺しては、ならぬ』というルールも存在したから結局、何も出来なかったという解釈でいいの?」

 侑紀の言葉に俺は反論した。

「『破滅担当の神』に関係したのが侑紀だけなら、その解釈は成立する。しかし、侑紀が神と関係を持ったのは中学二年の時だ。東雲しののめの話によると、神は『ヒト属』が、この世に誕生した時から地球に関与している。そうなると、破滅が関係する神と接触している人間が、侑紀だけとは考えられない。ここで、もう一つ加えるのなら、神は侑紀が関係する以前の人間から得た情報を持っていると考えるのが妥当だろう。その中に、生物兵器や化学兵器という情報が含まれていても不思議ではない」

「そうなると……」と、口を挟んだのは東雲である。

「私、『神には人類を破滅させる気がない』という気すら、しているんだけど……」

 俺は、その顔に冷笑を湛えながら、言い放つ。

「その通りだよ。東雲」

 同時に東雲と侑紀が、「えっ?」と声を上げた。

「さて、ここからが核心部分となる」

 俺は、そう告げながら、一度、胡桃くるみの顔を見た。そこには何の表情も浮かんでいない。

 続いて、その視線を東雲へと向ける。彼女は相変らず、クッションを抱き、その両足をソファの上に乗せたままだ。短い制服のスカートからは時折、そのパンツが見える。しかし、俺の視線は釘付けに、ならなかった。

(神は早速さっそく、動いたな……)と考えつつ、続きを話す。

「東雲は知的生命体に神が関与する事を『ゲーム』と言った。そして、神の立場を説明した際に『プレイヤー』という言葉を使っている。俺は、この話を聞いて『地球は神が楽しむ〈生きたボードゲーム〉』という認識を持ち、それを基準にして、妄想を始めたんだ。しかし、その過程で数々の矛盾点に気付く。その最たるものが、地球に関して『生存担当の神』が〈いない〉という点だった。例外もあるが、『ゲーム』とは、二人、もしくは、二チームが対戦する形で行われる。その際、公平さを保つ為に『審判』が置かれる場合も少なくはない。しかし、東雲による『神の話』では『ゲーム』と称しながら、対戦相手が〈いない〉んだ。それにも関わらず、『審判』が存在する。これって、異常な状態と言えよう」

「確かに、そうだわ!」と、侑紀が口を挟んだ。俺は話を進める。

「『破滅担当』がいる半面、『生存担当』がいない理由も東雲は話したが、そこにも矛盾点があると俺は考えた。東雲の話だと、破壊担当の神は『手違い』によって、ホモ・サピエンス以外を絶滅させ、それが要因となり、『破滅担当の神』は実質上、左遷され、プレイヤーは一人となってしまう。しかも、後になって、『ヒト』の行動が関係し、残った神を『生存担当』から『破滅担当』へと、その立場が変更される。単純に『ゲーム』という視点だけで考えれば、『プレイヤーの立場変更』は、あり得るだろう。しかし、それならば、『変則的』と言える『一人プレイヤー』を続けるのではなく、本来の『二人でプレイ』にすべきだ。それを行わなかった事に俺は強烈な違和感を持つ」

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