【第33回】
俺は、ここで疑問を呈した。
「この一件を通して、妙な事に気付く。それは、神が俺個人に対して、かなりの影響を与えられる存在なのは間違いない。半面、神は、この地球に住む全ての『ヒト』を観察し、時には『手が出せる』存在でもあるのだが、全人類を相手にしつつも、俺個人に対して、相当な細かい心理操作を行っているのは返って不自然じゃないのか?」
「確かに……」と呟いたのは、侑紀であるが、その後に続く言葉は発しなかった。
東雲も何か考え始めたのだろう。ソファの脇にあった、クッションを抱き、両足をソファの上に乗せる。制服の短いスカートから彼女のパンツが一瞬だけ見えた。俺は彼女のスカートに、その視線が釘附けとなる。同時に、「あっ!」と、声を上げていた。
「どうしたの?」という、東雲の声に俺は興奮しつつ、即応した。
「申し訳ない。東雲のパンツ、見せてくれないか? その理由は後で話す。そこに立って、スカートを捲り上げて欲しいんだ」
「急に何を言い出すの?」と言った、侑紀の顔には明らかな疑念の表情が浮かぶ。
胡桃は黙ったままだが、その顔は紅潮し始めていた。
俺は、その視線を東雲の瞳に向け、「頼む」とだけ告げる。
「真剣な表情ね」と、東雲は声を発し、その場に立ち、身体の正面を俺へと向け、スカートを捲った。
かなりセクシーな下着を俺の目が捉える。それを見ていたのは、時間的に二十秒程だろう。
「ありがとう。もう充分だ」と声を出すと、東雲はスカートを戻し、そのままソファへ座った。
俺は東雲の顔を見たが、そこに羞恥の感情は現れていない。彼女にとって、俺にパンツを見せるのは「羞恥にも値しない」事なのだろう。
東雲は以前、「勇介が私を『おかず』にして、エロいシーンを展開するのは許せるの」と断言している。だが、「男の前でスカートを捲り、下着を見せる」というのは、ある意味、異常な行動であるのも確かだ。その点に侑紀は疑問を持ったらしい。
「何故、東雲に、こんな事をさせたの?」と言った侑紀の声には鋭さが含まれていた。それも当然だ。俺は、その問いに答える。
「実は、今、東雲がソファに両足を乗せた時、パンツが少し見えたんだ。その瞬間、俺は、その光景に目を奪われる。はっきりと言ってしまえば、この様な場面は過去にも起きていたが、その都度、俺は東雲の短いスカートと、そこから見え隠れするパンツが気になっていたのも事実だ。だが、これって、変じゃないか? 俺は東雲の下着姿を見ても興奮しないし、妄想の中だったが、裸にもした。その時も興奮を覚えなかった話は先程した通りだ。それならば、東雲のスカートからパンツが見えても気にならない筈。でも、現実は違った……」
ここで東雲が納得の表情を浮かべ、俺の話を引き継ぐ。
「勇介は私のスカートとパンツに目を奪われる事態が発生した。なら、今、この時、私の下着が完全に見える状態で凝視したら、『どうなるのだろう?』と考え、それを要求した訳ね」
「その通りだ」
俺の返答に侑紀が、「で、その結果は?」と、早口で尋ねる。
「特段の感想は、ない」
「それも、変よね……」と、侑紀が呟いた。俺は、それを無視して、言葉を発する。
「東雲のパンツを見ながら考えたのだが、神は、俺と東雲……、これは侑紀にも言える筈だが、『心理的な壁』を作り、『エロい感情』が発生しない様、手を打ったにも関わらず、それは完璧なものでは、なかったと結論付ける。端的に言えば、スカートからパンツが見え隠れする様な『中途半端なエロ』には対応して、いなかったんだ。しかし、この一件を通して、神は何だかの対応をする……、つまり、チラリズムの様な『軽いエロ』に対しても、俺が反応しない様にする筈だ」
「これって、神の対応が『完璧ではない』という証拠だとも言えそうね……」と、侑紀は言いながら、納得の表情を浮かべた。ここで東雲が口を挟む。
「ねぇ、私、頭の中が混乱し始めたんだけど……」
俺は、その言葉に応じた。
「端的に言ってしまえば、神自身も俺の扱いに『困っている状況』なのは、間違いないだろう。それは、神の側としても、想定外の事態が発生していると俺は考えているんだ」




