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パンチラと神  作者: 橋沢高広
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【第23回】


 侑紀ゆうきの言葉が続いている。


「この時、私が経験した事の全てを東雲しののめに話した。そうしたら、彼女が、こう言ったの。

『私は侑紀に苦痛を一切、与えず、殺す事が出来るわ。それが望みなら、叶えてあげる。でも、それ程までの苦痛を与えられたのなら、死ぬなんて、もったいないよ。その苦しみを人類に与えてみない? 『ヒト』の中には、殺しても問題がない連中が数多く、いるんだ。どうせ死ぬのなら、そいつらを殺してから、死んだ方が〈面白い〉と思うんだけどな……』って。

 そう語る東雲の瞳は異常な輝きを放っていたわ。同時に、『この、何、言っているの!』って、背筋が凍り付く様な感覚も覚える。半面、『それ、面白そう』と、考え始めた自分がいる事にも気付いていた。

 その話をした翌日から、私、彼女の家に呼ばれる様になったんだ。そこにいるのは、胡桃くるみ

 東雲の部屋……、はっきり言ってしまえば、この〈離れ〉に住んでいる東雲と胡桃の関係には驚かされたけど、それは、その時の私にとって、些細な出来事に過ぎなかったのも事実。そして、胡桃に手を握られる日々を過ごした。その意味を私は知らされていない。

 この様な日々が六日か、七日続いた後だった。東雲から、『合格』と言われたんだ。そして、『神の話』を聞かされる。当然の事ながら、何の話か、全く理解出来なかった。でも、その内容に私の心が揺さ振られる。

『人類を破滅させてみない?』

 死を選ぼうとしていた私にとって、その言葉は余りにも〈魅力的〉だった。

 その一方、私自身、気付いていたんだよね。

(その理由が何であれ、自らの意思で死を選んだ時、その本意を理解してくれる人は、おそらく、いないだろう……)って。

(私が死んで泣いてくれる人は、どれくらい、いるのだろう?)と、考えた事もあった。冷静に、その結果を分析した際、私は絶望感に襲われたわ。

(その場では涙を流す人がいても、三年もすれば、私の事は忘れ去られ、誰の記憶にも残って、いないかも……)

 私、そう思った瞬間、小学校時代の同級生を思い出していたんだ。その子、男子だったんだけど、『急性〈なんとか〉症』という病気で亡くなっているの。私、彼の葬儀に参列したんだけど、思いっきり泣いたわ。普段から気に掛けていた人でも、なかったのに、本当に悲しかった……。同級生が『死んだ事実』に衝撃を受けながら……。

 でも、半年もしない内に彼の事は忘れたのよ。

 それから一年後、担任の先生から、『お友達が亡くなって一年が経ちました』と言われたんだ。その時、私の脳裏に浮かんだ言葉が、(もう、そんなに、なるんだ……)だった。お葬式の時に泣いた彼に対して、自分でも驚く程、冷静に、そう考えていたんだよね。同時に背筋が冷たくなる。

(人は死んだら、『過去の存在』になってしまう! そして、そう遠くない内に忘れ去られるんだ! だから、絶対に死んでは、いけない!)と、痛感した瞬間でもあるわ。その上、私の場合、(生きていれば、『何か特別な事』が出来るらしい!)と、東雲の話から感じていた為、余計に、そう思ったのかも知れない。

 私を襲った忌まわしい事件から二ヶ月後の十二月。伯母の再婚相手……、『そいつ』が死ぬ。自殺だった。

 東雲から『合格』と言われた翌日以降、そいつが絡むトラブルが多発する様になったの。運転していた自分の車を自宅の車庫に入れ様とした時、壁にぶつけて、家の一部を壊した事もあった。

 その詳細は知らないけど、会社でもミスを連続して起こしたらしいわ。その顔は、日に日に憔悴して行く。

『神や仏なんて、いる筈がない』と豪語していた、そいつが、『何かに取り憑かれたかも知れない』と言い出し、お寺や神社に行き、お祓いを受ける事態にまで発展したんだけど、その後もトラブルが続いたんだ。そして、精神的に追い詰められ、自らの意思で死を選ぶ。

 その葬儀が終わった日の夜、私は、ある夢を見た。白い光が目の前に現れ、そこから声が聞こえたの。そして、自らを『神』と名乗り、話を始めたんだ。

 その内容は、『お前が望んだ通り、私は、お前を辱しめた男を殺した』の一言に要約出来る。そう、私、そいつの死を心から望んだの。それを神が、『実行した』と言い放ったんだ。

 私、この時、一切の罪悪感を覚えていない。いや、(当然のむくいだわ!)と思った程……。同時に、(私、『神』を名乗る『悪魔』に魂を売ったな……)と痛感した。

 その日から、『破滅』を担当する神と私はコンタクトが取れる様になり、以後、事あるごとに、(この地球に住む〈ヒト〉を滅亡させるには、どうしたら良いか?)と、考える生活を始める……」

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