【第21回】
東雲の話が続いている。
「その一つとして、ゲームに『審判』を付ける事が決まったんだ。つまり、知的生命体の『生存』、又は、『破滅』を担当する神が実行しようとしている『何か』……、これを『方策』と、神は呼ぶらしいけど、これが妥当なものか、どうかを判定する審判担当の神を付けないと、このゲームが出来ない様にしたの。そして、この方策が審判によって承認されると、『事象』という呼称に変化し、実際に知的生命体に対して実行されるんだ。
次に、神によって与えられる事象に関して、対象となった生命体が持つ知識や武器等の範疇を超えない様、ゲームの対象となった知的生命体が考えている内容を神にフィードバックさせて、事象を作るというルールも作られたんだって。
最後に、このゲームの対象となるのは知的生命体だけ。その星に住む他の生命体に対して、『神は直接、手を出さない』というルールも付け加えられた。
そして、このゲームは三人……、この呼び方が適切か、どうかは知らないけど、三人の神々によって『プレイ』される事になったんだ」
東雲は、胡桃が入れた紅茶を飲み干してから、続きを話した。
「私達が住む地球は、このルールが出来てから、『ヒト属』という知的生命体が生まれたんだって。これには、人間の他、ネアンデルタール人の様な、もう絶滅した知的生命体も含まれているの。
ところが、ある時、破滅を担当していた神が地球上から、ホモ・サピエンス……、つまり、この地球に現存する人類である『ヒト』以外を絶滅させる方策を考え出し、これが審判担当の神によって承認されてしまう。その結果、地球上には知的生命体として、『ヒト』しか存在しなくなったという話。
この際、地球で『破滅』を担当していた神はゲームに参加出来なくなり、『生存』と『審判』を担当する神しか関与しなくなる。
その一方、ヒトは、その破壊願望をフルに発揮し、地球環境そのものにも手を出し始めてしまった。しかし、その当時の状況として、ヒトが破滅する要素を神は見出せなかったらしいの。つまり、『神が手を出さなければ、ヒトは生存し続けるだろう』と考え始め、その結果、『この星に関しては、生存担当は必要ない』と判断され、それまで『生存』を担当していた神が『破滅』を担当する様になったらしいわ。だから、地球に関して、このゲームのプレイヤーは一人。
当然、地球のヒトは直ぐに絶滅する筈だった。何しろ、このゲームには審判は、いるものの、破壊を担当する神しか関与していないから……。
ところが、ヒトはヒトに対して、殺人を繰り返す一方、ヒトがヒトを助け、繁栄を築いてしまう。もちろん、その繁栄はヒトが平等に享受出来るものじゃ、なかったけど……。
結局、神が想定していたのと違う状況が生じ、ヒトは生態系の頂点として、この地球に君臨してしまった。
ここで神は、こう考えたの。
『『破滅』に重点を置いた為、ヒトは、それに対抗する術を習得したのかも知れない。それならば、本来の通り『生存』を担当する神を再度、選び、このゲームを続けたら、どうだ?』って……」
ここで東雲の口が止まった。
正直に言ってしまえば、俺は、この話を全て理解した訳ではない。
(よく、解らん)というのが本音である。だが、東雲が言う神という存在を肯定するのなら、その対象となった知的生命体が住む星は「神が楽しむ『生きたボードゲーム』」とも言えるだろう。端的に言ってしまえば、「生存」と「破滅」とを担当する二人のプレイヤーによって、弄ばれている状況なのだ。
俺は夏休みに入ってから、「神の立場」について考える様になる。その際、その具体例として思い付いたのが「蟻の巣」だった。
(『生存の神』は、蟻の天敵……、例えば、蜘蛛がいない場所に巣を作らせる様に仕向け、『破滅の神』は、雨水等が入り難くしてある巣の出入口から、天変地異と称して、大量の水を流し込む様なものか……)と、その蟻の巣を例に、そう考えたのだが、おそらく、的を射たものであろう。所詮、神にしてみれば、地球上に住む人間はゲームを楽しむ対象でしかないのだ。
俺は怒りを覚えた半面、自分の中で〈ぼんやり〉としていた〈何か〉が纏まり始めたのを感じる。




