【第20回】
沈黙が東雲の部屋を支配する。
しばらくして、東雲は俺の方を向き、その状態を破った。しかし、それは呟く様な小さな声……、『独り言』と呼んで構わないものである。
「私、勇介の前で下着姿になる事を決めた時、あんたとのファーストキスを思い出していたの。正直に言って、懐かしかった……。もちろん、そこには恋愛感情……、まぁ、当時、その様な感情を持つ年頃では、なかったけど、(勇介と、もっと仲良しに、なれた!)とは思ったんだよね。そして、(今、あんたとキス出来るかな?)って、軽い気持ちで考えてみたんだ。そうしたら、それを強烈に拒否しようとした〈何か〉……、おそらく神だと思うけど、その声が聞こえたの。しかも、『もう、保育園児じゃないんだし、高校生なんだから!』と、私を一喝したんだ。最初は、その事に戸惑いを覚えたけど、(確かに、異性を意識する年頃なんだよね……)と、思う様になった……」
そう言って、東雲は俺から視線を外し、天井を向きながら、軽い溜息を付く。
俺は、この時、確信する。
(神は自らの力を使い、東雲や、侑紀に対しても、俺を恋愛対象……、つまり、『異性として意識させない』という心理操作をしているのだろう……)と。
同時に、俺は神なる存在が既に「俺を利用するつもり」である事も確信した。そうでなければ、俺に『心理的な壁』を作る必要はない筈だ。
(そろそろ、話の核心に触れる時が来た様だな……)と考え、その点を東雲に促す。
「『神の話』、聞こうじゃないか」と。
それに東雲は応じた。
「繰り返しになる部分もあるけど、最初から説明するね」
俺は黙ったまま一度だけ、大きく頷く。この後、俺は東雲の話が終わるまで、口を開く気は、なかった。
※
「私が中学二年になって直ぐの頃だったわ。夢の中に白い光が頻繁に現れる様になり、最後には、その光が『神』と名乗り始めたのよ。しかも、『私は宗教が関与する処の神ではない』と断言した。
私自身、最初は〈何が何だか〉解らなかったんだけど、ほぼ毎日、夢の中に現れる神は私に〈何だかの説明〉をし続けたんだ。
その中に宇宙の話も含まれていたの。しかも、『生命が存在する星』は、かなり、多いんだって。その上、『知的生命体』……、神は、そう表現するだけで詳しい説明はしなかったけど、何しろ、その様な生命体がいる星も数多く存在するという。
その一方、知的生命体がいる星と言っても、地球の様に水が〈ある〉星もあれば、〈ない〉星もあり、その星の環境に合った知的生命体である為、それは〈人間型〉とは限らないという話も聞かされたわ。
神によると、知的生命体が持つ特徴として、『破壊願望』があるんだって。これは、物理的に『物を壊す』という事以外に『現状打破』という意味も含まれているの。神は、これを『知的好奇心』と呼んだ。
一つ例を挙げると、それまで〈常識〉だと思われた〈事実〉に対して、疑念を持ち、それを〈破壊〉し、新たな常識を作り出して行くらしいわ。そして、その常識に対しても、同じ事を繰り返し、生命体としての『知的能力』を高めるらしいの。
神という存在……、これに関しては、神自身、何も言及しなかったけど、何しろ神は、この知的生命体を『観察』出来る立場にいて、特に『破壊願望』という点に着目し、それを観察していたんだって。
当初、神は知的生命体を『観察するだけの存在』に過ぎなかった。でも、ある時、そこに『関与』出来る事を知ったんだ。これが切っ掛けとなって、『神の関与』が始まったの。
それは、知的生命体に対して、『より長く生存させる』側と『破滅させる』側とに別れ、対象となった生命体を実際に使った『ゲーム』と言えるものだった。
最初はルールなんてものが、なかったから、神が〈勝手気まま〉に手を出していたらしいの。結果として、その生命体が、まだ持っていなかった兵器を神が渡し、一瞬にして、知的生命体が消滅してしまったり、反対に、不老不死に近い力を与えてしまった為、その星での生態系が狂ってしまい、他の生命が絶滅したりする事態に至ったと聞かされたわ。
さすがに神としても、「これはマズイ」と考え、知的生命体に対して、『ゲーム』を行う際のルールが策定されたの」




