【第18回】
「『事情が違う』って?」
それまで項垂れていた東雲が口を挟む。侑紀は黙っていたが、その瞳は、(早く続きを話せ!)と催促していた。
「まだ、『神の話』に関して、その本質には触れていないが、東雲と侑紀が下着姿になった、あの時、神の力が関与していたのなら、その影響があったんじゃ、ないかと考えている。これは『結果として』という事になるが、『例の夢』で俺が最も興味を〈そそられた〉のは、東雲が語った『神の話』なんだ。つまり、二人の下着姿は単なる『オプション』に過ぎず、それを俺としても本能的に察知していたんじゃ、ないか……」
ここで再度、東雲が俺の言葉を遮った。
「じゃぁ、私達の下着姿は意味がなかったと?」
「『私達の下着姿』って、言われてしまうと、返答に困るが、お前がした『耳へのキス』が〈切っ掛け〉となり、『例の夢』に興味を持つ様になったのは間違いないだろう。だが、俺の見解として、その場面がなくても、毎日、『神の話』が出て来る夢を見続ければ、そちらに関心が向いたと推測している。だが、これって、よく考えてみれば、変な話なのも事実だ」
「『変な話』って、どういう意味?」と、口を挟んだのは侑紀である。
「俺は普段から『神の存在』を考えている様な人間じゃない。つまり、『神の話』を夢という形で見続けたとしても、関心を持つ筈がないと言えよう。半面、俺も男。ここにいる三人の女子に関して、その下着姿に興味を持たない方が異常だ。だが、今回は、その下着姿を〈追い遣る〉形で俺は『神の話』に喰い付く。俺自身、この事に対して、(何か変だ?)と疑問を持ち、その点に関して考えてみた。その結果、ある疑念が生じる」
俺は東雲の顔に視線を向け、続きを話した。
「お前とは幼馴染みだが、男と女という姓別の違いもあり、異性として意識しているのも確かだ。東雲のミニスカートから見え隠れするパンツに気が奪われるのも、その証拠だろう。だが、現状で、そこに恋愛感情はない。ただ、お前と一緒にいる事で妙な安心感を覚えているのも確かだ。苛めというレベルではないが、ここにいる女子三人が要因となり、クラスの男子から羨望と嫉妬の目付きで取り囲まれるという事態が生じても、俺は、この部屋へ来るのを止めなかった。その理由は二つあるのだが、その一つが、『東雲と一緒だと安心感が得られる』というものだ」
「私も、そうなのよねぇ……」と、東雲は呟き、そのまま言葉を続けた。
「さっきも言った通り、私、勇介に恋愛感情を持っていないわ。でも、あんたと一緒にいると、私も安心感を覚えるの。しかも、半端じゃないのよ、この感覚……。何故、そう思えるのか、自分でも解っていないけど……」
ここで侑紀が口を挟んだ。
「東雲って、勇介の前だと、本当に屈託のない微笑みを浮かべるのよね。私、東雲とは三年の付き合いがあるけど、それまでに見た事がない笑顔なの。これは、さっきも言ったけど、『東雲って、鍋島君の事が好きなのかな?』と、本気で思っていたんだから……。でも、どうして、お互いに『安心感を得られる存在』なのに恋愛感情に発展しないのかな?」
その問いに俺は応じる。
「東雲には悪いが……」と告げてから、「実は、東雲を『エロの対象』として妄想してみたんだ。ところが、妄想癖のある俺が『エロいシーン』になると、その思考が停止状態に陥る。一応、東雲の下着姿は見ている……、まぁ、この事実は今日、知ったのだが、その関係もあり、そのシーンまでは想像出来た。しかし、その先に進めないんだ。頭の中では一生懸命、その下着を脱がそうとするのだが、それと呼応して、(何故、俺は、こんな事を考えているんだろう?)という疑問が湧き、そこでエロという意味での興味が潰えてしまう……」
「それも、かなりショックだわ……」と、東雲は落胆の声を上げてから、そのまま話し始めた。
「私も正直に言えば、想像……、まぁ、妄想と言い換えても構わないけど、勇介が私を『おかず』にして、エロいシーンを展開するのは許せるの。それを実際にされたら、拒むけど……。でも、それさえも否定される存在だったなんて……」
「ちょっと待って!」と言葉を発したのは、侑紀であった。そこには明らかに驚きの感情が込められている。
「東雲、あなたは勇介に対して、そこまで許せるの? いくら妄想とは言え、エロの対象なのよ!」
「ところが……」
侑紀の問いに東雲は淡々と答え始めた。




