【第17回】
東雲の言葉を遮る形で侑紀が話し始めた。
「そう、勇介って、巨乳が駄目なんだ……。実を言うと私、自分自身の大きな胸って余り好きじゃない。私に、その気がなくても、その存在そのものが『男を誘っている象徴』って感じられるのよ。でも、勇介から、『はっきりと言ってしまえば、俺、〈巨乳〉が苦手なんだ……』と言われた時、それは、それでショックだった。しかも、更なる追い打ちを掛ける。ブラの件に関しては、『その点は、ほとんど気にしていない』という話だし、『その印象に残っているのは、右胸にあった〈ホクロ〉だけ』との言葉に私、一瞬、(胸よりもホクロの方が気になるの!)と自分の一部を否定された様な気になった程。何だかんだと言って、私、自分の胸に自信があったんだと、思い知らされたわ……」
俺の推論通り、侑紀は東雲の言葉に従い、下着姿……、しかも、本人が望まない、かなりセクシーな姿で俺の前に立った事は確定した。それは彼女にとって、「顔から火が出る」思いだった筈だ。
彼女が神の話をする際、短い、しかも、「これだけは、覚えておく様に……」などと、高飛車な言い方をしたのは、その〈恥ずかしさ〉が要因となり、必要最小限の言葉のみを発した結果だと理解する。
その為、夢の話になると、侑紀は、(自分の下着姿を俺が自然に思い出しているかも……)と考え、顔を紅潮させるのだと推測したが、それも的を射ていた様だ。もちろん、そう考えたからこそ俺は、わざと「下着姿」という話題を取り上げたのである。
俺の話を聞いた侑紀は、「何か、ショック……」と呟き続けていた。俺が巨乳……、それは侑紀を含めてであるが、〈全面否定〉する恰好となった為、彼女の中で何だかの変化が生じているのかも知れない。
(侑紀自身、自らの巨乳が、『余り好きじゃない』と言いつつも、強制的かも知れないが、セクシーなブラジャーを付けたのに、『興奮は覚えていない』と言われてしまったのだ。色々と腑に落ちない点が生じて当然だろう)と考え、しばらくの間、侑紀には声を掛けるのを止めようと思った時である。
その事を、まるで察知した様に東雲が俺に問い掛けた。
「例の夢……、本を正せば、それは現実だったんだけど、勇介が私達の下着姿に興味を示さなかった理由は何なの?」
(そんな事、言われても、知るか!)というのが本音である。しかし、俺自身、この件に関して、自分でも疑問に思い、その理由を探っていた。それを東雲に話す。
「あの夢で唯一、軽い興奮状態に陥ったのが、お前がした『耳へのキス』だ。これは素直に認めよう。だが、それ以外、俺を興奮させる要因はなかった。そういう意味に於いて東雲の〈戦略〉は失敗となった訳だが、実は、俺自身も『何か変だ』とは思っていたんだ」
「『何か変だ』って?」
そう口を挟んだ東雲の言葉に俺は答えた。
「俺が、この部屋に来た時、お前のスカートから見えるパンツが気になって仕方なかった。正直に言ってしまえば、(侑紀が座っている場所なら、パンツが見放題だ!)と思った事すらある。だが、夢の中……、これは現実だった訳だが、その時は、お前のパンツが丸見えだったし、ブラジャーも良く見えた。しかも、東雲が侑紀に強要したのと同様の相当、セクシーな下着姿だ。本来なら、『これはラッキー!』と思うのが当然だろう。しかし、俺には、そう感じられなかった。更に付け加えるのなら、お前の下着姿に関して、かなり印象が薄い。敢えて、その『印象の順番』……、ここでは『神の話』を無視するが、その順番は、『耳へのキス』、『侑紀の右胸にあるホクロ』、そこから『侑紀の胸』を思い出し、そこで登場するブラジャーが要因となって、『お前の下着姿』を想起するという感じだ」
「うっ、それは、かなりショック……」と言って、東雲は項垂れてしまう。一方、この話題に侑紀が喰い付いた。
「ねぇ、はっきりと聞きたいんだけど、勇介って、私や東雲の下着姿ぐらいじゃ、興奮しないって事?」
侑紀の言葉に、(もしかして、勇介は『女よりも男の方が好き』?)という意味が込められているのは直ぐに気付く。それを含めて、彼女の質問に応じた。
「俺は健全な男子だ。『男子に興味がある』という訳ではない。これも、はっきり言うが、今、東雲や、侑紀……、これは、胡桃もそうだが、『下着姿、見せてあげようか?』と告げられれば、二つ返事で『お願いします!』と、嬉々とした表情を浮かべ、頭を下げるだろう。だが、例の夢に関しては、事情が違う様な気がするんだ……」




