【第15回】
東雲は一瞬だったが、再び悪戯っぽさを含んだ微笑みを浮かべ、続きを話す。
「その後、下着姿になって、私が勇介の右側から近付き、『神の話』をしたの。そして、それが終わった後、今度は侑紀が下着姿になって、かなり短かったけど、勇介に話をした……」
(あの下着姿は現実! しかも、東雲は俺の耳にキスもしたし!)
次の瞬間、俺は自分の右耳に触れた東雲の柔らかい唇による感覚と、侑紀の右胸にあったホクロを鮮明に思い出す。それが切っ掛けとなって、まず、侑紀の胸を隠していた相当セクシーなブラジャーと、そこから溢れんばかりの状態となっていた彼女の胸を思い出し、続いて、東雲の下着姿も、それに続く。しかし、この状態を俺は冷静に捉えていた。
正直に言えば、現状で確認したい事が何点かあったが、それは口にせず、東雲の話を聞く。
(まずは、情報を収集するのが先だ!)と判断したからである。
「この後、私は〈神の力〉を借りて、この場で起きた事を〈夢〉という形で勇介に毎日、見せる様にした。はっきり言ってしまえば、同じ夢……、毎回、寸分違わぬ同じ夢を見させられるのは苦痛だと理解しているわ。でも、私達には、この方法しかなかったの……」
ここで東雲の口が止まる。そして、沈黙が彼女の部屋を支配した。
(あれ?『神の話』は、どうなったんだ?)と思いつつ、俺は周囲を見た。胡桃は真っ直ぐに俺を見ている。
一方、侑紀の視線は定まっておらず、俺の顔を中心には、していたが、目が泳いだ状態だった。しかも、その顔はかなり紅潮している。俺は瞬時に、(彼女、下着姿で俺の前に立った事を気にしているな……)と推測した。
同時に、(この件は早目に片付けた方が良い)と判断し、ここで口を開く。
「東雲の話を聞いていて、かなり気になった点がある。全裸ではないが、何故、俺の事を裸にした? そして、東雲と侑紀の二人は何故、下着姿になった? 東雲は、『これから起こる事を少しでも印象付け様としたからなんだ』と説明したが、その意図が今一つ理解出来ない」
その問いにも東雲が答える。
「『神の話』だけでは、興味を持って貰えないと考えたの。正直に言えば、『訳の解らない話』には違いないから……。一応、勇介が毎日、同じ夢を見続けたのも〈神の力〉が関与しているわ。でも、その〈力〉は絶対的なものでは、ない。だから、勇介が、例の夢に対して、関心を持って貰う様な方策を考えたって訳……」
「だが、どうして俺を裸にする必要があった?」
「内情を暴露すると、それは成り行き。勇介の関心を引く為、私が下着姿になるのは、早い段階で決めていたんだ。同時に、『もっと、インパクトがある〈何かが〉出来ないか?』と考えたの。その時、保育園時代のキスを思い出したのよ。例の〈かなり濃厚なキス〉を……。でも、さすがに今、あの様なキスは出来ない。私も、そんな年頃になっちゃったのよね……」
東雲は俺から視線を外し、天井を向きながら、軽い溜息を付く。その溜息の意味を俺は理解出来なかった。
彼女は、その目を再び俺へと向け、続きを話す。
「その一方、(耳なら、キスは出来る)って思ったの。だから、それを実行したんだけど、その際、もっと私の事を印象付ける方策として思い付いたのが、『勇介の裸』だったんだ。私の下着姿を見て、耳にキスされた時、自分も裸だったら、もっと印象に残るでしょう!」
「まぁ、それは、そうだが……」と、呟きながら、(こいつ、俺のトランクスを本気で脱がす気だったな!)と痛感した。同時に、(東雲はパンツだけではなく、ブラを男に見せても平気なのか?)という疑問も浮かぶ。
俺は、それを口にしなかったが、その答えを東雲が自らの意思で話し始めた。
「私って、ミニスカートが好きだから、パンツが見える事に対して、余り抵抗がないの。まぁ、故意にスカート捲りをされたら、怒るけどね。でも、ブラは別。これは普段、直接、見える様なものでは、ないから……。でも、(勇介になら見られても、いいか!)って思ったんだ……。そんな、あんただけど、裸を見られるのは抵抗がある。一応、今、勇介に対して与えられる最大限のインパクト……、これには〈エロ〉という意味合いが多分に含まれるけど、それが〈下着姿〉だったんだ……」




