【第13回】
東雲と、侑紀、そして、胡桃の顔までも俺の言葉によって蒼褪める。
(この一件、胡桃も関係していたか……)と考えつつ、俺の推論に間違えが、なかった事を確信した。血の気が引いた三人の顔が、その証拠である。
「さて……」と告げてから、俺は彼女達に話し続けた。
「俺には妄想癖がある。その癖を〈活かす〉という訳ではないが、この夢に対して、色々と想像を働かせてみた。そうこうしている内に俺は、『この夢で語られた神の話が本当なら、かなり面白い事になりそうだ』とすら考え始める。第一、同じ夢……、しかも、寸分違わぬ同じ夢を一ヶ月近くも見続けるのは、かなり不自然と言えよう。そこには超常的な〈何か〉が介在しなければ発生しない筈だ。ここに東雲が言う『神』が関与しているとすれば、この点に関する疑問が解ける。そこで質問しよう。この夢に君達が関与しているのは間違いない筈だ。何故、この様な夢を俺に見せたのか、その説明をして貰いたい」
冷静に放たれた俺の言葉に、三人は驚きの表情を浮かべた。
「そこまで〈読まれて〉いたのね……」と、侑紀が呟く。だが、その顔には血の気が戻り、薄笑いさえ、浮かべていた。それは、東雲も一緒である。一方、胡桃だけは、まだ蒼褪めたままであった。
ここで口を開いたのは、東雲である。
「本来なら、順番に話さなければ、ならないんだけど、色々な事象が絡まっているから、実は、何を、何処から取り上げたら良いのか、迷っているんだ。だから、順番が前後するかも知れないけど、話を聞いてくれる?」
間髪を入れずに侑紀が言葉を挟んだ。
「今日、『泊まり掛け』にしたのは、この話、三時間や四時間で済む問題じゃないからなの。おそらく、徹夜になるのは間違いないと思ったんだけど、話題の導入部分としては、余りにもスムーズ過ぎたのも事実。まさか、鍋島君から、『この夢で語られた神の話が本当なら、かなり面白い事になりそうだ』という言葉を聞くとは考えもしなかったわ」
俺は、ここで〈ある提案〉をする事にした。
「話の腰を折る様で申し訳ないが、俺達は、これから、色々な意味で相当、〈突っ込んだ〉話題を取り上げなければ、ならない筈だ。俺の事は東雲が呼ぶ様に、『勇介』と呼び捨てにして貰って構わない。はっきり言うと、『鍋島』と呼び捨てなら構わないが、『君』が付くと、〈まどろっこしく〉感じるんだ」
その言葉に侑紀が、「では、そうさせて貰うわね」と告げてから、「私も『侑紀』でいいから……」と付け加えた。
この件に関して、胡桃は、「私も胡桃と呼んで下さい」と言ったものの、「これまで通り、『ご主人様』とは呼ばせて下さい」と、例の上目遣いで懇願されてしまう。これを拒否する気は起らず、承認する。
そして、ここから、本題へと入った。
※
その口火を切ったのは東雲である。
「実は、この件、高校に入ってから、お父さんから聞いたんだけど、勇介の父親って、大歳学園の理事長と知り合いなんだって?」
(何故、この話から始まる?)と思いつつも、それは口にせず、「そうだ」と一言だけ告げた。
「私達は『ある人物』を探していたの。今は敢えて『ある人物』という表現にするけど、かなり自由な発想が出来る人を求めていたんだ」
(その『ある人物』が俺だな)と考えながら、黙って東雲の話を聞く。
「『ある人物』を探す為の協力者として、大歳学園の理事長がいるんだけど、『候補者かも知れない』という理由だけで……、しかも、その話は伏せたまま、大歳高校への受験を、その人に勧めたら、OKしてくれたという。その上、合格しちゃった。
でも、この件について、私達は何も知らされて、いなかったんだよね。何しろ、まだ『候補者かも知れない』という段階。ところが、入学式の翌日に、この『候補者』が勇介だと聞かされてビックリ。
本来なら時間を掛けて、その候補者が『ある人物』なのか、どうかを確認する必要があるの。でも、私達は強硬策に出たんだ。この件は後で話すけど、その前に、これだけは断言しておく。
入学式の日に私は勇介を、この部屋に招き入れたよね。でも、その時、候補者の事は全く知らなかったんだ。本当に、『幼馴染みの勇介に会えた』という感情だけで、そうしたの。だから、この場には侑紀を同席させなかった。まぁ、胡桃ちゃんは一緒に住んでいるから、紹介したけど……」




