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パンチラと神  作者: 橋沢高広
12/44

【第12回】

 ※


 時が過ぎ、八月六日となる。この日、東雲しののめからメールが届いた。

「十日の日、泊まり掛けで来ない?」

 東雲の部屋は完全な〈離れ〉だ。それは色々な意味で「嬉しい、お誘い」でもあったが、さすがに、「泊まり掛けは〈マズい〉んじゃないか?」と返信してしまう。ところが、「重要な話がある。両親も承諾済み」というメールが再送信された。

(それって、どういう意味だ?)とは思ったが、俺の中にある〈何か〉が、(それに従え!)と命じる。

 土壇場になって「泊まれない」という状況になった場合、伯母のアパートに行く手もあるし、高校の最寄駅前には午前五時まで営業しているファミリーレストランもある。いざとなれば、そこで時間を潰せば良いだけの事だ。

 正直に言えば、俺が「泊まり掛け」を決めた時、頭の中で〈エロい妄想〉が爆発するのでは、ないかと考えていたのだが、それが起きる兆候すらも発生しない。そして、それが不思議で仕方なかった。

 八月十日に東雲の部屋に集まるのは、東雲、侑紀ゆうき胡桃くるみ、そして俺の四人だ。女三人に対して男が一人。しかも、泊まり掛け。この事実を強烈に意識しても〈エロい妄想〉が頭の中で起こらない。

 そして、八月十日が訪れる。


 ※


 俺は替えのトランクスと下着代わりにもなるTシャツを一枚用意し、東雲の部屋へと向かう。

 一応、誕生日が一緒の四人でパーティを開くという形になっているが、その実情は、どうも異なっている様であった。

 その証拠に東雲から、「プレゼントのたぐいは用意しなくて、いい」というメールを事前に受け取っている。

 午後二時。東雲の部屋にあるソファへ……、定位置となった場所に各々が座った。ソファテーブルの上には一応、小さなデコレーションケーキが用意されていたが、それが〈形だけ〉なのは直ぐに理解する。何しろ、「誕生日パーティ」という華やかな雰囲気が一切ない。

 東雲はTシャツに、相変らずミニスカートという恰好である。

(今日も目のり場に困りそうだな……)と一瞬、考えたが、それを脳が否定する程、妙な重苦しい緊張感が部屋の中を支配していた。

 侑紀は質素な感じのブラウスに、膝が隠れる丈のスカートを履いている。

(彼女の私服姿は初めて見た)と思いつつ、自然と、その胸に視線が向いてしまう。

(やはり、大きいよな……)

 着ているのがブラウス一枚という事もあり、ベストを着た制服の時よりも、その胸が目立っているのは確かだった。

 胡桃は、もうお馴染となったアニメ風のメイド服を着ているが、毎回、そのデザインが少し異なっている。

(何着持っているんだ? このメイド服……)と思いながら、彼女が入れてくれた紅茶を一口飲み、俺は声を発した。

「この場の雰囲気、異常なんだが……」

 まず、口を開いたのは東雲である。

「ねぇ、勇介。あんた、最近、〈変な夢〉を見ていない?」

 その言葉を聞いて、俺は、(やはり、その話題か……)と思いつつ、「見る」と断言してから、話し始めた。

「下着姿の東雲と名草さんが登場する夢だ。そして、その内容は『人間の行動を観察する存在』……、夢の中で東雲は、これを『神』と表現したが、その概要程度の話を、お前がする。更に加えるのなら、最後に東雲は、『この話は、近い内にしないと、いけないんだけど、今日は、この辺にしておくね……』と言って、俺から去った」

 さすがに毎日見続けている夢だ。その発言の一語一句、全てを俺は記憶していた。

 ちなみに、俺は普段、侑紀を「名草さん」、胡桃を「仁保さん」と、姓で呼んでいる。

 俺は言葉を続けた。

「この夢、一学期の期末試験が終わった日……、それは、この部屋へ来た日でもあるが、それ以降、昨日まで毎晩、見続けている。最初は、この夢が原因で精神的に不安定な状態へと陥り掛けたが、その分析を始めて以降、俺は、この夢に対して多大なる関心を持つ様になった。そして、一つの結論を得る。この夢、東雲と名草さんが直接関係していると……」

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