表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

思いがけず、彼女たちの出会いは訪れる

<一時限目 数学>


「じゃあこの問題を...宇陀川、解いてみろ」


数学の岩井先生に指名され、黒板の前に立つ。手を止めることなく、黒板に式と答えを書いていく。


「よし、正解だ」

「すごいね宇陀川さん」

「さすが学年トップ」


 そんな言葉をかけられながら席に戻る。

 正直ウザい。こんなの猿にだって解けるだろ。

 

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


<三時限目 音楽>


「では、初めに校歌を歌いましょう。宇陀川さん、伴奏をお願いできるかしら」

「はい」


 ピアノの前に座り、校歌の伴奏を弾き始める。もう、目を瞑っていても弾ける旋律だ。 前奏が終わり歌に入ると、みんなが歌い始めた。


「〜〜〜♪」

(宇陀川さんピアノ上手いなー)

(美人で頭良くて、おまけにピアノまで弾けるなんてすごすぎだろ)


 みんな音程ズレてるし。なんで気づかないかな?コイツら耳おかしいんじゃないの?


  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 〈昼休み〉


「宇陀川さん、わたしたちと一緒にお話しない?」


  昼食を済ませたわたしのもとに、今年度初めて同じクラスになった女子が何人か話しかけてきた。

新学期も始まったばかりだというのにわたしってばさっすが〜♪


「ありがたいお誘いだけれど、今日はどうしても外せない用事があるの。また今度時間があるときに、ご一緒させてもらってもいいかしら?」

「そうなんだ。それなら仕方ないね」

「ええ。ごめんなさいね」

「いいよいいよ。じゃあまた今度ね」


 そう言うと彼女たちは教室を出ていった。

 用事があるっていうのはウソ。いつもは仕方なく付き合ってあげているけれど、今日は気分が乗らない。大体、なんでわたしがあんなヤツらとくだらない世間話をしなきゃならないんだよ。

 少し疲れたし、静かな場所でゆっくりしたい。


「こんなときは図書室かな」


 わたしはそう呟き、教室を出て図書室へ向かった。

 普段は図書室にはあまり行かない。今日みたいなときに少し寄る程度だ。

 図書室に着き、入り口のドアを開ける。


「.........」


 中には誰もいなかった。


 《まぁ、このほうが静かでいいや》


  わたしは図書室の中に入り、ドアを閉めた。

 びっしりと並ぶ書棚に沿って進み、奥の角を曲がった。


《檜枝中の図書室って結構広いんだよね。...............⁉︎》


 わたしは驚きのあまり歩みを止めた。

 この図書室には、角を曲がったところにも少しスペースがあり、机と椅子が置いてある。入ったときには書棚の陰になっていて見えない位置だ。

 その椅子に座り、文庫本に視線を落とす男子の姿があった。


「.........」


 動くことができず、わたしはしばらくそこに突っ立っていた。

 すると、その男子がわたしに気付き、こちらに視線を向けた。


「......何か用?」


 頭の中で木霊するような、透き通った声だ。


「い、いえ、別に......」


 彼はまじまじとわたしの顔を見てきた。思わず視線をそらしてしまう。


「あぁ、アンタもしかして宇陀川さん?」

「な、なぜわたしの名前を?」


  こいつ、なんでわたしの名前を知ってるんだ?


「いや、アンタのこと知らない人なんて、この学校に1人もいないと思うけど」


 そうだ。驚きのあまり一瞬忘れていたけど、わたしはこの檜枝中学校一の美少女だ。当然、わたしのことを知らないヤツなんて、この学校にはいない。


「そ、そういうあなたは?」

「上月伊織。3年2組」

「あら、わたしと同じクラスじゃない」


 わたしのクラスにこんなヤツいたっけ?全然知らないんだけど。見たところ、影も薄そうだし。


「まぁ、アンタみたいな有名人が俺なんかのこと覚えてるわけないよな。まだ進級してクラス替えしたばかりだし」

「そ、そんなことないわよ」

「ふっ、図星だな。まあ、無理もないけど」

「......っ!」


 な、なんなんだコイツは?わたしを目の前にしても一切動じないなんて。というか、むしろわたしのほうがからかわれてない?

 そのとき、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


『キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン♪』


 彼は手元の文庫本にしおりを挟むと、軽く伸びをした。


「そういや、アンタは何か用があってここに来たんじゃないの?」

「別に用があったわけじゃないわ。ただ、ちょっと暇つぶしに来てみただけよ」

「へぇ〜。アンタみたいな有名人が『暇つぶし』ねぇ〜。」

「何よ。わたしにだって、暇なときくらいあるわよ」

「はいはい。それより、鍵閉めるから早く出て」

「絶対信じてないでしょ!」


 くっ...。話せば話すほど生意気だな。なんかムカつく。

 わたしは腹立たしい気持ちのまま教室に戻った。午後の授業は全く手につかなかった。




 こうして、わたしと上月伊織は出会ったのだ。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ